水分が多く、カラッと揚げるのが難しい茄子も、三度揚げすることでカラッと仕上がります!衣と油を駆使して、野菜のポテンシャルを引き出す調理法天ぷら。東京・外苑前にある天ぷら屋「元吉」の店主・元吉和仁さんに、野菜天ぷらをおいしく揚げる秘密を習いました。
天ぷらは「野菜をおいしく食べるための優れた調理法です」。こう話すのは東京・外苑前の「天ぷら元吉」の主人、元吉和仁さん。天ぷらにすれば、野菜の甘味や香りが引き出されて香ばしさも加わる。薬味に使うような地味野菜でも、堂々主役を張れるのだ。
天ぷらづくりで最も重要なのは衣。「これができれば、成功したも同然です」と元吉さんは断言する。ポイントは薄い衣の上に濃い衣を重ね、その野菜が一番引き立つ厚さにしてやること。やや難しく感じるかもしれないが、大丈夫。野菜は魚介に比べておいしさのストライクゾーンが広いので、初心者でも失敗しにくい。
玉ねぎ、しそ、なすなど身近な野菜も、元吉さんの手法で揚げれば、香りや食感が劇的に変化する。野菜に惚れ直すこと請け合いだ。
家庭でおなじみの千両なすは、実は難度の高い野菜。水分が多く、揚げたそばから衣がベトベトになってしまうからです。そこで、考案したのが三度揚げ。水分を吐き出させながら3回に分けて揚げると、周りはパリッとして中はとろとろに、少々時間がたってもベトつかず賀茂なすに近い味わいになりますよ。
茄子は紫紺色が濃く、ツヤのあるものを選ぶ。ヘタを落とし、反対側の端も硬いので落としておく。縦半分に切る。皮に包丁目を斜めに細かく入れる。包丁目とクロスするようにもう一度包丁目を入れる。このように隠し包丁を入れておくと、歯切れよく、食べやすくなる。さらに縦半分に切り分ける。
衣のボウルに薄力粉を加えて濃度を上げ、とろりとさせる。表面にも粉を広げ、さらに濃い部分をつくる。
茄子は薄力粉が落ちやすいので厚くつけ、2の濃くした衣を、薄い部分→濃い部分の順にたっぷりつける。
180℃の揚げ油に皮を下にしてそっと入れ、衣が固まってきたら裏返す。天地を返しながら3分ほど揚げ、うっすらと色づいてきたら、いったん引き上げる。
そのまましばらく置く。水分が出て衣が柔らかくなってきたら、180℃の油に再び投入。
1分ほどしてピチピチと明るい音がしてきたら、菜箸で茄子を持ち上げて油をきり、もう一度揚げ油へ。2~3回、油の中で転がして、表面がカリッとしたら引き上げる。
すぐに半分に切って蒸気を抜く。
1975年生まれ。学生時代に天ぷら職人を志し調理師学校へ。大阪の老舗料亭、都内の天ぷら屋などを経て31歳で独立。理にかなった自由な発想で独自の野菜天ぷらを追究する。
文:上島寿子 写真:湯浅亨
※この記事の内容はdancyu2017年8月号に掲載したものです。