大原千鶴さんの「今宵のあて」
焼いただけとは思えない深い味わいの「エリンギあわびもどき」

焼いただけとは思えない深い味わいの「エリンギあわびもどき」

もどきと言うと真似てつくったものととられがち。でも、この「あわびもどき」は簡単に手に入るエリンギでつくったとは思えない、お酒の進む味わい深い一品です。お酒を愛する料理研究家の大原千鶴さんに、驚きのあわびもどきのおつまみを教えていただきました。

あわびのような食感とオイスター味が紹興酒にぴったり

エリンギは、シコシコとした歯ごたえが特徴のきのこです。味や香りに癖がなく、味がしみ込みやすいので煮ても焼いても美味しくいただけ、肉厚なのでエリンギ1種でも食べごたえのあるおつまみになります。

シコシコとした食感は、あわびに通じるものがあり、大きく切れば見た目もそっくり。これをオイスターソースで味つけしたら、ほぼあわび(笑)。もどきとわかっていても、あわび料理の気分をお楽しみいただけると思います。

ポイントは、エリンギを動かさずに焼くこと。動かすと水分が出てしまって、せっかくの食感や美味しさがなくなってしまいます。焼きすぎずにふんわりと仕上げ、オイスターソースを加えたらすぐに火を止め、からめて出来上がりです。食べてみるとプリッとしたエリンギはまるであわびのステーキのような満足感。旨みの効いたオイスターソースの複雑な味わいが、紹興酒とピタリと合います。

同じ「エリンギあわびもどき」でも、調味料に醤油やにんにく、オリーブ油を使うと味が変わり、違うお酒のあてにもなります。

エリンギあわびもどきのつくり方

材料材料 (1人分)

エリンギ大1本(70g)
胡麻油大さじ1
オイスターソース小さじ1
生姜少々

1材料を切る

エリンギは、あわびのように斜め薄切りにする。生姜はせん切りにする。

2焼く

フライパンに胡麻油を入れて中火にかけ、エリンギを並べ入れて焼く。こんがりと焼き色がついたら上下を返し、もう片面も色よく焼く。動かさないことがポイント。仕上げにオイスターソースを加えてからめて火を止める。

焼く

3盛りつける

器に盛り、生姜をちらす。

完成

教える人

大原千鶴 料理研究家

大原千鶴 料理研究家

京都・花脊の料理旅館「美山荘」が生家。小さな頃から自然に親しみ、料理の心得を学ぶ。現在は家族五人で京都の市中に暮らし、料理研究家としてテレビや雑誌、講習、講演など多方面で活躍。シンプルなレシピに定評があり、美しい盛りつけにもファンが多い。着物姿のはんなりとした京女の印象とは対照的に、お酒をこよなく愛す行動派。レシピはお酒を呑んでいる時に思いつくのが一番多い。

文:西村晶子 撮影:福森クニヒロ

西村 晶子

西村 晶子 (ライター・編集者)

関西在住のライター、時々編集者。京都の和食を中心に、老舗から新店までを分け隔てなく幅広く取材。2006年8月号「明石の老舗に、至福の柔らか煮、タコ飯を習う」で初執筆。2018年5月号より「京都『食堂おがわ』の季節ごはん」、2021年5月号より「京都『食堂おがわ』の妄想料理帖」の連載を担当。