ブイヤベースは言わずと知れた、南フランスの港町・マルセイユの名物料理です。
そもそもは漁師が市場で売れない雑魚を大鍋に入れて塩煮しただけの、ワイルドメシ。まさに名もなきスープです。17世紀になって、新大陸から伝わってきたトマトが加わるようになりました。
やがてマルセイユが観光地となり、ブイヤベースは地中海をイメージさせる名物料理として、洗練されたレストラン料理へと発展していったのです。
ブイヤベースの語源は「煮込む(bouill)+火を止める(abaisse)」の合成語といわれます。火を止める、というのは魚介のクサみが出ないように、長い時間は煮込まないことを指しているのでしょう。
つくり方はいたって簡単。ねぎ類やにんにく、セロリなどの香味野菜を炒め、魚や海老、貝などの魚介を煮込みます。タイムやサフラン、フェンネルなどハーブを使ったり、卵とにんにくでつくるルイユというソースを添えるのが特殊といえば特殊ですが、食材探しには苦労しないはずです。
となると、私たち庶民にとって一番のハードルは、魚介をどう組み合わせて手に入れるかでしょう。ここは、魚屋さんを味方につけると良いと思います。
デパートや大きなスーパーの鮮魚店では、魚の食べ方の相談に乗ってくれますし、もちろん下処理もばっちりしてくれます。
私はいつも「ブイヤベースをつくりたいんだけど、向いている魚を教えて!」と言って、2種類ぐらい選んで、さばいてもらいます。
実はマルセイユには市が定める「ブイヤベース憲章」なるものがあり、地中海の岩礁に生息するもの(カサゴ、ホウボウ、マトウダイ、オコゼなど......)を4種類以上入れなければならないとか、鯛やオマール、ムール貝、タコ、イカは入れないといったルールがあるそうです。
ただ、これは地元の魚や野菜を使わせるためのものと思われます。基本的には好きな魚や貝、甲殻類を入れてつくれます。
魚は白身魚が向きます。鯛、鱈、鮭、メバル、イトヨリ、ホウボウ、カサゴ、アイナメ、太刀魚などが良いでしょう。鯖や鯵などの青魚は個性が強すぎてしまいますので、避けた方が無難です。
ブイヤベースを4人分ほどつくるとしたら、魚2~3種、甲殻類(海老や蟹)1種、貝1種、という構成でしょうか。
今回のレシピではイカも入れているので、かなりのボリューム!鯛や鱈、鮭なら切り身でよいですし、丸魚なら内臓をとって筒切りにしてもらいましょう。
さあ、魚介が揃ったら、いよいよつくり始めましょう。鍋は20cm以上の大きなものを用意してくださいね!
ホウボウ | 400g |
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アイナメ | 400g |
鯛 | 200g |
伊勢海老 | 1尾 |
ヤリイカ | 1杯 |
ムール貝 | 8個 |
玉ねぎ | 1個 |
にんにく | 1個 |
セロリ | 1/2本 |
リーキ | 1/2本 |
トマト | 300g |
トマトペースト | 大さじ1 |
じゃがいも | 2個 |
白ワイン | 100mL |
パスティス | 大さじ1 |
塩 | 小さじ2 |
胡椒 | 少々 |
オリーブオイル | 大さじ4 |
タイム | 1枝 |
サフラン | 小さじ1/2 |
ローリエ | 1枚 |
★ ルイユ | |
・ にんにく | 2片 |
・ 卵黄 | 2個 |
・ サフラン | ひとつまみ |
・ カイエンヌペッパー | 少々 |
・ オリーブオイル | 大さじ3 |
・ 塩 | 少々 |
内臓を取り8cmほどの大きさにぶつ切りした魚の切り身を、塩小さじ1とオリーブオイル大さじ1でマリネする。
イカは胴体と頭を繋いでいる筋をはがし、内臓ごと胴体を一緒に引き抜く。軟骨も取り去る。頭の中を水洗いして胴とえんぺらを筒切りにする。ゲソは3つほどに切りわける。
伊勢海老は腹側から出刃包丁を入れて、縦に半割りする。出刃包丁がなければキッチンバサミを使う。断面にひとつまみの塩をふり、触角が長い場合は切る。
ムール貝はよく洗い、貝殻の間から出ている紐のような足糸(そくし)を蝶つがいと逆の方に引いて取る。
玉ねぎ、リーキはうす切り、セロリとにんにくは粗みじん切り、トマトは1cmの角切りする。
オリーブオイル大さじ3を熱した鍋で玉ねぎとリーキを炒める。野菜から水分が出てきたら、にんにくとセロリを加えて、香りが立ってきたらトマトとトマトペーストも一緒に炒め合わせる。白ワインとパスティスを加える。
皮を剥いて1cm幅に切ったじゃがいもとマリネした魚、塩、タイム、ローリエ、サフランを入れ、具材がひたひたになるまで水を加えて強火で煮込む。ひと煮立ちしてから10分ほど経ったら、伊勢海老とイカを加えてさらに10分ほど煮込む。最後にムール貝を加えて5分煮込み、塩と胡椒で味を整える。
卵黄と塩をボウルに入れ、細かくすりつぶしたたサフランを加えてホイッパーでよく混ぜる。オリーブオイルを2~3回に分けながら混ぜ合わせ、マヨネーズ状になったらカイエンヌペッパーを混ぜる。
皿にスープを盛り付け、ルイユを添えたらでき上がり。
文:有賀薫 写真:キッチンミノル