
殻ごと蒸すので、殻の香ばしさが身に移って、贅沢な味わいになります。酒が進んでしょうがない一品です。荻野恭子さんの目からウロコのおせち論と毎年挑戦したくなる、気楽なおせちづくりを紹介します。
海老は「腰が曲がるまで長生きで」という家族の無病息災を祈る食材。鮮やかな紅色で、おせちに華を添えます。
お正月なので車海老にしましたが、ブラックタイガーでも十分ですよ。


直火でなければ、ポリ袋で加熱調理もできます。高温になりすぎないように、蒸気で蒸せばいいのです。
家にある一番大きな蓋付き鍋に、穴の開いたプレートを敷けば蒸し器になって、一つの鍋で複数のおせちが同時につくれます。
鍋の湯が沸騰して蒸気が上がったら弱火にし、その後はずっと弱火で。蒸し時間の長いものから鍋に入れ(鍋肌に当たらないように注意)、時折、湯を足しながら、時間がきたら取り出す。
煮汁が煮詰まる心配がないので、少量の煮物も上手につくれますよ。

| 有頭海老 | 4尾 |
|---|---|
| 酒 | 少々 |
| 塩 | 少々 |
海老は頭から数えて、第2関節くらいの節と節の間に竹串を入れ、背ワタを取る。

キッチンばさみで、ひげや足の先、尾の先を切り落として整える。

二重にしたポリ袋に入れて塩、酒を加え、袋を揺すって全体になじませる。空気を抜いて袋の口を閉じ、蒸し器に入れて、弱火で10分蒸す。



和食、フランス料理、中国料理をはじめ、世界65カ国の家庭料理の知恵を備えた料理研究家。アジア諸国で目にしたポリ袋の活用方法に着想を得て、早くからポリ袋調理を提唱。著書に『ポリ袋漬けのすすめ』(文化出版局)ほか多数。
この記事はdancyu2021年1月号に掲載したものです。

文:岡村理恵 写真:工藤睦子