アワビを思わせるような食感と、椎茸の濃縮した旨味が美味!衣と油を駆使して、野菜のポテンシャルを引き出す調理法天ぷら。東京・外苑前にある天ぷら屋「元吉」の店主・元吉和仁さんに、野菜天ぷらをおいしく揚げる秘密を習いました。
天ぷらは「野菜をおいしく食べるための優れた調理法です」。こう話すのは東京・外苑前の「天ぷら元吉」の主人、元吉和仁さん。天ぷらにすれば、野菜の甘味や香りが引き出されて香ばしさも加わる。薬味に使うような地味野菜でも、堂々主役を張れるのだ。
天ぷらづくりで最も重要なのは衣。「これができれば、成功したも同然です」と元吉さんは断言する。ポイントは薄い衣の上に濃い衣を重ね、その野菜が一番引き立つ厚さにしてやること。やや難しく感じるかもしれないが、大丈夫。野菜は魚介に比べておいしさのストライクゾーンが広いので、初心者でも失敗しにくい。
玉ねぎ、しそ、なすなど身近な野菜も、元吉さんの手法で揚げれば、香りや食感が劇的に変化する。野菜に惚れ直すこと請け合いだ。
何より大切なのが、椎茸の選び方。肉厚で笠が閉じているほうがみずみずしく香りも豊か。軸が白っぽく毛羽立っていれば、鮮度もよいと言えます。椎茸は、揚がるとポコポコと大きな泡が出て、油の中を走り出します。ぜひ確かめてみてください。
椎茸 | 4個 |
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揚げ油 | 適宜 |
衣 | 適宜 |
薄力粉 | 適宜 |
表面の汚れをキッチンペーパーなどで払い落とす。ひだに水が入ってしまうので、洗わないこと。笠から1cmほど残して軸をカット。水で濡らしたキッチンペーパーで拭いて、表面を湿らせる。こうすると衣がつきやすくなる。
薄力粉を全体につける。笠の部分は衣が落ちやすいので厚めに、笠の裏側や軸は薄めにつける。衣の濃いところに、笠を下にしてまず浸す。衣がついたら、ひっくり返して裏側にも衣をまとわせる。
揚げ油の温度は185℃とやや高め。笠を上にして油に入れて、表面が固まってきたら裏返す。さらに、天地を返しながら5~6分揚げる。中まで火が通ると大きな気泡ができて、椎茸が油の中で走り出す。これが揚げ上がりのサイン。天地をくるっと返してから引き上げる。すぐに半分に切って蒸気を抜く。
1975年生まれ。学生時代に天ぷら職人を志し調理師学校へ。大阪の老舗料亭、都内の天ぷら屋などを経て31歳で独立。理にかなった自由な発想で独自の野菜天ぷらを追究する。
文:上島寿子 写真:湯浅亨
※この記事の内容はdancyu2017年8月号に掲載したものです。