年に二度旬があるかつおの代表的な料理といえば、刺身とたたき。藁の香りをまとわせながら炙る、本格的なたたきは家庭でつくるのは大変ですが、かつおに香ばしさが加わるだけでぐんとおいしさが増します。それも、かつおの刺身をライブ感たっぷりに目の前で炙るだけ。お酒を愛する料理研究家の大原千鶴さんに、この時季ならではのおつまみを教えていただきました。
買ってきたかつおのお刺身をそのまま器に盛っても、料理屋さんでいただくようなおいしさや感動にはなかなか出合えません。でも、お刺身に少しアレンジやひと手間を加えるだけで、おいしさがアップするんです。
この炙りかつおは、お刺身用の切り身に塩をふって、表面を炙ることで香りが加わり、それがお酒と同調していいあてになります。かつおの厚みはお好みですが、ここでは私好みの薄切り。たたきほどのガツンとした香ばしさはありませんが、炙りの香りがほのかに感じられ、炙るうちに皮目と身の間にある脂が落ちて旨味が増します。薬味や何につけて味わうかもポイントで、かつおは柑橘とにんにくが好相性です。
お酒は、タンニン控えめな軽めの赤ワイン。かつおの鉄分が赤ワインの旨味と合い、柑橘の酸味や、薬味の青じそや生姜の香りがアクセントになって相性をよりよくしてくれます。
かつおの刺身(刺身用、薄切り) | 4枚 |
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塩 | 少々 |
★ にんにく醤油 | |
・ 醤油 | 大さじ1 |
・ 柚子果汁 | 大さじ1/2 |
・ おろしにんにく | 小さじ1/4 |
★ 薬味 | |
・ おろし生姜 | 少々 |
・ 青ねぎ | 少々 |
・ 青じそ | 適宜 |
にんにく醤油の材料を合わせておく。青ねぎを小口切りにする。
かつおを金串に刺し、塩をふって直火で炙る。
②を盛りつけ、青じそがあれば添える。好みの薬味を入れたにんにく醤油につけていただく。
京都・花脊の料理旅館「美山荘」が生家。小さな頃から自然に親しみ、料理の心得を学ぶ。現在は家族五人で京都の市中に暮らし、料理研究家としてテレビや雑誌、講習、講演など多方面で活躍。シンプルなレシピに定評があり、美しい盛りつけにもファンが多い。着物姿のはんなりとした京女の印象とは対照的に、お酒をこよなく愛す行動派。レシピはお酒を呑んでいる時に思いつくのが一番多い。
文:西村晶子 撮影:福森クニヒロ