2019年12月3日、福井市・朝倉氏遺跡の敷地内にある「一乗谷レストラント」にて、第3回目の開催を迎えた福井「あなぐまを食べる会」。東京・門前仲町のイタリアンレストラン「パッソ・ア・パッソ」の有馬邦明シェフがこの日のために考えたコースには、前菜からあなぐま、ヤマシギ、鹿、仔猪、ツキノワグマといったジビエに加え、福井で獲れたズワイガニ、幻の魚と希少な食材が目白押し。そしてディナーはパスタを経て、いよいよメインにたどり着きます。
手間ひまかけた料理をぎゅっと詰め込んだ前菜。幻の魚と謳われるアラレガコのスープ。
初めての味わい、その美味しさ。そして東京・門前仲町のイタリアンレストラン「パッソ・ア・パッソ」の有馬邦明シェフの丁寧な解説も添えられ、外は冷たい雨が降るも「一乗谷レストラント」の中の熱気はさらに高まっていく。
そうこうするうちに、パスタの2品盛りが登場。有馬シェフが説明する。
「向かって左側にあるのは、あなぐまのお肉を炊いたスープでかぼちゃを炊き込んだリゾットです。脂も旨味もしみ出たスープで炊いていますよ!それを焼いて、くぼみにモッツァレラチーズを詰めてさらに焼き、あなぐまのラグーをのせました」
「右側は、雉と福井産のカブ、生クリームと玉ねぎをギューッと詰めていったものにペンネを和えて、かぼちゃをすりつぶしたソースをかけています。カブの葉をソースにしているので合わせて召し上がってください」
そしていよいよメインへ。あなぐまの肩やスネ肉を挽いたポルペッティの中には、挽かずに噛みしめるおいしさを堪能できるモモ肉の煮込みが包まれている!
「食べづらい部位もミンチすることで、脂やだしの旨味も堪能できます。そして中に入るモモ正肉は、柔らかく赤ワインで炊いてあります。部位で大きく味わいや食感の印象が異なることがわかるでしょ。大根もあなぐまのスープで炊いているので、旨味がしみ込んでいます。ソースは赤ワインとワインビネガー。軽やかな酸が味を引き締めます」
艶やかなババの中には大きな栗が丸々1個入ります。「とみつ金時」とは、福井県あわら市の富津(とみつ)地区で育てられたさつまいものこと。スープ仕立てにしてババを浸しながらいただく。黒トリュフの高い芳香が味わいに彩りを添える。
「料理はいかがでしたか? あなぐまだけでなく、ズワイガニに鮎、幻の魚のアラレガコに瑞々しい野菜。コースを通して、福井にはいろんな食材があるということを感じていただけましたか?」
白熱のディナーコースを食べ切り、〆にはdancyu webオリジナル清酒「d酒」を懸けたジャンケン大会が行われた。
最初はグー!ジャンケンポン!
歓声と悲鳴が入り混じる。獲得した方、おめでとうございます!
最後に有馬シェフがこんなことを話してくれた。
「いくら腕のいい猟師さんとのお付き合いでも、『初めまして』だとお互いに相手のことがわかりません。あなぐまを仕留めてくれる渡辺さんとは、3年前に彼の営む牛舎を訪ね、猟師としての命の尊さの話を訊き、そこに共感して今の状態にまで歩んできました。そういった積み重ねが大事だと考えています。それに、自分のレストランと違う場所で違う規模で違う人と仕事をするというのは心地いい緊張感がありますね」
――有馬シェフ、じゃあ来年も開催したらお願いできますか?
「もちろん!来年も再来年もね!」
――おわり。
文:沼由美子 写真:出地瑠以