
おせちの華と言える煮しめです。飾り切りはちょっと大変ですが、つくるとぐっとおせちの質が上がります。荻野恭子さんの目からウロコのおせち論と毎年挑戦したくなる、気楽なおせちづくりを紹介します。
煮しめは、おせちの華。野菜を型抜きしたり、飾り切りにするだけで、普段と違った華やかな仕上がりになります。できる範囲でかまいませんから、お正月らしさを楽しみましょう。
関東は里芋、関西は海老芋を使いますが、使い勝手がよく味もよい、山芋をお薦めします。


直火でなければ、ポリ袋で加熱調理もできます。高温になりすぎないように、蒸気で蒸せばいいのです。
家にある一番大きな蓋付き鍋に、穴の開いたプレートを敷けば蒸し器になって、一つの鍋で複数のおせちが同時につくれます。
鍋の湯が沸騰して蒸気が上がったら弱火にし、その後はずっと弱火で。蒸し時間の長いものから鍋に入れ(鍋肌に当たらないように注意)、時折、湯を足しながら、時間がきたら取り出す。
煮汁が煮詰まる心配がないので、少量の煮物も上手につくれますよ。

| 鶏もも肉 | 150g |
|---|---|
| こんにゃく | 100g |
| 干し椎茸 | 小4枚 |
| にんじん | 50g |
| れんこん | 70g |
| 山芋 | 100g(自然薯) |
| A | |
| ・ 椎茸の戻し汁 | 3/4カップ |
| ・ 酒 | 大さじ2 |
| ・ 味醂 | 大さじ2 |
| ・ 砂糖 | 大さじ2 |
| ・ 醤油 | 大さじ1 |
| ・ 塩 | 小さじ1 |
| 絹さや | 6~9枚(仕上げ用) |
干し椎茸は1カップほどの水で戻し、笠に放射状の切り込みを入れる。れんこんは厚さ1cmの輪切りにし、花形になるように切り込みを入れ、水にさらす。山芋は皮をむいて長さ4cmほどに切り、縦半分に切る。にんじんは厚さ7mmの輪切りにして花型で抜く。余力があれば花びらの間から中心に向かって切り込みを入れ、ねじり梅に整える。

こんにゃくは厚さ5~6mmに切り、中央に切り込みを入れ、片端を切り込みに通して手綱形にする。塩と砂糖ひとつまみ(分量外)をふって軽くもむ。

鶏肉は一口大に切って、塩ひとつまみ(分量外)をふり、軽くもみ込む。

ポリ袋に1~3とAの材料を入れる。味の出る鶏肉、椎茸などは下に、くずれやすい山芋やれんこんは最後に入れる。袋をよく揺すって全体をなじませ、空気を抜いて口を閉じる。袋を二重にして50分蒸す。

絹さやは、芽の部分は残して筋を取る(正月に「芽を摘まない」ように)。塩少々(分量外)をまぶしてさっとゆで、煮しめを盛りつけるときに添える。



和食、フランス料理、中国料理をはじめ、世界65カ国の家庭料理の知恵を備えた料理研究家。アジア諸国で目にしたポリ袋の活用方法に着想を得て、早くからポリ袋調理を提唱。著書に『ポリ袋漬けのすすめ』(文化出版局)ほか多数。
この記事はdancyu2021年1月号に掲載したものです。

文:岡村理恵 写真:工藤睦子