辻さん考案のにんじんの温サラダは、息子さんのみならず友人家族にも大人気!作家、ミュージシャン、映画監督など幅広く活躍をしている辻仁成さんは、本誌の連載「キッチンとマルシェのあいだ」でも書いているように、多彩で美味しい料理をつくります。パリに住んで20年の辻さんによる、美味しさと思い出の詰まった“パリ・サラダ”のレシピです。
にんじん嫌いな息子が、にんじん大好き少年になったのは、実は、このキャロット・ロティの温サラダのおかげなのであった。
にんじんは身体にいいのだけれど、ちょっと子供には食べにくい野菜でもある。そこで、息子が小さかった頃にいろいろ工夫をこらしたのだった。もちろん、にんじんのグラッセも甘くて美味しいのだけれど、あの重たさがぼくにはちょっと、辛い。バターのせいである。もっと他にいい方法はないかな、と思っていたら、ある時、知り合いのビストロで食べたキャロット・ロティが美味しかった。グラッセより、ロティの方が、軽やかでいいじゃないか、と気が付き、ベビーキャロットをそのまま使って、試しているうちにたどり着いた、にんじんオンリーの温サラダ、なのである。
もちろん息子はにんじん好きになったのだけど、これが大人にも大うけ。たまたま、息子の学校の同級生の家族を招いた時に、子供たち用に作ったキャロット・ロティの温サラダ、どれどれ、とゲストの親御さんがつまんだところ、美味しい、美味しい、と騒ぎになった。たぶん、はちみつの甘味がにんじんの土臭さを和らげるのである。おやつ、スナック感覚でも食べられるし、白ワインにもロゼワインにも見事にあってしまう。肉料理や魚料理の付け合わせにもばっちり、というのだから、文句なしの万能サラダであろう。
にんじんのグラッセみたいに、バターを使わないので、もっとあっさりと、しかも、カロリー抑えめ、その上、甘味ははちみつが補充してくれるので、何本でもにんじん、という美味しさが最高なのであった。
あらゆる場所で、もっと食べたいもっと食べたい、と大騒ぎになってしまった一品。いや、本当に、このにんじんのロティはやばいくらいに美味いのである。理屈は必要ない、迷わず、試して頂きたい。にんじんとの新しい出会いがそこに待ち受けている。
にんじん | 4本(細いもの。太いにんじんであれば2本) |
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生タイム | 2~3本(なければ乾燥ものをひとつかみ) |
にんにく | 1/2片(みじん切り) |
生姜 | 小さじ2(みじん切り) |
エシャロット | 大さじ1(みじん切り) |
蜂蜜 | 小さじ2 |
オリーブオイル | 適量 |
塩 | 適量 |
胡椒 | 適量 |
にんじんを縦に半分、太ければ4分の1に切る。
オーブンを200℃に予熱し、クッキングシートを敷いた天板ににんじんを並べてオリーブオイルを全体に回しかけ、塩、胡椒をしてタイムをのせて15分焼く。
焼いている間に、小さなボウルににんにく、生姜、エシャロット、蜂蜜を混ぜておく。
15分経ったら一度オーブンから取り出し、蜂蜜と混ぜておいたにんにく、生姜、エシャロットをまぶし、もう15分焼く。途中、満遍なく焼けるようにトングなどでにんじんを動かす。
焼き上がったらお皿に並べ、ほんのり温もりがあるうちに召し上がれ。
おっと、冷たくても美味しいですよ。ボナペティ!!!
文:辻 仁成 写真・協力:Miki Mauriac