2段階揚げで時間はかかるけれど、確実においしく揚げられる方法を伝授!衣と油を駆使して、野菜のポテンシャルを引き出す調理法天ぷら。東京・外苑前にある天ぷら屋「元吉」の店主・元吉和仁さんに、野菜天ぷらをおいしく揚げる秘密を習いました。
天ぷらは「野菜をおいしく食べるための優れた調理法です」。こう話すのは東京・外苑前の「天ぷら元吉」の主人、元吉和仁さん。天ぷらにすれば、野菜の甘味や香りが引き出されて香ばしさも加わる。薬味に使うような地味野菜でも、堂々主役を張れるのだ。
天ぷらづくりで最も重要なのは衣。「これができれば、成功したも同然です」と元吉さんは断言する。ポイントは薄い衣の上に濃い衣を重ね、その野菜が一番引き立つ厚さにしてやること。やや難しく感じるかもしれないが、大丈夫。野菜は魚介に比べておいしさのストライクゾーンが広いので、初心者でも失敗しにくい。
玉ねぎ、しそ、なすなど身近な野菜も、元吉さんの手法で揚げれば、香りや食感が劇的に変化する。野菜に惚れ直すこと請け合いだ。
厚いさつまいもだからと長時間揚げると衣が硬くなります。そこで一工夫。紙で包んで揚げると、衣が薄く中は柔らかで“きんつば”のようになるんです。紅あずまのようなホクホク系よりも、紅はるか、シルクスイートなどのねっとり系が向きます。形状は太くてまっすぐなものを。
さつまいも | 1枚(直径7cmくらいの太いもの) |
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揚げ油 | 適宜 |
衣 | 適宜 |
薄力粉 | 適宜 |
*キッチンペーパー(なるべく厚手のもの)、アルミホイル、たこ糸を適宜用意。
3cmの厚さに切り、角が焦げやすいので、面取りをしておく。薄力粉を全体に薄くムラなくまぶす。厚くつけると白い層ができて、食感が悪くなるので注意。
衣の薄いところにさつまいもをくぐらせたら、今度は濃いところにつけて、しっかり密着させる。180℃の揚げ油にそっと入れる。時々天地を返しながら、全体がカリッと揚がったら引き上げる。揚げ時間は2 分ほど。この段階ではまだ中に火が通っていなくてよい。
キッチンペーパーを2枚続けて広げ、縦長になるように置く。手前端に2のさつまいもを一個置いて、左右を折り畳みながらくるりと包み込む。たこ糸を十字にかけて結び、ペーパーがほどけないようにする。残りのさつまいもも同様にする。
3を180℃の油に入れ、15分ほど揚げる。揚げる音が静かになり、時折ポコリと泡が出るようになったら火が通った合図。箸や竹串でペーパーを突き破り、さつまいもの中まですっと通るか確認。まず1 個だけ引き上げる。
はさみか包丁でペーパーを切って外す。とても熱いので、タオルなどを手にして作業すること。表面の油を拭き取る。
5を新しいペーパーで包み、さらにアルミホイルで包む。ここまできたら、油から別の芋を引き上げて同様にする。油のしみ込んだ紙に包まれたまま冷めると衣が油を吸ってふやけてしまうので、必ず一つずつ引き上げて作業をすること。紙に包んであるので、油の中に多少長く置いても大丈夫なのだ。
15分ほどしたら、アルミホイルとペーパーを外し、半分に切る。もし、衣がふやけていたら、180℃の油でさっと揚げて表面をカリッとさせてから半分に切ろう。
1975年生まれ。学生時代に天ぷら職人を志し調理師学校へ。大阪の老舗料亭、都内の天ぷら屋などを経て31歳で独立。理にかなった自由な発想で独自の野菜天ぷらを追究する。
文:上島寿子 写真:湯浅亨
※この記事の内容はdancyu2017年8月号に掲載したものです。