爽やかに香るカルダモンを加え、定番のイカとトマトのソテーにアクセントをプラス。明るいグリーンを思わせる、きれいでみずみずしい味わいの“ハイトーン”の日本酒と合わせるのがお薦め。「スパイスは日本酒の中に隠れているおいしさや香りをふくらませてくれます」と酒肴家の稲垣知子さん。今回は、数あるスパイスの中でも特に日本酒に合うという、カルダモンとクミンを使ったつまみを習いました。
「スパイスは日本酒の中に隠れているおいしさや香りをふくらませたり、気づかなかった味を引き出してくれたりします。今まで飲んでいた日本酒の違った一面を知ることができます」と、酒肴家の稲垣知子さん。とはいえ、スパイス。日本酒から遠い存在のように思えるのですが……。
「山椒やわさび、唐辛子だってスパイス。これらの仲間だと思えば、少しは距離が縮まりませんか?」
ふだんはスパイスを複数使ってつまみをつくることの多い稲垣さんだが、日本酒好きのために厳選してくれた。それがカルダモン、そしてクミン。
「カルダモン(グリーンカルダモン)は、爽やかな香りがハイトーンのお酒の持ち味を引き出してくれます」と稲垣さん。ハイトーンの酒とは明るいグリーンを思わせる、きれいでみずみずしい味わいの日本酒だ。
一方クミンは「ロートーン、つまり茶色っぽくて重厚感があり、味の多いお酒が合う」とのこと。クミンの強い香りがお酒のいろいろな味と結びつき、思いがけない味を生むという。
なるほど、これなら誰でもトライできそうだ。スパイスと日本酒の「未知との遭遇」、今晩さっそくお試しを!
シンプルなイカのソテーがカルダモンひとふりで、バル風のあか抜けたつまみに。きれいでみずみずしい味わいの日本酒には、爽やかに香るカルダモンを。お酒の持ち味を、軽やかに引き上げる。
ヤリイカ | 小2はい(約150g) |
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ミニトマト | 5~6個 |
カルダモンパウダー | 小さじ1/2 |
オリーブオイル | 大さじ1 |
塩 | ひとつまみ |
レモン | 適量(くし形切り) |
イカはワタと軟骨を取り除き、胴は幅1cmの輪切りにする。足は吸盤をこそげ、くちばしをはずして半分に切る。ミニトマトはへたを取って半分に切る。
フライパンにオリーブオイルを強火で熱し、イカとミニトマトを手早く炒める。塩、カルダモンパウダーを全体にふり入れ、カルダモンパウダーが固まらないように炒める。
トマトの水分が全体にからんだら火を止め、器に盛ってレモンを添える。
もぎたてのフルーツのようなみずみずしさとともに広がるミネラル感、若い草のニュアンス。こうした「若波」の個性が、カルダモンの青々しい香りによって、さざ波のように立ち上がる。口中を満たすイカの旨味を、お酒とカルダモンが潔く切ってくれるのも、蒸し暑い季節にはうれしい“作用”。
和食からエスニックまで、ジャンルを超えて日本酒に合うつまみを研究。スパイスを使った料理と日本酒のペアリングも得意。ふだんは何種類ものスパイスを組み合わせて使うことが多い。「スパイスの効果で、料理とお酒の味わいに深みが増すんです」
文:佐々木香織 写真:宮濱祐美子 スタイリング:大畑純子 撮影協力:UTUWA
※この記事の内容は「技あり!dancyuスパイス」に掲載したものです。