「四川家庭料理 中洞」の十皿
トマトと卵のとろとろ炒め|「四川家庭料理 中洞」の五皿目

トマトと卵のとろとろ炒め|「四川家庭料理 中洞」の五皿目

五皿目はトマトと卵のとろとろ炒め。中国全土で食べられるている極めてポピュラーな料理なのに、店それぞれで味つけも趣きも異なり、ひとつとして同じものはない。「四川家庭料理 中洞」のそれは、香ばしく食欲をそそる「ねぎ油」が肝だった!

ポピュラーなのに、どの店も違う。

しっとりしたもの、カリカリに焼き上げたもの。
卵を細かく掻いたものもあれば、たっぷりと大きく掻いたものもある。
香菜やねぎが入ったり、塩味や醤油味も。
トマトを細かく切ったものや、大ぶりに形を残したもの、くたくたにトマトに熱を入れたもの、フレッシュ感を残したもの。
トマトと卵の炒めといっても、千差万別である。

「家庭のみならず、中国全土のどの店でも置いてあるほどポピュラーな料理なのに、店によってまるで違うんです」

「中国家庭料理 中洞」店主の中洞新司(なかほらしんじ)さんは言う。
むっちりとした卵の弾力、噛みしめると汁気がしみだす櫛形の新鮮なトマト。
皿が運ばれてきたときから立ち上る香りと、卵の食感がとくに印象的な「中洞」の「トマトと卵のとろとろ炒め」もまた、オンリーワンの味わいがある。

トマト、卵、生姜、塩、ねぎ油と限られた食材なのにボリューム感を感じさせるのは、中洞さんの技。972円。

ねぎ油が香る! 箸でつかめるむっちり感!

「僕は、食事は箸で食べるのが好きなんです。だから箸で食べられるように卵の腰を残して火を入れ、トマトもわざと櫛切りにして、レンゲじゃなくても食べられるようにしています。味付けは塩味が中心。生姜が隠し味です」

では、この香ばしい香りは?
これほど素朴なのに、口に入れるとさらに食欲をそそる旨味は?
「ねぎ油ですね。いい香りをプラスしたくて、ねぎの香りを移した油を使っています。たっぷりの白ねぎを油で煮て、ねぎの香りが出てきても焦げる一歩手前まで煮続けるんです。時間でいうと15分くらいでしょうか」

単品でもおいしいし、ご飯がすすむおかずにもなる。
中洞さんのお薦めの食べ方は?
「肉料理を頼んで、このトマトと卵の炒めと一緒に食べてほしいですね」

じゃあ、明日は、ぴったりの肉料理を紹介してもらいましょう。

――明日につづく。

店舗情報店舗情報

四川家庭料理 中洞
  • 【住所】東京都文京区千石4‐43‐5
  • 【電話番号】03‐5981‐9494
  • 【営業時間】11:00~14:00(L.O.)、17:00~21:00(L.O.)
  • 【定休日】月曜(祝日の場合は火曜)
  • 【アクセス】JR・都営地下鉄「巣鴨駅」より7分

文:沼由美子 写真:森本菜穂子

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沼 由美子(ライター・編集者)

横浜生まれ。バー巡りがライフワーク。とくに日本のバー文化の黎明期を支えてきた“おじいさんバーテンダー”にシビれる。醸造酒、蒸留酒も共に愛しており、フルーツブランデーに関しては東欧、フランス・アルザスの蒸留所を訪ねるほど惹かれている。最近は、まわれどまわれどその魅力が尽きることのない懐深き街、浅草を探訪する日々。