大原千鶴さんの「今宵のあて」
季節を大切にする京都人が愛する行事食『アジの笹巻き寿司』

季節を大切にする京都人が愛する行事食『アジの笹巻き寿司』

京都では昔からお節句やお祭りなどに笹巻き寿司をいただいたそうです。行事食ですが、甘酢に漬けた青魚と甘めのすし飯の組み合わせは、お酒のいいアテにもなります。手間ががかると思われがちですが、アジでつくるとその日のうちにいただけます。お酒を愛する料理研究家の大原千鶴さんに、そのつくり方とコツを教えていただきました。

甘酸っぱい味つけに負けない、存在感のある純米酒を

京都でも笹巻き寿司を家庭でつくる人は少なくなりましたが、アジだと簡単です。サバでつくるとなると2日がかりですが、アジはすぐに漬かるので2時間で完成します。

すし飯はちょっと甘めの関西風。甘酸っぱいアジとよく合い、味が付いているのでお酒のつまみにもなります。アジを密封袋で漬けると甘酢の量が少なくすみ、保存もしやすく、洗い物も少なくてすみます。

笹の葉は抗菌効果があるので巻くことで保存ができ、何より見た目が美しい。京都では、笹巻きは麩饅頭や葛饅頭、れんこん餅といったお菓子もあって、お弁当に入っていることもあります。

お酒はお寿司の甘酸っぱさに負けない日本酒がいいですね。中でも酸に存在感のあるタイプや輪郭のはっきりした山田錦の純米酒がお薦めです。

アジの笹巻き寿司のつくり方

材料材料 (約10個分)

アジ2枚(正味100g)(刺身用・3枚におろしたもの)
小さじ1/2
A
・ 米酢大さじ1
・ 砂糖小さじ1
・ 薄口醤油小さじ1
★ すし酢(合わせておく)
・ 米酢大さじ1と1/2
・ 砂糖大さじ1
・ 塩小さじ1/4
温かいご飯200g
青じそ2枚
笹の葉10枚(枝付き*)

*製菓材料で手に入る

1アジの下処理

アジは、全体に塩をふって冷蔵庫で1時間以上置き、出てきた水気をふく。小骨があれば抜いて、皮を頭のほうから剥ぐ。

2甘酢に漬ける

保存袋にAを入れて合わせ、①を加える。空気を抜きながら袋をとじ、冷蔵庫で1時間以上置く。

3すし飯をつくる

ご飯に、すし酢を回しかけ、さっくりと混ぜて粗熱をとり、小さいおにぎりをつくる。

4アジと青じそを切る

②からアジを取り出し、ペーパーで水気を拭きとって5mm幅のそぎ切りにする。青じそは縦に1cm幅に切る。

5寿司を仕上げる

③の上に④のアジをのせて青じそで巻きつける。

6笹で巻く

笹の葉の表を上にして円錐形に折り、その中に⑤を入れ、茎側の余った葉を折って茎を隙間に通し、形を整える。

笹で巻く
笹で巻く
笹で巻く

教える人

大原千鶴 料理研究家

大原千鶴 料理研究家

京都・花脊の料理旅館「美山荘」が生家。小さな頃から自然に親しみ、料理の心得を学ぶ。現在は家族五人で京都の市中に暮らし、料理研究家としてテレビや雑誌、講習、講演など多方面で活躍。シンプルなレシピに定評があり、美しい盛りつけにもファンが多い。着物姿のはんなりとした京女の印象とは対照的に、お酒をこよなく愛す行動派。レシピはお酒を呑んでいる時に思いつくのが一番多い。近著「大原千鶴のいつくしみ料理帖」(世界文化社)がある。2023年4月より、オンライン料理レッスンもスタート。

文:西村晶子 撮影:福森クニヒロ

西村 晶子

西村 晶子 (ライター・編集者)

関西在住のライター、時々編集者。京都の和食を中心に、老舗から新店までを分け隔てなく幅広く取材。2006年8月号「明石の老舗に、至福の柔らか煮、タコ飯を習う」で初執筆。2018年5月号より「京都『食堂おがわ』の季節ごはん」、2021年5月号より「京都『食堂おがわ』の妄想料理帖」の連載を担当。