千駄木には不忍通りに沿ってくねくね曲って走る道があります。そこにひっそりと灯る赤提灯の店「串焼とくり」はくつろぎやすい雰囲気の中、店主の技を味わえる場所です。
夕暮れ時の千駄木。不忍通りに沿って、くねくね曲がって走る“へび道”に赤提灯が灯る――町に馴染む小さな店「串焼とくり」。店主・宮下正志さんの扱う“つくば茜鶏”の焼鳥は、中火の遠火で脂を落とし、臭みのないまろやかな味に仕上げる。人気の“ちぎも”は、一日ねかせた白レバーを中心部ギリギリまで火を通し、ふっくらジューシーな焼き上がりに。舌にしっとりまとわりつくような食感に、技術の高さが窺える。赤ワインで味に奥行きを加えたタレとの相性も抜群だ。
日本酒も常時30種近く揃えるなど、酒に関してもマニアック。「B型だからか、何事もとことん追究しがち」と自己分析する店主だが、料理にもサービスにも、押しつけがましさはまるでない。「手取り足取り説明するのではなく、好き勝手に楽しんでもらえたら」という言葉の通り、間口は広く、懐は深い。掘れば掘るほど味わいを増す、そんな焼鳥酒場なのだ。
卵黄や三つ葉、紅生姜、白髪ねぎものって、見た目もカラフルな鶏そぼろ丼740円。焼鳥以外の一品料理も充実していて、煮込みだけでも3種類ほどある。
文:宮内健 写真:岡本寿
※この記事の内容はdancyu2019年11月号に掲載したものです。