オレンジ色のじんわり系「ジョージアワイン」ってなんだ?
ジョージアワインの「赤」を知る①

ジョージアワインの「赤」を知る①

ジョージアワインにおいては、とかく「オレンジワイン」「アンバーワイン」と呼ばれる褐色を帯びた白ワインが注目されている。では、赤ワインは?今回は、ジョージアの赤ワインのことを探っていく。

世界が認めたジョージアの赤ワイン。

ジョージアワインというと、とかく「オレンジワイン」「アンバーワイン」が注目されていて、このシリーズでもそれに惚れ込んだ人たちを紹介してきた。
かくいう私もオレンジワインが大好きで、ジョージアの赤ワインを飲んだ記憶はほとんどない。

「確かに他国のワインとの違いから、アンバーワインが注目されています。でも、ジョージアは赤ワインも素晴らしいんです。たとえば、『CHELTI(チェルティ) サペラヴィ クヴェヴリ2015』は、世界的なワインコンテストで輝かしい成績をおさめています」と誇らしげに語る人がいる。
インポーター「H&N ワインジャパン」の本間真理子さんである。

ジョージアワインのインポーター「H&N ワインジャパン」代表の本間真理子さん。

本間さんが言う世界的なワインコンテストは、ふたつある。
ひとつはドイツで毎年開催される国際的なワインコンテスト「Mundus Vini(ムンドゥス・ヴィニ)」のことだ。
2019年度の「ムンドゥス・ヴィニ2019」で世界の7000銘柄の中から「貴重な赤ワイン36本」として、ジョージアの「CHELTI(チェルティ) Saperavi(サペラヴィ) QVEVRI(クヴェヴリ)2015」が選ばれた。

もうひとつは「Decanter Asia Awards(デキャンタ・アジア・アワード)」。英国のワイン雑誌『デキャンタ』が主催する「Decanter World Wine Awards(デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード)」のアジア版として香港で開催される、アジア最大級のワインコンクールだ。アジア市場を重視する生産者のワインが世界各国から出品されている。
「チェルティ サペラヴィ クヴェヴリ2015」は、「デキャンタ・アジア・アワード2019年」で優秀なワインに贈られる「ベスト・イン・ショー」を受賞した。

まだジョージアの赤ワインに開眼していない私は、その魅力を本間さんに教えてもらうことにした。

「一般的に、赤ワインに加工するぶどうは果皮こそ赤いものの、果肉は赤くないものを使います。でも、ジョージアでもっとも盛んに栽培されているサペラヴィは果皮も果肉も濃い色をしています」
サペラヴィは、皮も実もポリフェノールを多く含んでいる。ジョージアでは、単一品種でワインを造ることが多い。サペラヴィだけで醸すと、このぶどう品種の特徴ともいえる、濃厚で力強さを感じるワインになるというのである。

ボトル

「とくに『チェルティ サペラヴィ クヴェヴリ2015』は、深みのあるルビー色で、干したプラムとブラックベリージャムのブーケに始まり、長く続く余韻が愉しめます」

赤のセミスイートワインも造られている。

「ジョージアの赤ワインの特徴はもうひとつあります」と、本間さんは説明する。
「世界的にも珍しいセミスイートワインが造られているんです。ジョージアワインの歴史は8000年前に遡るのですが、その長い歴史の中で、クレオパトラが赤のセミスイートワインを飲んだといわれています」

甕で醸されたクヴェヴリワインとセミスイートワインでは、どちらかがより歴史が長いかはつまびらかではないが、古代からセミスイートワインが造られてきたというのだ。
しかも赤ワイン用のぶどう品種で、辛口のワインとセミスイートワインが造られているところもジョージアの特徴といえる。

「私が扱うワイナリー『VAZI(バジ)+』の『LELO(レロ)シリーズ』には、サペラヴィ品種で造った、辛口とセミスイートの2種類があります。いずれも甕ではなく、ステンレスタンクで醸したものです」

辛口の「VAZI(バジ)+ LELO(レロ) SAPERAVI(サペラヴィ)」2,547円 (価格はすべて税込)。
セミスイートワインの「VAZI(バジ)+ LELO(レロ)KINDZMARAULI(キンズマラウリ)」2,750円。

「『サペラヴィ』は柔らかなタンニンとコクがあり、プラムの香りとともに、軽い甘みも感じられます。かたや、『キンズマラウリ』は生産者の名前を冠したもので、ベタベタした甘さではなく、自然で贅沢な甘さがあります。少し冷やして愉しんでください」

セミスイートワインを造る方法はいくつかある。もっとも簡単なのは、糖分やアルコールを添加する方法だ。あるいは、ぶどうの収穫を数週間遅らせることで、完熟した糖度の高いぶどうで造ることもできる。
「『キンズマラウリ』は、醗酵中タンクを冷却し、糖分がアルコールに変わる前に醗酵を止めることでセミスイートワインに仕上げています」

セミスイートワインを造るぶどうはサペラヴィだけではない。その他の品種も盛んに使われてきた。
「オジャレシ品種もそのひとつです。サペラヴィ同様、オジャレシでも辛口の赤ワインが造られていますが、うちではセミスイートだけを扱っています」
それが「バジ+ ビネヒ オジャレシ2015」だ。
加糖もアルコール添加もせず、タンクを冷却することで自然な甘さのセミスイートを造っている。
「少し冷やすと酸味が立ち、心地よい甘さが際立ちます。濃厚ですが、飲みやすくて、ワインが苦手な方でもつい手が出てしまう魅力的なセミスイートワインです」
ジョージアでは、毎年6月にワインアワードが開催されており、この「VAZI(バジ)+BINEKHI(ビネヒ) Ojaleshi(オジャレシ)2015」が、ジョージア国内の2018年のワイン・アワードのセミスイート部門で最高賞を受賞した。

「VAZI(バジ)+ BINEKHI(ビネヒ) Ojaleshi(オジャレシ)2015」3,056円。

ジョージアのオレンジワインだけでなく、甕仕込みの赤ワインもまた評価されているワインだということはわかった。
では、そもそも本間さんはなぜ、これらのワインを扱うことになったのか?そして、本間さんを惹きつけるジョージアワインの魅力を、次回は探っていく。

――つづく。

ジョージアワインの9人⑦

本間真理子

本間真理子(ほんま・まりこ)

東京都渋谷区生まれ。一ツ橋スクール・オブ・ビジネス卒業後、スイス銀行を経て、国連のパートナーNGO「ジョイセフ」に勤務。アジア・アフリカ・中南米の発展途上国の女性支援・母子保健推進活動に従事。2011年3月の東日本大震災以降、東北に通い続ける。被災地支援活動に専念するためNGOを退職。2012年5月に「H&N ワインジャパン」を設立する。2016年にジョージアワインツーリズム協会日本特派員に就任。

「H&N ワインジャパン」問い合わせは090-6539-2600 https://hnwinejapan.com/

文:中島茂信 写真:オカダタカオ

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中島 茂信(ライター)

1960年、東京都葛飾区生まれ。4歳の頃、亀戸天神の近くにあった「田久保精肉店」のコロッケと出会って以来コロッケ好き。趣味はラードで揚げたコロッケの買い食い。最後の晩餐はもちろんコロッケ。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』(枻出版社)、『101本の万年筆』(阪急コミュニケーションズ)、直木賞作家の山口瞳さんの妻である治子さんの聞き書き『瞳さんと』(小学館)、『自家菜園レストラン』(コモンズ)など。企画・編集に『笠原将弘のおやつまみ』(ぶんか社)、『平翠軒のごちそう宝箱』(小学館)がある。