辻仁成の“パリ・サラダ”
辻 仁成の"パリ・サラダ"|第十二回"NY風COBBサラダ"

辻 仁成の"パリ・サラダ"|第十二回"NY風COBBサラダ"

辻さんがNYに滞在していたときの、思い出のCOBBサラダを再現します!作家、ミュージシャン、映画監督など幅広く活躍をしている辻仁成さんは、本誌の連載「キッチンとマルシェのあいだ」でも書いているように、多彩で美味しい料理をつくります。パリに住んで20年の辻さんによる、美味しさと思い出の詰まった“パリ・サラダ”のレシピです。

思い出の詰まったNYのサラダ

ぼくは30代の終わり、毎日新聞社からジャーナリスト・ビザを出して頂き、一年間、ニューヨークに滞在したことがある。これはぼくの食生活に大きな影響を与えることになった。

パリの料理とニューヨークの料理は異なる。パリが繊細で装飾的であるならばニューヨークは知的で大胆であった。当時、ぼくはセントラルパークの入り口にある高層マンションに住んでいたのだけど、その近くにあるカフェで夕刻、仲間たちとよく飲んだ。明け方まで小説を書いていたので、夕方にちょっとお腹が空いた。「辻さん、数人で分け合うことが出来て、サラダなのに、おつまみにもなるサラダがありますよ」と仲間の指揮者に教えられた。それが今日、ご紹介するCOBBサラダなのである。

元々はハリウッドの映画関係者から全米に広まったと言われているが、とにかく、一皿がでかい。渡仏した直後、パリの大手カフェでも同じものを見つけた。注文したら、これが驚くほどニューヨークで食べていたCOBBそのままであった。というのは、ぼくが暮らしている界隈にはアメリカ人がたくさん住んでいるから、需要があるのであろう。ぼくは嬉しくて仲間と飲む時には一緒にCOBBを頼むようになった。

サラダのドレッシングはとくにこだわりがないようで、アメリカでも店によって味が少し違っていた。基本はワインビネガーのドレッシングである。底に葉物が敷き詰められていて、だいたい、七種類の具材が上に七列に整列している。店によってはボンと放り込まれているものもあるけれど、とにかくぼくがニューヨークで食べたCOBBは七列のレインボーカラーであった。ぼくの記憶だと、以下の七種類の具材が一番多かった気がする。ブルーチーズ、ベーコン、チキン、トマト、アボカド、紫玉ねぎ、ゆで卵、である。

食べ方は、いろいろと調べたけれど、正しいものはなく、混ぜる人もいれば、バラバラに食べる者もいて、しかし、食べ方によって、このサラダの使い道も変化する。ぼくは仲間たちと小皿に好きなものを勝手にとりわけ、パンで挟んでおつまみにした。最高の思い出だ。ぼくにこのサラダを教えてくれた指揮者は今、ドイツで音楽監督をやっている。彼が公演でパリを訪れるなら、ぜひ、ニューヨークカフェで待ち合わせ、COBBサラダを肴にワインを傾けたいものである。

では、さっそく、一緒に作ってみましょう。

NY風COBBサラダのつくり方

材料材料 (つくりやすい分量)

各種葉物野菜適量(ロメイン・レタス、普通のレタス、アンディーブ、クレソンなど、お好きな葉物を混ぜて)
ベーコン4~5枚(スライス)
アボカド1/2個(熟したもの)
サラダチキン1パック(ぼくはチキンをグリルしたものを使っている)
ゆで卵2個(固ゆで)
紫玉ねぎ1/4個くらい(スライス)
プチトマト適量
ロックフォールチーズ適量
★ ドレッシング(使用するお皿で量を調整してください)
・ 赤ワインビネガー1/3カップ
・ ディジョンマスタード大さじ1
・ エキストラバージンオリーブオイル1/2~2/3カップ
・ はちみつ小さじ1
・ 塩適量
・ 胡椒適量
・ ロックフォールチーズのすりおろし適量(あれば)

1ドレッシングをつくる

ボウルに赤ワインビネガー、マスタードを混ぜ合わせ、塩、胡椒で調える。少しずつオリーブオイルを加え、乳化するまで、泡だて器で混ぜていく。はちみつ、すりおろしたロックフォール少々を加え、さらに泡だて器で攪拌し、完成。

ドレッシングをつくる

2器に葉野菜を盛りつける

続いて、ミックスした葉物野菜を、ぼくの場合は写真のような深皿に敷き詰める。

器に葉野菜を盛りつける

3具材を盛りつける

②の上に、アボカド、ゆで卵、プチトマト、サラダチキン、ロックフォールチーズを、食べやすい大きさにカットし、紫玉ねぎ、ベーコンとともに、七列に整列させる(ベーコンだけはそのまま置いたほうがぼくは好きです。お好みで)。

ホワイトアスパラをゆでる

ドレッシングは先にサラダにかけておいてもいいし、横に添えて、自由にかける、というのでもよい。とにかく、見映えがいいので、パーティーなどで映える一皿になりますよ。ボナペティ。

完成

文:辻 仁成 写真・協力:Miki Mauriac