
これまで紹介してきたポリ袋おせちをお重に詰めましょう!これが出来ればあなたもおせち名人!荻野恭子さんの目からウロコのおせち論と毎年挑戦したくなる、気楽なおせちづくりを紹介します。
さあ、仕上げは盛りつけです。お皿に盛ってもいいけれど、せっかくの晴れ舞台!重箱や弁当箱をお持ちなら、そこに詰めてみましょう。仕切りがないので詰めにくいかもしれませんが、隙間ができたら、かまぼこで埋めればいいのです。ポリ袋に入っていた料理が、きれいに並べるだけでもてなしの顔になって、「おせちをつくったんだなあ」としみじみ実感します。最初は何品かに挑戦して、買ってきたおせちと組み合わせたってかまいません。年に一度、重箱を引っ張り出してくるだけでも、気持ちが改まってよいものです。


重箱は上から順に一の重、二の重と重ねます。
一の重には、お祝いの食事始めに供される酒のアテになる、“祝い肴”を入れます。荻野式おせちの祝い肴は「黒豆、数の子、田作り」の3種。地域によっては、田作りを、たたきごぼうにするところもあります。
まずは中心に入れるものを決めて、四隅を埋めていくときれいに詰められます。黒豆のように細かいもの、汁気のあるものは、小さな器に入れるとよいでしょう。
重箱には仕切りがないので、味移りのしそうなものは隣り合わせにしないようにします。
栗きんとんと卵など、形や色の似たものが近くにならないように考えます。どう詰めるか、配置を書いてみるのもお薦めです。
南天などがあれば、あしらいに使うと見た目が締まります。
隙間にはかまぼこを。飾り切りにすれば彩りがよくなり、仕切り代わりにもなります。
| 紅白かまぼこ | 適量 |
|---|
かまぼこを板から外すときは、包丁の背を使うときれいに切り離せる。

かまぼこは、好みの厚さに切る。紅白の境目よりも少し内側に包丁を入れ、皮をむくように切り込みを入れる。端は少し残す(切り離さない)。

皮の中央に切り目を入れる。

皮の端を切れ目の下からくぐらせて手綱にし、上からかぶせる。


二の重は焼き物を中心に入れます。
縁起物の海老、ぶりなどの魚介類は欠かせません。また、さっぱりした酢の物も、この二の重に入れます。
配置に決まりはありませんが、肉、魚介、酢の物でまとめてみましょう。
鴨肉のマーマレード焼き漬けのそばに、洋風のなますを置くなど、味のつながりも意識すると、置き場所が決めやすくなります。
菊花かぶと一緒に漬けた昆布は、仕切り代わりに使っても。

三の重は煮物を入れます。
煮しめは、さまざまな食材を合わせて煮るので、家族仲良く過ごせるように、末長く健やかにといった意味合いがあるといわれています。
いろいろな具が入って、汁気もあるので、本来は鉢のほうが盛りつけやすい料理です。
重箱は底が平面で、思ったよりも量がたっぷり入るため、2人分では隙間ができてしまうかもしれません。立てかけたり、重ねたり、工夫しながら詰めてみましょう。
昆布巻きは隅にまとめて並べます。
花にんじんは全体に散らし、絹さやは3枚ずつところどころに差し込むとアクセントになります。
これで皆さんも、おせち名人ですよ!

和食、フランス料理、中国料理をはじめ、世界65カ国の家庭料理の知恵を備えた料理研究家。アジア諸国で目にしたポリ袋の活用方法に着想を得て、早くからポリ袋調理を提唱。著書に『ポリ袋漬けのすすめ』(文化出版局)ほか多数。
この記事はdancyu2021年1月号に掲載したものです。

文:岡村理恵 写真:工藤睦子