フルーツ牛乳は永久に不滅です。
フルーツ牛乳を10本集めて飲み比べてみました①

フルーツ牛乳を10本集めて飲み比べてみました①

日本各地から10種類のフルーツ牛乳を取り寄せました。味わいのほかにも、瓶やキャップまで様々な特徴を持つフルーツ牛乳が大集合。昔懐かしい味わいを愛する4人がフルーツ牛乳を飲みながら放談します。

牛乳は、やっぱり瓶が好き。

フルーツ牛乳は瓶で飲むと、なぜかおいしく感じる。冷えた瓶が口元にひんやり。腰に手を当てて、ゴクリといただくのが正しい嗜み方、かな(異論もあるかと思いますが)。
たくさんの人から愛されてきた瓶詰めのフルーツ牛乳。昨今は姿を見かけることがめっきり少なくなった。
「昭和から多くの人に支持されてきて、銭湯の定番の1本だったのですが、最近は瓶詰めで製造している業者は減ってきていますね」と、御徒町と秋葉原で「ミルクスタンド」を運営する大沢牛乳の松本和則さんが教えてくれた。

フルーツ牛乳をつくっている業者はどれほど残っているのだろう。フルーツ牛乳にも個性があり、配合されるフルーツの種類だってそれぞれ。地方性もあるかもしれない。
調べてみると、あるある。瓶詰めのフルーツ牛乳を真摯につくり続けている牛乳屋さんが、あちこちに。全国規模ではなく、地元でしか流通していない商品もあった。

フルーツ牛乳の定義は厳密にはない。フルーツ果汁の入った乳飲料の愛称が「フルーツ牛乳」。名前に“フルーツ”がつく瓶入りの乳飲料10種類を集めました。
フルーツ牛乳の定義は厳密にはない。フルーツ果汁の入った乳飲料の愛称が「フルーツ牛乳」。名前に“フルーツ”がつく瓶入りの乳飲料10種類を集めました。

10種類のフルーツ牛乳を取り寄せてみた。
中身の色合いや瓶のデザイン、キャップの形まで佇まいは十本十色。個性あふれるフルーツ牛乳が集まると、まるで博覧会の様相を呈してきた。
デザートや飲み物に縁の深い4人に飲み比べてもらった。

フルーツ牛乳を試飲した面々。

木村衣有子

木村衣有子

1975年、栃木県生まれ。文筆家。銭湯が存在しない地域で生まれ育ったこともあり、フルーツ牛乳にはあまり馴染みがなかった。「牛乳への耐性は強くないが、フルーツ牛乳ビギナーとしてフラットな目線で試飲会に臨みます」と意気込む。

高宮裕輔

高宮裕輔

1983年、東京都生まれ。高校生のときに観た、映画「カクテル」のトム・クルーズに憧れてバーテンダーという職を選ぶ。西麻布「Bar Lands End」、石神井「Bar au comptoir」を経て、カクテルとジェラートの店「TIGRATO」を四ツ谷にオープン。フルーツと乳成分の組み合わせが、ジェラートづくりと同じロジックなのかが気になるところ。

猪俣淳寛

猪俣淳寛

1973年、新潟県生まれ。新百合ケ丘の「ウィーン菓子工房 リリエンベルグ」を経て、現在はフレンチレストラン「ラ・ロシェル 南青山店」でシェフパティシエを務める。「さらっと飲める大人な味わいのフルーツ牛乳を見つけて、デザートづくりに活かしたいです」。

西塚晃久

西塚晃久

1985年、山形県生まれ。イタリア料理店、ベルギービール専門店を経て、2012年「麦酒屋るぷりん」を銀座に開店。酒の試飲会にしか参加したことがなかったので、フルーツ牛乳の試飲会ではどんな味わいに出会えるのか胸が弾む。

ピチピチとしたフルーツ感あふれる牛乳。

昔懐かしい紙キャップのフルーツ牛乳もいくつかある。「この開けにくい感じ、久しぶりだなぁ」なんて言いながら、試飲会スタート!
昔懐かしい紙キャップのフルーツ牛乳もいくつかある。「この開けにくい感じ、久しぶりだなぁ」。

フルーツ牛乳には、りんご、オレンジ、パイン、ピーチにバナナなど多種多様な果汁が加えられている。1種類しか混ぜていないものもあれば、6種類も配合しつつバランスを保っているものもある。
どんな果汁が配合されているかで、フルーツ牛乳の個性がわかるのだ。
まずは、フルーツの香りが高く、ピチピチとした味わいの4本をご紹介!

オレンジが香り、胸がキュンとなる味わい。

「大内山フルーツ」。1962年よりパック詰めで発売。瓶詰めは、2018年より発売(なぜ最近になって瓶詰めがつくられ始めたのかは、現在調査中です)。大内山酪農協同組合に加入する三重県下22戸の酪農家が、大切につくった牛乳にオレンジ果汁を加えている。
「大内山フルーツ」。1962年よりパック詰めで発売。販売店などからの強い要望を受けて、2018年より瓶詰めを発売。大内山酪農協同組合に加入する三重県下22戸の酪農家が、大切につくった牛乳にオレンジ果汁を加えている。
大内山フルーツ
製造者
大内山酪農(三重県)

販売価格
オープン

販売地域
三重県内の温浴施設、高速道路ザービスエリア・パーキング、道の駅など。宅配は、三重県内と愛知県一部地域。
木村さん
蓋を開けたときにオレンジの香りがしましたね。
西塚さん
本当だ!この香り、駄菓子にあった気がします。
高宮さん
なんだか懐かしい気持ちになりますね。オレンジの風味とミルクのまろやかさ、好きだなぁ。
猪俣さん
華やかなオレンジの香りとミルクの一体感って、いいもんですね。

トロピカルでちょっとスパイシー!

「共進フルーツ」。1975年より発売。創業1890年の共進牧場がつくるフルーツ牛乳。兵庫県の共進牧場組合でつくられた新鮮な牛乳と、りんご果汁を配合している。
「共進フルーツ」。1975年より発売。創業1890年の共進牧場がつくるフルーツ牛乳。兵庫県の共進牧場組合でつくられた新鮮な牛乳と、りんご果汁を配合している。
共進フルーツ
製造者
共進牧場(兵庫県)

販売価格
150円

販売地域
兵庫県、大阪府、京都府内の一部温浴施設や宅配など。
猪俣さん
ピルクルみたいな味わいを想い出しました。りんご果汁だけなのに不思議。
木村さん
ちょっとスパイシーでキリッとした後味もしますよね。ひと言で言えば、トロピカルかな。
西塚さん
バナナのようなもったり感もありませんか?
高宮さん
乳脂肪分が高くて、そこにりんご果汁が入ると、バナナのような香りになるんですね。僕は好きな味です。

60年に渡って愛された名選手。

「明治フルーツ」。瓶詰めは1958年より発売され、2019年4月1日に生産が終了。さらりとした飲み心地の牛乳にりんご、オレンジ、パイナップル、洋梨、バナナ、レモンの6種類の果汁が入っている。ペットボトル入りの「明治フルーツ」は全国スーパー、コンビニで購入できる。
「明治フルーツ」。瓶詰めは1958年より発売され、2019年4月1日に生産が終了。さらりとした飲み心地の牛乳にりんご、オレンジ、パイナップル、洋梨、バナナ、レモンの6種類の果汁が入っている。ペットボトル入りの「明治フルーツ」は全国のスーパー、コンビニで購入できる。
明治フルーツ
製造者
明治(東京都)

販売価格
オープン

販売地域
2019年4月1日に生産終了。
高宮さん
イメージ通りのフルーツ牛乳がきたって感じです。スルスル飲めます。
西塚さん
確かに、さらりとした飲み口ですっきりしてますね。氷をたっぷり入れたグラスで一気に飲んでもおいしそう。
木村さん
老若男女に愛される王道の味わいを目指しているんでしょうね。

柔らかい喉ごしとフルーツの香りにホッとする。

「山村フルーツ」は、1965年から続く製法でつくられている昔懐かしい味わい。映画「テルマエロマエ」の銭湯のシーンで、阿部寛が演じるルシウスが飲んでいたフルーツ牛乳。
「山村フルーツ」は、1965年から続く製法でつくられている昔懐かしい味わい。映画「テルマエロマエ」の銭湯のシーンで、阿部寛が演じるルシウスが飲んでいたフルーツ牛乳。
山村フルーツ
製造者
山村乳業(三重県)

販売価格
210円

販売地域
三重県伊勢市、鳥羽市、志摩市。愛知県にある「フランテ」。東京都にある「クイーンズ伊勢丹 恵比寿三越店」「三重テラス」。
高宮さん
いろんなフルーツの味がしますよね。飲んでいて楽しくなりますね、これは。
西塚さん
わかります!たとえるなら、みんなを楽しませてくれて、優しいんだけど彼女ができない友達が想い浮かびました(笑)。好きです。
猪俣さん
いましたね。そんな友達(笑)。瓶にプリントされているロゴに、紙製のキャップ。味わいも素朴で昭和を感じます。

――明日へつづく。

文:河野大治朗 写真:馬場敬子

河野 大治朗

河野 大治朗 (編集者)

1991年生まれ。茨城県出身。2018年「塚田農場 浅草店」店長から、dancyuのweb編集部で働きはじめる。自分の好奇心を大切に、気になることはやってみる。一人前の編集者になるため修行中。特技は羊の解体。趣味はきのこ狩り。