尾身奈美枝さんの“フードロサない”アフターレシピ
秋刀魚&大根の残りはパスタ、つまみ、スープに!

秋刀魚&大根の残りはパスタ、つまみ、スープに!

料理家・フードコーディネーターの尾身奈美枝さんの新連載がスタート!尾身さんが提案するのは、余った食材をおいしく食べきるレシピ。今回は、“秋刀魚の塩焼き”を楽しんだあとにつくりたい料理を紹介します。

撮影現場では“余った食材”も食べきる!

料理家・フードコーディネーターとして、テレビ番組を中心に活躍する尾身奈美枝さん。料理番組の金字塔『料理の鉄人』の裏方も務めた、プロフェッショナルだ。料理番組の現場は時間が限られているため、必要な手順を段取りよく撮影できるように、多めに準備しておくのが常なのだそう。

「ひとつの料理を7、8回つくれるくらいの材料を用意しますね。余った食材はどうするかって? もちろん、撮影スタッフみんなで食べきりますよ」と、尾身さん。

余った食材で、“まかない”としてチャチャッとつくる尾身さんの料理は、しみじみおいしいと評判だ。聞けば幼いころ、ご両親が営む工務店にはたくさんの職人さんがいて、毎日、家族と一緒にご飯を食べていたそうだ。「台所で母の手伝いをしながら育った」と話す尾身さんは、こうして食材をやりくりし、誰かのために料理することを覚えたのだろう。そして、「食品ロス」なんて言われる前から、食べきる工夫と知恵が身についていたのだ。

尾身奈美枝さん
いつも笑顔の尾身奈美枝さん。幼いころから料理が好きだった。

そんな尾身さんに課した今回のお題は、今が食べごろの“秋刀魚の塩焼き”である。といっても、教わるのは塩焼きではなく、塩焼きを楽しんだあとの“アフターレシピ”。

「秋刀魚って、3尾で1パックだとちょっと安かったりするでしょ?2尾は定番の塩焼きで食べたとしても、残り一尾を持て余してしまうことが多いと思うんです。さらには、大根おろしの大根も、余らせがちな食材ですよね」と尾身さん。

秋刀魚
この季節はやっぱり秋刀魚の塩焼きが最高。大根おろしは欠かせない。
秋刀魚
一尾だけ余った秋刀魚と、中途半端に残った大根。おいしく食べきりたい!

さあ、尾身さんの手にかかると、どんな料理になるのだろうか!?

たった一尾でご馳走になる、秋刀魚のパスタ

秋刀魚のパスタ
秋刀魚の濃厚な旨みとディルのさわやかな香りがたまらない、秋刀魚のパスタ。

「秋刀魚が一尾だけあったら、ぜひつくって」と尾身さんが話すのが、このパスタ。「一尾って塩焼きだとちょっとしかないけれど、パスタにすれば2人で十分楽しめます。喧嘩しないで仲良く食べてください!」

味わってみると、身がゴロゴロと入った贅沢なおいしさ。たっぷり入ったディルのさわやかさは、白ワインを呼ぶ味。秋刀魚は三枚おろしにして使うが、魚をおろすのが苦手だという人も心配不要!フライパンに入れたら、木ベラでくずしていくので、きれいにおろせなくても問題ないのだ。これをつくるために、わざと秋刀魚を余らせてもいい……!

“秋刀魚とディルのパスタ”のつくり方

材料材料 (2人分)

秋刀魚1尾(三枚おろしにして3、4等分に切る)
ディル1パック(10~13g)
ミニトマト6個(横半分に切る)
にんにく小さじ2(みじん切り)
パスタ160g(1.6mmのスパゲッティーニ)
EXバージンオリーブオイル大さじ3
赤唐辛子1本(乾燥)
白ワイン大さじ2

1ディルをきざむ

ディルは飾り用に2枝を取り分け、残りを葉と茎に分ける。葉はある程度細かくきざみ、茎はできるだけ細かくきざむ。捨てられがちな茎だが香りが良く、細かくきざんで繊維を断つことでおいしく食べられる。

ディルをきざむ

2ソースをつくる

フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れて弱火にかけてゆっくり火を入れ、にんにくの香りが出たら赤唐辛子を入れる。再び香りが出たら秋刀魚を入れ、弱めの中火に上げる。木ベラで秋刀魚をくずしながら炒めて火を通し、白ワインを加える。アルコール分がとんだら、ディルの茎を先に加えて火を通す。

ソースをつくる

3パスタをゆでる

秋刀魚を炒めている間に別鍋にたっぷりの湯をわかし、湯量の1%弱の塩を加え、表示時間よりも1分短くパスタをゆでる。

4ソースの仕上げ

秋刀魚のソースに、パスタのゆで汁をお玉1杯ほど加え、ミニトマトを入れてつぶれるくらいまで煮る。

ソースの仕上げ

5パスタをソースで和える

ゆであがったパスタを投入して味見をし、塩、黒胡椒各少々、オリーブオイル大さじ1(分量外)で味を調える。最後にディルの葉を加えてまんべんなく混ぜたら完成。器に盛り付けて、取り分けておいたディルの枝を飾る。

パスタをソースで和える

大根おろしの余りも“フードロサない”

秋刀魚の塩焼きに添えた、大根おろしにも注目!ちょっと残った大根を冷蔵庫の中でひからびさせた経験がある人は多いはず。そんな大根で尾身さんがつくってくれたのは、”大根おろしのスープ”と“大根餅”。大根は塩焼きのために多めにすりおろしても、このスープをつくればいい。飲茶の定番、大根餅はまさに酒のつまみ。混ぜて焼くだけの手軽なつくり方だから、気軽につくれる。おいしく“フードロサない”レシピ、ぜひ取り入れてみてほしい!

“大根おろしのとろとろスープ”のつくり方

大根おろしのとろとろスープ
甘くてとろとろ、葉も食べきれる。鬼おろしでおろすと大根の食感が残ってさらに美味!

材料材料 (2人分)

大根おろし1/2カップ(100ml)(あれば鬼おろしでおろす)
A
・ 水300ml
・ 鶏ガラスープの素大さじ1/2(顆粒)
・ 酒大さじ1
・ 醤油小さじ1/4
・ ハム1枚(みじん切り)
ごま油小さじ1
大根の葉適量(きざむ)
水溶き片栗粉片栗粉大さじ1+水大さじ2

1大根おろしに火を通す

Aを鍋に入れて中火にかけて、煮立ったら大根おろしを加える。2~3分、煮て火を通す。味見をして薄ければ塩少々(分量外)を加える。

大根おろしに火を通す

2とろみをつけて葉を加える

水溶き片栗粉をまわし入れてお玉で混ぜ、とろみをつける。風味づけにごま油を加えて火を止め、大根の葉を加えて余熱で火を通す。

とろみをつけて葉を加える

“簡単!大根餅”のつくり方

大根餅
もっちりとした生地から大根の甘味が感じられる。好みで酢や練り辛子をつけても!

材料材料 (5個分)

大根100g(せん切り)
小さじ1/4
砂糖小さじ1
桜エビ2g(きざむ)
A
・ 白玉粉30g
・ 薄力粉大さじ1
胡麻油大さじ1/2~1
パクチー適量(好みで)
適量(好みで)
練り辛子適量(好みで)

1大根を加熱する

耐熱ガラスボウルに大根を入れ、塩と砂糖をもみ込む。しんなりしてきたら、出てきた水分を捨てずにふんわりラップをかけて、電子レンジ(600W)で1分加熱する。桜エビを混ぜる。

大根を加熱する

2生地を混ぜる

Aを加えて、手でよく練り混ぜる。6等分しておく。

生地を混ぜる

3フライパンで焼く

フライパンに胡麻油大さじ1/2をひいて弱火にかけ、生地を手で丸めて軽くつぶして並べていく。2~3分たって色づいたら返して、全体で4~5分焼く。カリッとしたら出来上がり。器に盛りつけて、好みでパクチー、酢、練り辛子を添える。

フライパンで焼く

教える人

尾身奈美枝 料理研究家・フードコーディネーター

尾身奈美枝 料理家・フードコーディネーター

料理家・フードコーディネーターとして、テレビ番組を中心に、新聞・雑誌など様々なメディアに出演。料理番組の金字塔『料理の鉄人』の裏方を務め、「フードコーディネーター」 という職種を世に広め、定着させた先駆け的存在でもある。
「きょうの料理」 (NHK)「あさイチ」(NHK) などの番組に多数出演。“エコ”をテーマとした新しいレシピ提案を発信し続けている。

文:大沼聡子 撮影:山田薫

大沼 聡子

大沼 聡子 (編集者・ライター)

家庭科教師だった母親の影響で、小学生の頃から料理雑誌を愛読。現在はレシピ本の企画・編集のほか、食まわりの記事を雑誌・ウェブ等で執筆している。趣味は世界各国の料理をつくること、食べ歩くこと。