「江戸開城」を醸す東京港醸造とdancyuがコラボしたオリジナル酒の造りを取材した記事の後編。どんなお酒に仕上がったのか、期待に胸を膨らませて試飲に伺いました!
肌寒かった3月初めから1ヶ月あまり。季節は一変して、外は汗ばむほどの陽気だ。お昼前ということもあり、駅からの道は車も人通りも多い中、搾りたてのお酒を目指して、一目散に東京港醸造を目指した。
蔵では、朝からの作業が一段落した杜氏の寺澤善実さんが出迎えくださり事務所の中へ。
いよいよ、「江戸開城×dancyu “All Tokyo”」との初対面!心躍る瞬間だ。
大きな利き猪口に注がれた新酒の、香りをまずはかいでみる。ほんのりとフレッシュな若葉のような香りとともに、柑橘系の果物やヨーグルトのような香りが穏やかに鼻腔を満たし、幸せ数値がググっとアップ。
口にすると、初夏にピッタリな爽やかな酸味をふくよかな旨味が支え、味のバランスが絶妙だ。酸にとげとげしさはなく、全体的にはマイルドでキレがあって後味はすっきり。
「一見クールな都会派だけど、意外に協調性のある情にも熱いタイプだぜ」という印象で、食中酒としても、万能なタイプ。まさにdancyu祭にふさわしい、食いしん坊向けのお酒が誕生した。
寺澤さんからは前回の取材の際、「原料の米の粒が硬めのため、水につける時間や製麹の時間を長めにした」と伺っていたが、三段仕込みでもろみを造ったあとの経過はどうだったのだろう。
「米の水分含有量は全体的に通常より10%ほど多めにして、もろみの品温は通常より低めにするなどの工夫をして、できるだけもろみ日数を長くして、お酒がたくさんできるようにしました」と寺澤さん。それでも、当初の予定より10日ほど早く搾ることにしたという。
その決断は数値を見極めながらの、最終的には「経験と勘」なのだそう。酸が高めとなり、旨味のもととなるアミノ酸数値が上昇し、アルコール度数が15%になった段階で、「これ以上置いておくと酸が際立ちすぎて、旨味が減ってしまう」と判断したのだ。その結果、本仕込みをしてから21日目での搾りとなった。
dancyu祭用に搾ったお酒はすべて、生のまま瓶詰めされた。会場では、290ml入りの瓶と120mlのグラス販売の2種がある。祭初日の23日13時からは、寺澤杜氏も来場予定。
丹精込めて造られたオリジナル酒は、まずはお酒そのものの味を楽しんだあとは、絶品料理やスイーツとのペアリングを体験してみよう。食中酒としてのポテンシャルの高さは、食いしん坊にも大満足いただけるハズだ。
dancyu祭のために東京の米、水、酵母、酒母で造った「江戸開城×dancyu “All Tokyo”」。ここだけでしか味わえない日本酒をお見逃しなく!
文:小宮千寿子 撮影:牧田健太郎