尾身奈美枝さんの“フードロサない”アフターレシピ
"炊き込みご飯"のあとは、えのき&油揚げのつまみで呑もう!

"炊き込みご飯"のあとは、えのき&油揚げのつまみで呑もう!

料理家・フードコーディネーターの尾身奈美枝さんが毎回、余った食材をおいしく食べきるレシピを提案します。今回は、“きのこの炊き込みご飯”をつくったあとに残った、えのき茸と油揚げが絶品おつまみに変身!

“きのこの炊き込みご飯”、えのきと油揚げが残ったら?

秋になると食べたくなる“きのこの炊き込みご飯”。実は炊き込みご飯は、dancyu食いしん坊倶楽部「食の動向・意識調査 Vol.1」でも、「自宅でよくつくる料理」として上位にランクインした料理なのだ。「……ということは、残った食材を持て余しがちってことですよね?」と、尾身さん。

「たとえば、2枚入りの油揚げが1枚だけ余ったり、きのこも半端に残ったり。特に足の早いえのき茸は、要注意です。シナシナになる前に食べきってしまいましょう!」

そこで今回のお題は、“きのこの炊き込みご飯”のアフターレシピ。油揚げとえのき茸をおいしく食べきる酒のつまみを教わることに決定!

炊き込みご飯
きのこたっぷりの炊き込みご飯は、まさに秋の味覚!
尾身さん
余った油揚げとえのき茸。「えのきの根元も捨てないで!」と尾身さん。

……と、その前に。実は、尾身さん流の“きのこの炊き込みご飯”も、悶絶のおいしさなのである。お米の一粒一粒にきのこの香りと旨味が染み込んで、しみじみと深い味! つくり方をたずねると、シンプルながらもこんなワザが光っていた。

「油揚げをかなり細かくきざんで加えるんです。油揚げには大豆と油分の旨味があるので、きざむことで味が全体にまわって、お肉が入らなくても満足感が出るんですよ!」

なるほど!そんな工夫がありながらも、面倒な下ごしらえはいっさいナシ。材料を炊飯器に入れて炊くだけなのがうれしい。ぜひ、お試しあれ!

“きのこの炊き込みご飯”のつくり方

材料材料 (4人分)

2合
しいたけ2枚(40g)(薄切り)
えのき茸65g(ほぐす)
しめじ40g(ほぐす)
人参20g(2cm長さの太めのせん切り)
油揚げ1枚(油抜きしてみじん切り)
A
・ だし300ml
・ みりん大さじ2
・ 薄口醤油大さじ2

1内釜に材料を入れて炊く

炊飯器の内釜に、研いで浸水させてからザルに上げて水気をきった米、A、油揚げ、人参、きのこ類を入れて、普通に炊飯する。

内釜に材料を入れて炊く

えのきは揚げたらイカに、焼いたらホタテに!?

えのき茸は傷みやすいのが弱点なので、“フードロサない”ためには、最優先で食べきりたいきのこだ。「えのきって、きのこの中でもすごく旨味が強いんですよ。今回つくるおつまみ2品で、その旨味を実感してください」と尾身さん。

1品目の“えのきの裂きイカ風素揚げ”は食べて驚きだ。しっかりした噛みごたえ、濃厚な味わいは、まさにイカ!「でしょ?これは台湾を旅して出合った味なんですよ」と、尾身さん。塩と砂糖の両方で味つけするのも、現地で覚えた味なのだとか。この甘じょっぱい味はクセになりそう!

2品目は、えのき茸の根元の部分をバターで焼いた“えのきのホタテ風ステーキ”。栽培容器の跡がついた部分から下は捨てられることが多いが、実はおがくずがついている部分を1~2cmほど切り落とせば、根元もおいしく食べられるのだ。見た目も味も、まさにホタテ!お酒に合わないわけがない。

“えのきの裂きイカ風素揚げ”のつくり方

えのきの裂きイカ風素揚げ
素揚げしただけとは思えない!噛めば噛むほど、裂きイカ味。

材料材料 (つくりやすい分量)

えのき茸適量
揚げ油適量
ひとつまみ
砂糖ひとつまみ

1油で揚げる

えのき茸は1本ずつバラバラにほぐし、170~180℃に熱した揚げ油に入れて揚げる。

油で揚げる

2色づいたら取り出す

色づいてきたら途中で返し、まんべんなく水分をとばしながら揚げる。写真の程度まで色づき、カサが半分以下になったら、網を敷いたバットに取り出す。塩、砂糖をまぶす。

色づいたら取り出す

“えのきのホタテ風ステーキ”のつくり方

箸でちぎったこの見た目も、ホタテそのもの。バター醤油が合う!

材料材料 (1個分)

えのき茸の根元1株分(2~2.5cm厚さ)
薄力粉適量
オリーブオイル大1/2
バター大さじ1
醤油小さじ1
みりん小さじ1
小さじ2
小ねぎ適量(小口切り)

1薄力粉をまぶす

えのき茸の根元に、まんべんなく薄力粉をまぶす。

薄力粉をまぶす

2オリーブオイルで焼く

フライパンにオリーブオイルをひいて中火にかけ、えのき茸の根元を焼く。

オリーブオイルで焼く

3バターを加えて焼く

薄く焼き色がついたら返す。バターを入れて、からめながらさらに色づくまで焼く。

バターを加えて焼く

4醤油をからめて仕上げる

水、みりん、醤油の順に加えて、全体に味をからめる。器に盛り、小ねぎをふる。

醤油をからめて仕上げる

アレンジ自在!油揚げは具を詰めて焼けば“ロサない”

詰め焼き
カリッと焼けた油揚げに、葱味噌がぴったり。好みで七味をふっても!

1枚だけ余った油揚げは「具を詰めてこんがり焼く」のが、尾身さんの定番つまみ。特別な具材がなくても、味噌ときざんだ長ねぎを詰めれば、気の利いた一品になる。ここで再び尾身さんのワザ登場!

「油揚げを袋状に開くときに、裏返すんです。裏返した面はカサカサしているので、焼くとカリッと香ばしくなるんですよ」

具材は納豆、キムチ&チーズなどもおすすめ。飲むお酒に合わせてアレンジを考えるのも楽しい。油揚げを“ロサない”どころか、もっと食べたくなってしまいそうだ。

“油揚げのねぎ味噌詰め焼き”のつくり方

材料材料 (つくりやすい分量)

油揚げ1枚
長ねぎ20cm分(小口切り)
みそ大さじ1
砂糖小さじ1

1油揚げを裏返す

油揚げは半分に切って袋状に開き、裏返す。

油揚げを裏返す
油揚げを裏返す

2ねぎ味噌を詰める

長ねぎ、みそ、砂糖を混ぜて、半量ずつ油揚げに詰める。開かないように爪楊枝で留める。

ねぎ味噌を詰める

3両面を焼く

フライパンを弱めの中火にかけ、油揚げを並べて焼く。こんがり色づいてカリッとしたら返して、もう一方の面も同様に焼く。

両面を焼く

教える人

尾身奈美枝 料理研究家・フードコーディネーター

尾身奈美枝 料理家・フードコーディネーター

料理家・フードコーディネーターとして、テレビ番組を中心に、新聞・雑誌など様々なメディアに出演。料理番組の金字塔『料理の鉄人』の裏方を務め、「フードコーディネーター」 という職種を世に広め、定着させた先駆け的存在でもある。
「きょうの料理」 (NHK)「あさイチ」(NHK) などの番組に多数出演。“エコ”をテーマとした新しいレシピ提案を発信し続けている。

文:大沼聡子 撮影:山田薫

大沼 聡子

大沼 聡子 (編集者・ライター)

家庭科教師だった母親の影響で、小学生の頃から料理雑誌を愛読。現在はレシピ本の企画・編集のほか、食まわりの記事を雑誌・ウェブ等で執筆している。趣味は世界各国の料理をつくること、食べ歩くこと。