有賀薫さんのクラシックスープレシピ。秋の定番野菜のかぼちゃを使ってシルキーな舌触りのポタージュをつくります。裏濾し&とろみの付け方を学んでワンランク上のスープに挑戦しましょう。
温かい「ポタージュ」のカップを手に包みこむひとときは、秋冬の幸せのひとつですよね。
11月はかぼちゃを使ってポタージュをより洗練されたスタイルでつくります。その前に、ポタージュをより深く理解するためのお話を少しだけ。
ポタージュはフランス料理が洗練されていく過程で生まれた言葉で、実はスープ全般を指しています。鍋(フランス語でpot)でつくられたものという意味があります。
大きくわけると、ポタージュ・クレール(コンソメのように澄んだスープ)と、ポタージュ・リエ(とろみをつけたスープ)の2種類があり、日本人がポタージュと聞いて想い浮かべる、濃度があってとろりとしたスープは、ポタージュ・リエのことなのです。
では、ポタージュ・リエ(ここから先は日本式に、ポタージュと呼びます)をつくりましょう。
かぼちゃを煮て裏濾ししたピュレに、ブイヨンを加えて旨みを足し、ミルクやバターでコクを出し、コーンスターチでとろみをつける。これがレシピの骨組みです。手間こそかかりますが、材料も少なくシンプルなレシピだと思います。
ポイントはふたつ。かぼちゃの裏濾しと、コーンスターチを使うことです。
ひとつめのポイントは、裏濾しです。皮を剥いて切ったかぼちゃを鍋で蒸し煮してブイヨンを足し、ミキサーにかけたあと、丁寧に裏濾すことで、キメの細かい、滑らかな舌触りのご馳走ポタージュになります。
ふたつめのポイントは、つなぎのチョイス。小麦粉をバターで炒めたルウを使うと、もったりとした重い味わいなりがちです。そこで、コーンスターチを使います。
コーンスターチはとうもろこしのでんぷんを粉にしたもので、片栗粉のようにスープが煮立ったところへ水溶きして混ぜるととろみがつきます。片栗粉より軽やかな味に仕上がって、安定性にもすぐれています。温度が下がっても粘度が保たれるため、冷製ポタージュにもぴったりです。
さて、最後の一手。ポタージュの弱点は、味が単調なために食べ飽きやすいことと、使っている具材が何かわかりづらいことです。その弱点をフォローするために、トッピングはとても重要。
今回はクルトンの代わりに、かぼちゃを小さな角切りにしたものを浮かべます。面白いもので、かぼちゃが浮いていると、脳がかぼちゃのスープと認識しやすいせいか、かぼちゃの風味がより感じられるのです。
こうして、各プロセスに少しずつ手間をかけることで、スープはより洗礼されておいしくなっていきます。
かぼちゃ | 1/4個 |
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バター | 20g |
チキンブイヨン | 300ml |
生クリーム | 40ml |
コーンスターチ | 大さじ1/2 |
塩 | ふたつまみ |
砂糖 | 少々 |
かぼちゃは種とわたをスプーンで取り、4つに切ってから飾り用の8mm角のかぼちゃを20個ほど切り出す。ほかは皮を剥き、3cmほどの角切りにする。飾り用のかぼちゃはキッチンペーパーか、だし用のパックなどで包んでおく。
皮を剥いたかぼちゃを鍋に入れ、塩ひとつまみ、砂糖少々を振り、飾り用のかぼちゃを上にのせる。水100ml(分量外)を加えて蓋をし、中火で10分ほど、かぼちゃがやわらかくなるまで蒸し煮する。5~6分したところで蓋を開け、飾り用のかぼちゃを取り出し、水が足りなくなっていれば足す。
かぼちゃが煮えたらブイヨン半量を加えてブレンダーで撹拌して、濾し器とボウルを用意して裏濾す。
裏濾したかぼちゃを鍋に戻して弱火にかけ、残りのブイヨンを少しずつ加えながら好みの固さにする。生クリームまたは牛乳を加えて、アクが出たら取り除く。コーンスターチを同量の水(分量外)で溶き、少しずつ加えてとろみをつけてから、バターを入れる。器によそい、飾りのかぼちゃを浮かべ、生クリームをトッピングしてでき上がり。
――つづく。
文:有賀薫 写真:キッチンミノル