カメラマンが、いつかまた食べたい料理
朝粥、割り干し大根の煮物、焼鳥と日本酒|カメラマンが、いつかまた食べたい料理

朝粥、割り干し大根の煮物、焼鳥と日本酒|カメラマンが、いつかまた食べたい料理

カメラマンの伊藤菜々子さん。今、食べに行きたい、会いに行きたい料理はなんですか?と聞くと……。

伊藤菜々子さんが食べに行きたいのは――。

ベトナムの統一鉄道の中で、朝に食べたお粥

ベトナムの統一鉄道の中で、朝に食べたお粥
ベトナムの統一鉄道で、20時のハノイからダナンに着く朝に食べたお粥。 タイのモーニング粥に心射抜かれてから、アジア粥に目がないわたし。 何がアジア粥なのかって、米の種類と入る具材がポイントで、タイ米とナンプラーがベストなんじゃないかと思っているんですが……。ハノイから南北深夜鉄道に乗ってダナンへ向かった16時間。朝日が眩しくなった午前7時台、車両に乗り合わせていた車掌に、止まる駅のお粥が食べたいとオーダー。翻訳アプリで帰ってきた答えは「20分後」。止まる駅で食べれるのかと思いきや、気のいい車掌はビニール袋を下げてきた。どこまでも緑と川、朝日に顔を向けて止まる牛を見ながら食べる熱々のお粥。具はネギみたいなのと、ミンチみたいなの、そしてしょうが。朝イチに食べるお粥は冷房で冷え切った胃を起こし、旅をスタートさせてくれる。またのろのろ電車に揺られながら食べたいです。

友人の母富士子さんの割り干し大根の煮物

友人の母富士子さんの割り干し大根の煮物
小鉢に手を伸ばす子ども
当時子供が一歳になる前で、子育てで手一杯の時期。器に丁寧に盛られた割り干し大根とひじきの歯応え、それだけでため息ものでしたが、ひたひたのダシだけでも酒が呑める、とアテをもカバーする奥深き昆布ダシはつけ置きだそう。隠し味はなんと塩ポン酢で、つくり方を聞くと「え、適当よ?さっと煮るのよ」と、お母さんあるある。塩ポン酢までもらって帰ったのに、辿り着かない。近くて遠い料理なんです。

東京・東向島「鳥増」の焼鳥と日本酒

東京・東向島「鳥増」の焼鳥と日本酒
東向島の居酒屋さんで、店中に貼られた手書きの日本酒メニューには一つ一つ説明が書いてあって、飲んでるそばから次のお酒を選んでしまう。常連のおじさんたちの笑い声を聞き、カウンター奥のお父さんの焼き鳥を焼いてる姿を見ながらまずは背肝、レバー、やげん。ここでは一杯目からもちろん日本酒で、できたらカウンターに座って一人で周りの会話に勝手に参加しながら楽しみたい。おいしいわ~というと、中のお父さんが嬉しそうに笑ってくれて。最後の串は背肝のおかわりでお願いしたいです。

写真・文:伊藤菜々子