ビーツとかぶ、それぞれの個性が楽しめる前菜です。バターのふくよかな旨味と山椒の爽やかさが根菜によく合います。忙しい人でもつくれる、見た目も華やかなもてなし料理を空間プロデューサー・コーディネーターの石村由起子さんに習いました。
心地よい空間で、セレクトされた雑貨を扱うカフェ。今ではどこにでもあるそんな店が、石村さんがカフェ「くるみの木」を立ち上げた37年前にはほとんどありませんでした。「当時コーヒーを出す店には『ママ』がいて、新聞とタバコが当たり前。おいしいものを召し上がっていただいて心地よく過ごす、という理解はなかったですね」。
もともと店舗経営とは無縁のOL、主婦だった石村さん。昔からのやると決めたら止まらない性分で突き進んだ結果、生活、空間コーディネーターとして活躍する今に至りました。芸術系の学校に通ったわけでも、ツテがあったわけでもなく、「ただ、お客さんがこんなものがあったら喜ぶな、これを使ったらうれしいかなと考えた」のだそう。人を喜ばせたい。その気持ちが石村さんの原動力なのです。
そんな人柄に惹かれる人も多く、石村さんのもとにはたくさんの人が集まります。この時世なので、今回はご近所の方を中心に集まっていただきました。週の半分以上は出張という多忙さながら、料理は怠らない石村さん。両立の秘訣は下ごしらえ。買ってきた野菜はすぐに洗って3パターンくらいの形に切っておくのです。さらに味を決めてくれる生ハムやしそ、チーズなどを上手に活用。「簡単が好きなの」そう言ってあっという間に並んだ9品はどれも食べ疲れしない、やさしい味です。食材をうまく組み合わせ、調味料は最小限、加熱時間も短く、上手に手を抜くテクニックもありました。「でも、あれこれ試すから、毎回新しいメニューばっかりなんですよ」。
そんな一期一会も、楽しいですね。
ビーツ | 2個 |
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かぶ | 4個 |
白ワイン | 大さじ2 |
山椒 | 適量(粉) |
塩 | 適量 |
バター | 適量 |
ビーツとかぶのさっぱりした味わいとバターのまろやかな脂分。この2つを上手にとりもってくれているのが山椒の香り。それぞれの個性が楽しめる前菜です。
バターを常温にもどし、そこに山椒と塩を混ぜ合わせておく。塩の量は好みでよいが「塩気をしっかり感じられておいしい」くらいが目安。ビーツとかぶは皮をむき、それぞれ4~8等分に切って白ワインをふりかけておく。
火の通りにくいビーツを先に蒸し器に入れ、中火にかける。蒸気が上がったくらいでかぶを入れ、それぞれ歯ごたえが残るくらいまで火を通す。
2が冷めたら皿に盛り、1を添えていただく。
香川県高松市生まれ。1984年、奈良市でカフェと雑貨の店「くるみの木」をスタート。自身の暮らしから生まれた心地よい空間、温かな人柄に全国にファンが多数。2021年7月下旬、三重県多気町VISIONに石村さんの生活空間がかいま見れる新しい場所が生まれた。
文:椙下晴子 写真:田村昌裕