最近、ニューヨークで大流行しているという、ヘルシーなサラダです。作家、ミュージシャン、映画監督など幅広く活躍をしている辻仁成さんは、本誌の連載「キッチンとマルシェのあいだ」でも書いているように、多彩で美味しい料理をつくります。パリに住んで20年の辻さんによる、美味しさと思い出の詰まった“パリ・サラダ”のレシピです。
パリで暮らしだした20年前、ぼくはマレ地区のユダヤ人街でうまれてはじめて「ファラフェル」なる食べ物を口にした。その時の感動ったらなかった。それはファラフェル・サンドというもので、ピタパンの中にキャベツの千切りなど野菜の中に埋没するような感じで数個のファラフェルが詰め込まれ、マヨネーズ風のソースがたっぷりとかかった中東風ファーストフード?かぶりついた時のあの興奮と感動と至福感は半端なかった。「なんじゃこれ、うめー」と思わず大声を張り上げてしまったほどなのだ。今も、ユダヤ人街に行くと、必ず買って食べる。基本は、席に座って食べるものじゃなく、立ち食いの庶民的なピタ・サンドなのである。
それから数年後、ぼくの中でレバノン料理ブームが訪れる。15区あたりにこれらの店が集中している地区があり、その一軒でファラフェルの添えられたサラダ風プレートを見つけた。ホムスとか、パセリのサラダなどが一緒に組み合わされた、いわゆる「メッツェ」とよばれるオリエンタル・サラダプレートである。ユダヤ人とアラブ人ってどういう関係なんだろうと、当時のぼくは地政学的なことや歴史的背景もわからずに、どっちの世界にも存在するこのファラフェルなるコロッケに思いを馳せたものだ。後々わかってくるのだけど、ファラフェルはエジプトから中東、アラビア半島、そしてイランに至る幅広い地域で食べることができるのである。
ある日、これは自分で作ってみたい、と思うようになった。そして、世界各地で食べ歩き、研究を重ね(笑)、完成したのが、今日ご紹介する辻家風オリエンタル・サラダということになる。ファラフェルは、ひよこ豆を一晩水で戻して作るコロッケのことで、結構手間暇がかかる。しかし、その価値は十分ある。ひよこ豆やそら豆が材料なので、緑と青の間のような不思議な色合いをしているが、衣とかつけないで、素揚げするとコロッケになる。さっぱりしたパセリのサラダ、いわゆるレバノン風のタブレとの相性が抜群である。メッツェを全部作ろうとすると大変過ぎるが、ファラフェルとパセリのタブレぐらいであればそれほど難しくもない。その上、肉が苦手な方には、腹持ちもするし、これほど栄養価の高いサラダはないので、おすすめ。ニューヨーカーのビーガンたちの間で大流行しているというのも頷ける。
さて、では、一緒に作ってみましょう!
乾燥ひよこ豆 | 250g |
---|---|
イタリアンパセリ | カップ2(普通のパセリでも良い) |
コリアンダー | カップ1 |
玉ねぎ | 小1個 |
にんにく | 2片 |
クミン | 小さじ1 |
カルダモン | 小さじ1/2 |
コリアンダー粉 | 小さじ1/2 |
カイエンペッパー | 小さじ1/2 |
ひよこ豆粉 | 大さじ2 |
オリーブオイル | 大さじ2 |
胡麻 | 大さじ1 |
ベーキングパウダー | 10g |
塩 | 小さじ2 |
胡椒 | 少々 |
揚げ油 | 適量 |
★ ヨーグルトソース | |
・ プレーンヨーグルト | 100g |
・ にんにく | 1片 |
・ レモン | 1/2個 |
・ 塩 | 少々 |
・ 胡椒 | 少々 |
★ レバノン風タブレ | |
・ イタリアンパセリ | カップ2 |
・ トマト | 半分 |
・ 紫玉ねぎ | 1/4個 |
・ ブルグール | 1/4カップ(またはクスクス) |
・ レモン | 1個分(搾り汁) |
・ 塩 | 適宜 |
・ 胡椒 | 適宜 |
乾燥ひよこ豆は前日から水につけ(12時間くらい)、調理する前によく水をきっておく。
必ず乾燥のひよこ豆を使うように。
パセリとコリアンダーは茎の部分を取ってよく洗い、水気をきってから細かくする。
ボウルにひよこ豆、細かく切ったパセリ、コリアンダー、玉ねぎのみじん切り、細かくしたにんにくを入れ、胡麻以外の材料を全部入れてハンドブレンダーかフードプロセッサーでつぶす。
なめらかになったら胡麻を加え、よく混ぜておく。
スプーン2本を使って丸く形づくりながら170度に熱した油で揚げていく。よく焼き色がついたら完成。
小さな容器にヨーグルトを入れ、すりおろしたにんにく、レモンの搾り汁を入れてよく混ぜ、最後に塩、胡椒で味を調えておく。
パセリは茎の部分を取り、葉っぱだけにして細かくする。ブルグールを5分ほどゆでて水きって冷ましておく(クスクスの場合はクスクスを戻す要領で)。
トマト、紫玉ねぎをみじん切りにしておく。材料をすべてボウルに入れ、混ぜるだけ!塩、胡椒で味を調えて。
プレートにタブレとファラフェルを並べ、ファラフェルにヨーグルトソースをかけて召し上がれ。
文:辻仁成 撮影・協力:Miki Mauriac