「Shinfula」のエクレアは実に独創的な見た目だ。たっぷりと搾られたクリームの上に、ナッツやシュー生地が舞い散るように踊っている。”森”をテーマにしてつくられたエクレアは「Shinfula」がオープンしたときからの人気商品だ。
「森をテーマにしたお菓子を創りたい!そう思って考えた一品で、オープン当初からつくっています」と語る中野慎太郎シェフ。
枯葉舞い散る秋の森をイメージさせる「森のエクレア」は、中野シェフの出身レストラン「NARISAWA」にルーツがある。
成澤由治シェフが標榜していた“食を通して人と自然が共存し寄り添う“という考え方である「里山キュイジーヌ」に因んで、森をテーマにした菓子をつくろうと考えたそうだ。
中野シェフが森から発想したのは、樹液と木の実。
「森のエクレア」に使う2種類のクリームに、欅の樹液であるメープルで風味をつけた。カスタードクリームとバタークリームを足したカスタードクリームだ。
これらを2層にしてシュー生地に詰め、ナッツををたっぷりトッピングしたエクレアに仕上げた。
クリームの上には松の実、アーモンド、ヘーゼルナッツにピーカンナッツが贅沢にあしらわれている。
ナッツのカリカリとした食感に呼応するかのようなシュー生地のサクサク感、加えてクリームの下に敷いたプラリネノワゼット入りチョコレートのフィアンティーヌによって、実に軽快なテクスチャー。
菓子全体の甘味を引きしめるため、最後にふり塩をするひと手間は”お汁粉に塩”の発想に似たものがある。
「NARISAWA」で和菓子のミニャルディースもつくっていた中野シェフらしいアイデアだろう。
濃厚な味わいでありながら、最後まで飽きさせない仕掛けが見事だ。
――12月6日につづく。
文:森脇慶子 写真:馬場敬子