パリで最近注目を集めているという黒米を使った、健康にもいいサラダのレシピです。作家、ミュージシャン、映画監督など幅広く活躍をしている辻仁成さんは、本誌の連載「キッチンとマルシェのあいだ」でも書いているように、多彩で美味しい料理をつくります。パリに住んで20年の辻さんによる、美味しさと思い出の詰まった“パリ・サラダ”のレシピです。
フランスで今、俄然、注目を集めている健康食のひとつが、今回、ご紹介する黒米である。パリジェンヌを中心に、美容と健康に気を遣うオフィスレディたちが、お昼の時間に、この黒米のサラダを買い求めている。ぼくの知り合いの和食弁当の専門店でも、女性を中心に、とっても人気なのだとか。ビタミンB1、B2、Eに加え、鉄分、カルシウムなどのミネラル類が豊富な、実に栄養価の高い黒米だが、とくにぼくが黒米に注目しているのは、ポリフェノールのひとつアントシアニンがかなり豊富に含まれている点である。アントシアニンには、強い抗酸化作用がある。つまり老化に効くというわけだ。体内では作ることが出来ない必須アミノ酸も多く含まれているし、とくに中国などでは大昔から着目されていた「長寿のためのお米」というのだから、これは注目しない手はない。
その食感は、弾力があり、モチモチしているので、ぼくはサラダにして、身体にいい野菜という認識で摂取を心掛けている。美味しく健康になるわけだから、この黒米ほど一挙両得な食べ物はないのである。味付けは、実にシンプルで、上等なオリーブオイルと赤ワインビネガーを振りかけるだけでも十分。サラダにするのが大変な人は、白米にちょっと混ぜて摂取することをお勧めしたい。とにかく、長生きのため、食生活の中に工夫をこらし積極的に取り入れて頂きたい。
今日は、ぼくがこの黒米を使って普段食べている、ゴージャスではないけれど、日本人にはなじみのある味付けにしたサラダをご紹介したい。この歯応えのあるモチモチ感の黒米をサラダのベースにすることで、腹持ちもよく、食べ応えもある一皿が生まれた。長生きの元だと思えば、食も進む。
まさに、ストレスの多い現代人にお勧めのライト・サラダなのである。それでは、さっそく、つくってみよう。
黒米 | 1カップ |
---|---|
ツナ缶 | 1缶(油を切ってほぐす) |
紫玉ねぎ | 1/4個 |
にんじん | 4cm |
セロリ | 10cm(茎) |
きゅうり | 1/3本 |
プチトマト | 6個 |
イタリアンパセリ | 大さじ3 |
白煎り胡麻 | 小さじ2 |
★ ドレッシング | |
・ 赤ワインビネガー | 大さじ1 |
・ オリーブオイル | 大さじ2 |
・ 醤油 | 小さじ1 |
・ 塩 | 適宜 |
・ 粗挽き黒胡椒 | 適宜 |
まず、黒米をサッと、本当に、サラッと汚れを落とす程度でいいので洗ってから、鍋に入れてたっぷりの水で1時間ほど浸水させておく。いくら洗っても紫色の水が出てくるところに、この黒米のパワーがある。
1の鍋を火にかけて、沸騰したらパスタをゆでるときと同じくらいの塩を入れ、20分くらいゆでて味をみて、好みの硬さまでゆでる。
野菜はすべてみじん切りにしておく。にんじんは細く長く(フランスのシリシリスタイルで)カットすると食感が面白い。セロリは細かくカットしてもいいし、大胆にカットしてより強い食感を試す手もある。きゅうりは中心の部分は水っぽいのでそこを取り除き、皮の部分をみじん切りにする。そのほうがカリカリ感が増す。野菜に関しては根菜を中心にお好きなものを使うのがベストである。
黒米がゆで上がったら、よく水をきり、粗熱が取れたらボウルにうつし、3の野菜、ツナ、イタリアンパセリ、胡麻を混ぜ、ドレッシングで味付けをして完成となる。
写真のように、今日は紫アンディーブがあったので、黒米サラダを載せて、スプーンがわりにし、まるごと食べてみた。いやはや、なかなか他では味わうことの出来ない贅沢な食感となった。ちょっとウサギさんのようなデコレーションを施し、遊び心を加えてみた。紫のパワーが溢れる黒米サラダ、ぜひ、長寿のために、つくって頂きたい。
ボナペティ。
文:辻 仁成 写真・協力:Miki Mauriac