北尾トロさんの青春18きっぷ旅。
はるばる来たのよ、門司港に。

はるばる来たのよ、門司港に。

うどんとラーメンで食べつなぎ、待望のゴーー~~ーール!松本を出立したことが、遠い昔のよう。岡山県から福岡県の間には広島県と山口県しかないのに、これがえらい遠いんですね。とは言え、いつの間にか長時間の電車移動に抵抗がなくなる自分もいたりして、旅は不思議なり。

ローカル線は混んでいるのだ。

翌朝、津山発7時54分の岡山行きで旅を再開。朝食は岡山駅でぶっかけうどんを食べてみた。知名度では讃岐うどんが圧倒的だが、岡山のうどんも味では負けていないと僕は思う。

運賃案内版
津山駅で運賃案内版に目をやると、向かう方向は里庄までしか載っていない。それじゃ、今日の旅程の4分の1だよ。
津山駅
グッバイ津山。その日がやって来るかどうかわからないけれど、また逢う日まで。
時刻表
津山から岡山へと向かう電車は基本1時間に1本。乗れなかったら、たいへんですよ。
うどん
旅の4食目。岡山駅で、うどん。そう言えば、昨夜は焼きうどんだった。

本日の移動距離は433.5km。ここから先はだいたい2時間ごとの乗り換えになる。昨日さんざん乗っただけに、もはや「2時間ね、はいはい」としか感じない。
「それにしても混んでる。海外の観光客も多いけど、どこに行くんだろう」
やがて答えがわかった。倉敷と尾道でドヤドヤと降りていったのだ。彼らは料金の高い新幹線より、安価で景色をゆったり楽しめるローカル線旅行を好むのだろう。

風景
海沿いを電車が走ると、ついつい車窓からの風景を追ってしまうんですよね。
山陽線
山陽線の車両は無骨で、なんだかかっこいい。渋い黄色も男前。
車内
にょきっと出ている女性の組んだ足が、なぜだか気になる。だいぶ、疲れているな。
読書
ゆっくりと読書ができるのは、各駅停車の旅のいいところ。旅のお供は、飯島和一著『狗濱童子の島』。

ラーメンや、体に染み込む塩加減。

岩国駅
岩国でひと休み。ここまでずっと移動中は駅ナカの食事だったので、初めて改札外へ。

到着までの最後の食事となる昼食は岩国駅。地元の店に入ってみたいので、1本電車を遅らせて改札の外に出てみた。気温はおそらく35度を超えているに違いない。危険な暑さだ。再開発中なのか、駅前はガランとしている。といって遠出する時間はないしなあ。と、町中華らしき店があるではないか。よし、あそこにしよう。
「いいね! 昨日から米食ってないけど、こんな日だからこそラーメンだ」
カンゴローが即座に賛成した。頬を汗が伝っている。
「塩分補給にもなるしね。米は実家で食えばいいんだから」

ラーメンとおいなりさん
5食目。ラーメンとおいなりさん。体が塩分を欲してたんですよね。
北尾トロさん
4食連続の麺。どれだけ麺好きなんだよと、自分にツッコミたくなるけど、思えばよくあるわ。

移動につぐ移動で、我々は少し判断力が鈍っているのかもしれなかったが、本当に塩分不足だったのだろう。ラーメンスープが身体に染みていくようだった。
ここからは追い込みだ。岩国→新山口→下関まで3時間半、関門海峡をくぐれば九州に上陸である。門司駅で乗り換え、最後の電車に乗り込む。

光駅
光駅。JRのひと文字駅名は全国で50に満たない。
車内
このご時世、若者は本など読まないんだな。
下関
遂に本州の端っこまでやって来た。関門海峡を渡れば、九州だ!
ホーム
ラストスパート、と言いたいところだけど、門司にて最後の乗り継ぎ電車をしばし待つ。

そして18時21分、鹿児島本線終着駅に電車が滑り込んだ。
ゴール!!
松本を出発してから34時間32分、いやー、“時間の贅沢”にも程がある。

門司港
門司港駅はモダンな雰囲気で、趣あり。まだ訪れたことがない人は、ぜひ一度。
門司港
着いたよ、やっと着いたよ。門司港。帰る故郷があるってのは、いいものです。

――明日も読んでねー。

文:北尾トロ 写真:中川カンゴロー

北尾 トロ

北尾 トロ (ライター)

1958年、福岡で生まれる。 小学生の頃は父の仕事の都合で九州各地を転々、中学で兵庫、高校2年から東京在住、2012年より長野県松本市在住。5年かかって大学を卒業後、フリーター、編集プロダクションのアルバイトを経て、26歳でフリーライターとなる。30歳を前に北尾トロのペンネームで原稿を書き始め『別冊宝島』『裏モノの本』などに執筆し始める。40代後半からは、日本にも「本の町」をつくりたいと考え始め、2008年5月に仲間とともに長野県伊那市高遠町に「本の家」を開店する。 2010年9月にノンフィクション専門誌『季刊レポ』を創刊。編集発行人を務めた。近著に『夕陽に赤い町中華』(集英社)、『晴れた日は鴨を撃ちに 猟師になりたい!3』(信濃毎日新聞社)がある。