酒肴家のとっておき
あらゆる食材をつまみに変身させる魔法の調味料"純米だし醤油"

あらゆる食材をつまみに変身させる魔法の調味料"純米だし醤油"

日本酒を飲んでいると必ず欲しくなる“だし”と醤油のハーモニーが、酒肴を格段においしく、酒に合う味にしてくれます。そんな酒肴のための調味料をご紹介します!自家製調味料が生み出す、酒飲みのつぼを押さえた傑作おつまみを、酒肴家・稲垣知子さんに教えてもらいました。

酒を飲んでいると“だし”が恋しくなる

酒肴家の稲垣知子さんは、実にうまそうに酒を飲む人だ。とくに日本酒の際は、これでもかと目尻を下げ、猪口を持つ手はいかにも堂に入っている。日夜、お酒に合う酒肴を研究し続け、20年以上がたつという。
そんな稲垣さんが、酒肴をつくるときに愛用している、とっておきの自家製調味料が“純米だし醤油”と“山椒麹”。この二つがあれば、つまみのレシピは無限大に広がる、と教えてくれた。

「純米だし醤油と山椒麹は、いわば旨味を凝縮した調味料です。だしの代わりになりますし、余計な調味料を加えなくても、手軽においしいつまみをつくることができます。つくり方も簡単なんですよ」
純米だし醤油は、純米酒、醤油、かつお節、昆布を使う。ざっくり言うと全部を火にかけて冷ますだけ。かつお節の香りが豊かで、お湯で割ればちょっとした汁ものになるほど、旨味の濃度は高い。
とはいえ、醤油だけではなく純米酒もたっぷりと入っているから塩味は控えめで、醤油味や塩味が突出することなく、あらゆる料理に多用できる魅力がある。「材料はできれば上質なものを選んでください。いい材料を使うと、旨味が濃いので少量でもだしが伸びますし、ちょっとかけるだけで、ふつうの素材がずっとおいしくなります」

もうひとつの山椒麹は、塩麹に実山椒の水煮を入れて一晩ねかせたもの。塩麹の旨味と、実山椒の目の覚めるような青い辛味は、そのままつまんでも酒肴になるし、ひとさじ加えるだけで料理の味わいが鮮やかに色めき立つ。卵や汁ものに入れればだし代わりになる名脇役に。

「私がお酒、とりわけ日本酒を飲むときに欲しくなるのが、塩気ではなく“だし味”。塩味よりもだしを効かせたほうが、旨味のある日本酒に同調して、お酒がすすむんですよ。料理にインパクトをもたせるのではなく、日本酒の旨味や甘味と料理を合わせて口の中で完成するイメージです。これがおつまみです。でも、毎回だしをとるのは大変なので考えたのが、この酒肴調味料なのです」

二つとも、万能な調味料なので、もちろん白ごはんに合う料理にも使える。が、稲垣さんに教えていただいたのは、圧倒的に酒を呼ぶレシピの数々。必ず、日酒を用意してから、とりかかりたい。

“純米だし醤油”のつくり方

材料材料 (つくりやすい分量)

日本酒(純米酒)1カップ
濃口醤油1カップ
昆布3cm角
かつお節10g

1酒を火にかける

小鍋に酒を注ぎ入れて火にかける。

酒を火にかける

2沸騰させる

鍋の側面に火が回ると焦げる恐れがあるので、鍋底だけに火を当てて沸騰させること。

沸騰させる

3煮きる

表面が沸騰してきたら軽くかき混ぜる。とくに鍋の内側の側面についた泡をそのままにしておくと焦げることがあるので落とすこと。吹きこぼれない程度の火加減でよく沸騰させ、アルコールのツンとした香りがなくなるまで煮きる。

煮きる

4醤油を加える

濃口醤油を加え、80℃程度まで温度を上げたら、表面を軽く拭き、味がよく出るように細く切り目を入れた昆布を入れる。

醤油を加える

5かつお節を加える

続けて、たっぷりのかつお節を加え、火からおろす。

かつお節を加える

6冷ます

そのまま冷ましたら出来上がり。かつお節と昆布を入れたまま冷蔵庫で約1カ月保存可能。

冷ます
完成

教える人

稲垣知子 酒肴家

稲垣知子 酒肴家

日本酒と器を愛してやまない酒肴家、料理研究家。漢方薬膳の効能を生かした体に優しい料理も得意としている。著書に『おかずおつまみ』(文化出版局)、『日本酒マリアージュ』(誠文堂新光社)。

※この記事の内容は、「技あり!dancyu おつまみ」に掲載したものです。

技あり!dancyuおつまみ
技あり!dancyuおつまみ
A4変型 判( 96 頁)
ISBN: 9784833477208
2018年07月31日発売 / 864円(税込)

文:山内聖子 写真:三浦英絵

山内 聖子

山内 聖子 (呑む文筆家・唎酒師)

公私ともに17年以上、日本酒を飲み続け、全国の酒蔵や酒場を取材し、「dancyu」や「散歩の達人」など数々の週刊誌や月刊誌などで執筆。日本酒イベントやプロに向けたセミナーの講師としても活動している。著書に『蔵を継ぐ』(双葉社)。ただいま、二作目の日本酒本を執筆中。