東京・池ノ上にある「太志」では、こんなに美味しいのに!なぜ?と思わずにはいられないとんかつが待っている。午後に備えるランチタイムに、仕事上がりの労いに、いいことがあったときのご褒美に。旨いとんかつ店を知っていれば、人生は最高になる。
まず結論。世田谷区の淡島交差点近くにある「太志」のとんかつ定食は、この世のランチでダントツ高い満足度だ。値段は1,000円。この値段で出合ったことのない霜降り具合と分厚さ。初訪問時は「マジで1,000円!?」と呟いてしまったほどだ。
「“肉バカ”の問屋さんと意気投合して、選りすぐりを提供してもらえるようになりました。ランチ用なのに、クオリティーが高くて困ってます(笑)」と店主の野溝太志さん。いやいや、その美味しさに僕も困ってますよ!
そんな「太志」フリークの僕の食べ方を。まず何もつけずに一口サクッ。口いっぱいに広がる赤身の肉汁と脂を、舌の味蕾全体にしみ込ませ、甘味と旨味を感じる。次にしっとり桜色に仕上げられた肉の断面に、塩を少し。すると「豚本来の味はこれか!」と気づきがある。そして食べ終わると「この感動が1,000円。恐れ入ります」と心の中で深々一礼する。満足の極みだ。
ただ「太志」には、一つ難点がある。それはどの駅からも徒歩15分と、アクセスが悪いこと。だが、それはそれでちょうど良い。近かったら大行列必至だもん。
来たれ、駅からの遠さにブーブー言わない、真の食いしん坊よ。ぜひ、トンでもない満足感を味わってほしい。
文:クック井上。 写真:長谷川潤
※この記事の内容はdancyu2018年10月号に掲載したものです。