昆布の使い方は、出汁をとるだけじゃありません。昆布大使の松田真枝さんに教わる昆布料理、第7回は超カンタン昆布〆です。何がカンタンって、昆布の切れ端をパズルみたいに組み合わせればOKなんです。刺身や野菜でも、さらに鶏肉でも昆布〆できますよ。
昆布の切れ端でも、余った昆布でも、パズルのように組み合わせれば無駄なしで、超カンタン。
菜の花や山菜の昆布〆もおすすめ。生で食べられる魚介類だったら、どんな種類もOK。牡蠣を使うなら、サッとゆがいて水けをしっかりふいてから。
ちょこっと残った刺身や、野菜に昆布の旨味が染み込んで、酒の肴に最高ですよ。
使った昆布は捨てないで。鍋にだって、味噌汁の出汁にだって、まだまだ使えます。
昆布〆といえば、富山。羅臼昆布で知られる、北海道・羅臼の入植者の7割が富山出身なんです。おそらく羅臼からふるさとへ送られた昆布と地魚を使った、富山の人たちの知恵なのでしょうね。富山で「お刺身が残ったら全部昆布〆にする」と聞いて市場へ訪ねたら、確かに昆布〆にしたいろいろな種類の魚や貝が売られていました。山菜も昆布で〆るとおいしいよって聞いて、茹でたワラビで試してみたら、山菜の苦みが昆布の旨味でいい塩梅に。今回は山菜の代わりに菜の花を使いました。昆布〆にすれば、日持ちする上おいしくなる。カンタンなので、昆布がちょこっと余ったらぜひ試してみてください。
刺身 | 適宜 |
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昆布 | 適宜(切れ端) |
菜の花 | 4本 |
刺身の昆布〆 | 1人分 |
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菜の花の昆布〆 | 4本 |
昆布〆に使った昆布 | すべて |
大根おろし | 適宜 |
ぽん酢 | 適宜 |
小鍋に、昆布〆に使った昆布と、刺身をくぐらせることができるぐらいの水(分量外)を入れて火にかける。ひと煮立ちしたら火を止めて、アクをきれいにとる。
刺身を1枚ずつ広げて入れ、色が変わったらすぐに取り出す。野菜も同様に。大根おろしとぽん酢をお好みで。
肉だって昆布〆ができます!
昆布で〆ることで、水分が抜けると同時に昆布の旨味をまとい、肉がおいしくなるんです。しっかり昆布で〆れば、塩をふらなくても昆布の旨味だけで十分。失敗なしで、理想的なチキンソテーがつくれます!
〆たあとのお楽しみは、鶏肉と昆布のWスープ。肉の旨味が染み込んだ昆布でいい出汁がとれます。
昆布を余すことなく食べ切る方法を見つけた富山の人は、エライなあとつくづく思います。魚ができるなら、肉だってできるんじゃないかと試してみたら、おいしいだけじゃなかった。昆布で〆ることで水分が抜け、肉は柔らかく、しっとりと。なにより味つけなしですむっていうのが、忙しいときにお役立ちだと大発見。試作していたとき見つけた裏技がひとつ。冷凍した肉(挽き肉がとりわけお薦め)を解凍するときに、肉をビニール袋に入れ、そこに昆布のかけらを3~4枚足す。そうすると昆布が、解凍する間に出る肉のドリップを吸ってくれるんです。その上、肉に昆布の旨味が浸透して、冷凍の肉がちょっとだけおいしくなります。
鶏もも肉 | 1枚 |
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昆布 | 適宜(切れ端) |
昆布〆した鶏もも肉 | 1枚 |
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にんじん | 1/2本 |
胡椒 | 適宜 |
オリーブオイル | 適宜 |
鶏肉は4cm角くらいに切り分ける。にんじんは皮をむいてピーラーで薄切りにする。
フライパンにオリーブオイルを熱し、鶏肉を皮側から並べる。初めは強火で、焼ける音がしはじめたら中弱火で焼く。鶏肉の皮の脂が出てきたらにんじんを入れる。皮がカリっと焼けてきたら裏返して完全に火を通す。皮面に胡椒をふったらでき上がり。味が足りないようだったら仕上げに塩をふるといい。
昆布〆した鶏もも肉 | 1枚 |
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昆布〆に使った昆布 | すべて |
白菜 | 1/4個 |
舞茸 | 1/2パック |
柚子の皮 | 適宜 |
鶏肉をひと口大に切る。舞茸は食べやすい大きさに手でほぐす。白菜の葉はザク切りに、茎は大きめのそぎ切りにする。柚子の皮はせん切りにする。
鍋に水、昆布、鶏肉、舞茸、白菜を入れて火にかける。ひと煮立ちしたら柚子の皮を散らす。味が足りなければ、食べるときに好みで塩を足しても。
――つづく。
北海道生まれ、北海道在住。料理研究家。札幌で北海道の食材を使ったイタリア料理教室「クチナイト」を主宰。つくりやすいレシピが評判で、北海道の食の伝え手として、地元のメディアやイベントで活躍。2016年日本昆布協会昆布大使に任命されたことを機に、えりも町、羅臼町、根室市など北海道中の産地を巡り、さらに富山、大阪、沖縄など、北海道から昆布が運ばれた「昆布ロード」の中継地点を訪ねる。各地の食文化と結びついた昆布食の聞き書きを続けている。1月にはパリで開催中の「ジャポニスム2018」で、昆布出汁のプレゼンテーションを行う予定。
文:神吉佳奈子 写真:長野陽一