明日、どこに食べに行こう?
見惚れるほど美しい一杯|鴨南蛮で温まろう①

見惚れるほど美しい一杯|鴨南蛮で温まろう①

寒さが厳しくなってくるこの季節は、ぜひ鴨南蛮を食べて温まっていただきたい。鴨、つゆ、蕎麦のバランスが絶妙な名店を2軒紹介します。まずは、東京・大森町の「もりいろ」から。

鴨南のマスターピース現る!

この鴨南蛮はどこまでも美しい。見事なロゼ色の鴨の抱き身に、鴨脂でこんがりと炒めた深谷ねぎ。そこに緑の九条ねぎが覆い、黄蘗(きはだ)色の柚子皮が香る。

本枯節ベースのだしに、うす口と白醤油のかえしを合わせたつゆ。蕎麦は20以上の産地から日替わり1,836円。

瞬間、見惚れた後、熱々のつゆに浸った蕎麦を一気に手繰る。キリリと澄んだ味。鴨のコクが加わった、淡い色のかけつゆの奥から、日替わり産地の蕎麦の香りが顔を出す。ここで傍らの日本酒をクイッ。ああ、全身にしみわたる……。

クレソンのポテトサラダ594円、鴨のコンフィ1,674円。ヴェデット756円など、ベルギービールも充実。
店主の土屋匡史さんは駒込の「総本家 小松庵」で9年の修業の後、仏料理「ル ガゾン」で引き出しを増やした。

蕎麦、2種のねぎ、精妙な火入れの鴨は幸せな出会いの取り合わせ。ズッ、シャクッ、ジュワァッをひたすら繰り返す。うっすらと鴨の脂の浮いた金色のかけつゆは、ぬるくなるほどに味わいが膨らむ。途中でふった黒七味の香りは極彩色でなんと華やかなことか。
いつまでも飲んでいたい。酒の話ではない。鴨の風味が香るつゆの話である。

店舗情報店舗情報

もりいろ
  • 【住所】東京都大田区大森西5‐10‐8
  • 【電話番号】03‐3761‐6055
  • 【営業時間】11:30~14:30(L.O.) 17:30~20:30(L.O.) 売り切れ仕舞い 日曜は昼のみ
  • 【定休日】月曜
  • 【アクセス】京浜急行「大森町駅」より1分

文:松浦達也 写真:土居麻紀子

*この記事の内容は2018年2月号に掲載したものです。