ジビエの晩餐会「あなぐまを食べる会 リターンズ in 福井」の翌日となる2018年12月5日。福井観光コンベンションビューローとdancyuのwebとが催す初の試み、“福井の食文化探訪ツアー”が開催されました!福井の食と言えば、蟹に蕎麦に味噌に、えっ水ようかん......!?
待ちに待ったランチタイム。バスの中でのアナウンスは「皆さまには、まつ田せいこ丼を召し上がっていただきます」。何かの間違いかと思いつつ、向かった先は「魚屋の食い処 まつ田」。そこで出逢った丼は、正真正銘の“まつ田せいこ丼”だった!?
「“まつ田せいこ丼”の誕生は9年前のこと。「メス蟹を剥いていると愛着が湧いてきて、嫁に出す気持ちで名字を付けたらこのネーミングになりました!」と話すのは、「魚屋の食い処 まつ田」店長の枩田卓也さん。
ごはんは、殻でとった出汁で炊いてあるため十分に風味が豊か。まずはそのまま味わったら、醤油やかに酢を蟹味噌とまぜて丼に回しかけるのもよし。添えてあるすだちを搾れば、爽やかな美味が口中を駆け抜ける!
夢見たアイドルに逢えた高揚感と満足感。昼食を終えたバスの中は、そんなうっとりとした雰囲気で満ちていた。だが、食文化探訪ツアーは、まだまだ終わらない。
次は体験プログラムが待っている。以下の3つの中から好きなものを選び、1つのプログラムに参加。<コース1>は「三七味噌/味噌づくりと試飲」、<コース2>は「江川の水ようかん/工場見学と試食」、<コース3>は「越前蕎麦倶楽部/蕎麦打ち体験と試食」。う~ん、どれも魅力的!
<コース1>の「三七味噌/味噌づくりと試飲」は、大豆と米麹と塩。シンプルこの上ない材料を使って、マイ味噌をつくるというもの。
美しくツヤツヤの大豆をミンチ状して、コシヒカリの米麹、赤穂の塩をせっせと混ぜ合わせていく。これが思った以上に重労働。へろへろになりながら、マイ味噌が完成。と思いきや、出来上がりは9ヶ月後なんだとか。味噌は育てるものだと、実感。
味噌づくりを終えて、自分がつくった味噌を何に使おうか、あれやこれや夢想する毎日は楽しいものです。
<コース2>は「江川の水ようかん/工場見学と試食」へ。今回、見学した「江川」は水ようかんのCMソングを地元の誰もが歌えるほど、親しまれている和菓子店。
驚くなかれ、福井では水ようかんは冬の食べ物で、みかん同様、こたつと共にある冬の定番なのだ。11月に入ると町のお菓子屋は一斉に水ようかんをつくり始めるため、シーズン中は何種もの水ようかんが出回ることに。近頃は他県と同様に夏に販売する店もあるが、「福井の季節感」を守るべく「江川」は頑なにシーズン中のみの販売としている。
なぜ冬なのかについて、社長の江川正典さんに訊ねると「大正時代からつくられていますが、理由はわかりませんね!」と潔い回答。諸説あるそうですが、真相は藪の中。
「江川」がシーズン中につくる水ようかんは1日約1,500枚にも上る。漆を塗った板に流し入れて造るのが伝統の製法。昭和40年代頃までは、八百屋や魚屋が仲介となって、自分専用の水ようかんの型を持参して、買い物先の店頭で注文ができたという。
<コース3>は「越前蕎麦倶楽部/蕎麦打ち体験と試食」。福井県産の蕎麦粉を使って蕎麦を打ちます。練って、まとめて、のして、たたんで......。これがまたうまくいかない。凸凹したり、まとまらなかったり、なんとか蕎麦を切るところまでたどり着いた頃には、力尽きそうな雰囲気が漂います。
今回、蕎麦打ちは初めてという人がほとんどなのに、遠目からは、立派な蕎麦屋の店主。近づけば、危なっかしい手つきに見ているほうもやっている本人もハラハラ。「難しいものですね」。みなさん口を揃えます。 最後は自分で打った蕎麦をおいしくいただきました。
15時。福井駅で解散をし、時計を見たらまだこの時間。これだけ盛りだくさんの内容で!
さぁ、〆の夕食は何にしようか。この土地の食文化にじっくり触れ、次の福井旅がもう楽しみになっている。
文:沼由美子 写真:出地瑠以