「四川家庭料理 中洞」の十皿
塩熟成豚バラの山椒香り炒め|「四川家庭料理 中洞」の二皿目

塩熟成豚バラの山椒香り炒め|「四川家庭料理 中洞」の二皿目

二皿目は塩熟成豚バラの山椒香り炒め。仕上げの調味には山椒の粒しか入れず、ほぼ味付けはなし。なのに、なぜこんなに旨味が豊かなのか?

豚の旨味が炸裂!体力をチャージしたいときに食べたい。

「一日よく働いて、体力を使ったなぁというときにこそ食べたくなる料理です」
現地でそう位置づけられているわけではないが、「中洞」店主の中洞新司(なかほらしんじ)さんがそう語るのは、「小炒肉(シャオチャオロウ)」というねかせた豚肉を焼き上げたもの。
ビタミンも豊富な豚肉の凝縮した旨味を味わえるときたら、食べない手はない。

とはいえ、厚化粧の味付けをほどこすわけでなく、焼き上げるときには山椒の粒を入れるのみだ。

「豚肉のブロックに塩と香辛料を揉み込んで、3日間ねかせます。ブロックのままボイルして保存しておくんです。あとは切って焼いて、一気に豚の旨味を引き出すだけです」

塩熟成豚バラの山椒香り炒め
ちょうどよい塩気と花椒の刺激。紹興酒とも絶妙に合う。1,296円。

四川でポピュラーなのは、焼いた豚肉に青唐辛子のみを添えるスタイル。でもそれではあまりに辛すぎるし、日本では同じ青唐辛子が手に入らないこともあって、中洞さんは国産の旬の野菜添えてアレンジをしている。

「僕自身、焼き肉は好きで疲れたときに食べたくなるのですが、牛肉は次の日になるとちょっと重く感じてしまって。でも豚肉だとその重さがないんです」

程よい塩気と刺激は、いい酒の共にもなる。今日の疲れを癒し、明日への英気を養う一品なのだ。

飲み比べセット
「中洞」には中国の地酒7種を用意。飲み比べセット972円で愉しむこともできる。左から焦がしてつくる「即墨老酒10年」、内モンゴル産・ミルクが原料の地酒、王道の紹興酒。


――明日につづく。

店舗情報店舗情報

四川家庭料理 中洞
  • 【住所】東京都文京区千石4‐43‐5
  • 【電話番号】03‐5981‐9494
  • 【営業時間】11:00~14:00(L.O.)、17:00~21:00(L.O.)
  • 【定休日】月曜(祝日の場合は火曜)
  • 【アクセス】JR・都営地下鉄「巣鴨駅」より7分

文:沼由美子 写真:森本菜穂子

沼 由美子

沼 由美子 (ライター・編集者)

横浜生まれ。バー巡りがライフワーク。とくに日本のバー文化の黎明期を支えてきた“おじいさんバーテンダー”にシビれる。醸造酒、蒸留酒も共に愛しており、フルーツブランデーに関しては東欧、フランス・アルザスの蒸留所を訪ねるほど惹かれている。最近は、まわれどまわれどその魅力が尽きることのない懐深き街、浅草を探訪する日々。