冬になると出回るゆずは、酸味や香りが豊かで料理をぐんと格上げしてくれます。果汁や皮を薬味やあしらいに使いますが、姿や色が美しい柚子を器に見立てたのが「ゆず釜」。華やかな色合いで、おもてなしの一品にもなります。お酒を愛する料理研究家の大原千鶴さんに、焼いて味わう「ゆず釜」のつくり方とそのコツを教えていただきました。
ゆずは丸ごと使えて、器にもなり、見た目も華やかです。「ゆず釜」は、ゆずの上部を切り取って果肉をくり抜き器に仕立てたもので、切り落とした部分も飾りや蓋として使えます。おせちの紅白なますなど、酢の物を入れたりしますが、このまま焼いて温めると柑橘独特の香りや酸味を感じられる一品になるんです。
この料理は、白味噌をからめながら帆立を味わう趣向で、温めることで味噌の甘味とゆずの香りが際立って、具材がさらに美味しくなります。お味噌と相性がいい海老やイカ、白身魚でつくってもよく、お刺身用のものを使えば、半生くらいの火の通りがベストです。
焼いている途中で中身が膨らんであふれそうになるので、ゆずに詰める量を控えめにするとよいでしょう。焼き上がったら、蓋にしたヘタの部分も搾って果汁と味わってください。
白味噌のまったりとした美味しさには、やはり日本酒ですね。燗酒、それもぬる燗でちびちびゆっくり楽しんでいただくのがお薦めです。
ゆず | 1個 |
---|---|
帆立 | 2個(30g)(刺身用) |
椎茸 | 1枚(15g)(小) |
A | |
・ 西京味噌 | 30g |
・ 砂糖 | 小さじ1 |
ゆず果汁 | 小さじ1 |
ゆずはヘタから1.5cmくらいのところで切り取り、中身をくりぬく。果汁を搾って、小さじ1をとりおく。
帆立は2cm角に切る。椎茸は石突きを切り落とし、2cm角に切る。
とりおいた①のゆず果汁とAをボウルに入れて混ぜ、②の帆立と椎茸も加えて混ぜる。
①のくりぬいたゆずに③を詰める。
アルミホイルを敷いた受け皿に④をのせ、1,000Wのオーブントースターに入れて、10分ほど焼く。途中焦げそうであれば上にアルミホイルをのせるとよい。
器に盛り、①のゆずのヘタを蓋に見立てて添える。
京都・花脊の料理旅館「美山荘」が生家。小さな頃から自然に親しみ、料理の心得を学ぶ。現在は家族五人で京都の市中に暮らし、料理研究家としてテレビや雑誌、講習、講演など多方面で活躍。シンプルなレシピに定評があり、美しい盛りつけにもファンが多い。着物姿のはんなりとした京女の印象とは対照的に、お酒をこよなく愛す行動派。レシピはお酒を呑んでいる時に思いつくのが一番多い。近著「大原千鶴のいつくしみ料理帖」(世界文化社)がある。2023年4月より、オンライン料理レッスンもスタート。
文:西村晶子 撮影:福森クニヒロ