昆布はどこへ行く。
昆布とイタリアンのシンクロニシティ。

昆布とイタリアンのシンクロニシティ。

昆布大使・松田真枝さんの「昆布はどこへ行く。」最終回はイタリアンで昆布使い。昆布は和食だと思っているあなた。今や世界のトップシェフたちがこぞって昆布を使う時代なのですよ。パスタにリゾット、アクアパッツァ、つくってみたら昆布の底力がわかります。

昆布の味ではなく、昆布の力を使います。

丁寧に魚を下ごしらえすると、トマトと昆布の凝縮した旨味がじっくり染み込んで、じんわりおいしい。ご馳走感がアップするのは一尾まるごとだけれど、切り身でつくればもっとカンタン。

昆布と一緒に炊いた魚の煮つけ、なんですけど、実はこれイタリアンです。南イタリアの漁師料理、アクア(水)パッツァ(暴れる)。
魚介とトマトの旨味を、昆布でさらに底上げ。隠し味(隠れてないけど)の昆布がいい仕事しています。昆布のエライところは、どんな料理に使っても、素材の味を引き上げるうえ、決して昆布味にならないところ。
まずは、昆布の力が本領発揮のアクアパッツァでお試しを。

大阪のイタリア料理店「ポンテヴェッキオ」の山根大助シェフが、30年来、昆布出汁を料理に使っていると、あるときテレビで見て。それなら私もやってみようと、昆布を使ってみたのがはじまり。京都の四川料理店「大鵬」の渡辺幸樹シェフも「昆布は旨味をつけるというより、食材のよさを引き出すので料理が格段に変わる」と教えてくれました。世界一のレストランといわれているデンマークの「ノーマ」レネ・レゼピシェフも、北海道の羅臼昆布を使っています。和食だけじゃない昆布使い、つくって食べたらきっとわかるはずです。

昆布パワーでアクアパッツァ

材料 材料 (2~3人分)

・ めばる(白身の魚であればなんでもOK) 1尾
・ にんにく(薄切り) 1片(小)
・ アサリ 15個(300g)
・ ミニトマト(半分に切る) 6~10個(150g)
・ 昆布の切れ端 5cm角
・ エルブドプロヴァンス(乾燥ハーブ) ふたつまみ
・ オリーブオイル グリル用 大さじ1 1/2
・ オリーブオイル 仕上げ用 大さじ3
・ 粗塩(魚の下ごしらえ用) 適宜
・ グラニュー糖(魚の下ごしらえ用) 適宜

下準備

めばるは包丁でうろこをこそげ取り、えらを取り除く。内臓を抜いて流水で腹の中をきれいに洗う。アサリは濃度3%の塩水(分量外)に浸け、蓋をして暗いところで2~3時間砂抜きをする。

1 魚の余分な水分を抜く

魚は食べやすいように、尾びれ以外のヒレをすべてハサミで切り取る。火が通りやすいよう、表面に包丁で切れ目を入れる。腹にはキッチンペーパーを丸めて入れておく。魚に多めの粗塩(魚の重さの2%が目安)と、その1/3ほどのグラニュー糖を振り、キッチンペーパーにしっかり包んで、常温で15分ほど置く。焼く直前に腹の中のキッチンペーパーを取り除き、エルブドプロヴァンスを全体にふる。

魚の余分な水分を抜く

2 魚の両面をこんがりと

フライパンにオリーブオイル大さじ1 1/2とにんにくを入れ、中強火にかける。にんにくが色づいたら魚を入れて焼く。こんがり焼けたら裏返す。にんにくは焦げはじめたら取り除く。

魚の両面をこんがりと

3 水と昆布を加えたら強火で

魚の両面が焼けたらフライパンの余計な油をキッチンペーパーで拭き取り、強火にして魚がかぶるくらいの水(分量外)を注ぐ。昆布の切れ端、アサリとミニトマトを入れて煮る。

水と昆布を加えたら強火で

4 乳化させてソースを仕上げる

10分ほどたち水分が煮詰まったら、オリーブオイル大さじ3を回し入れる。フライパンを動かしながらしっかり混ぜて、とろりとしたソースに仕上げたら完成。

乳化させてソースを仕上げる

昆布のちょい足しで、素材の底力をアップ!

昆布と魚醤のペペロンチーノ
にんにくの香りがふんわり、シンプルなキャベツのパスタなのに、ひと口食べるとあれ?いつもよりちょっとおいしい。昆布は素材の味を引き上げる底力がある。それを実感できるのがこのパスタ。ほんとに昆布ってエライ!

スパゲッティを茹でるとき、塩の代わりに昆布の切れ端と魚醤を入れます。昆布と魚醤で、旨味の相乗効果!
なんとな~く感じる昆布の旨味を有効的に使うには、大きなパスタ鍋ではなく小さな鍋を使うといいですよ。

昆布が味噌や醤油などの発酵調味料と相性がいいならば“コラトゥーラ”とだって相性はいいはず、と思いついたのがこのパスタです。“コラトゥーラ”は、南イタリアのチェターラ村でつくる魚醤。チェターラ出身のマンマがつくってくれた“コラトゥーラ”を使ったペペロンチーノの、シンプルなのに奥深い味わいはイタリア時代の忘れられない一皿なんです。これに昆布をちょい足ししてみたら相性抜群。今回は手に入りやすいナンプラーを使い、具にキャベツを足しましたが、具なしでも十分おいしいです。ぜひ南イタリアの魚醤“コラトゥーラ”でもつくってみてください。本場の味になりますよ。

昆布と魚醤のペペロンチーノ

材料 材料 (2人分)

・ スパゲッティ 150g
・ キャベツ(ひと口大に切る) 60g
・ 昆布の切れ端 5cm角
・ ナンプラー 茹で汁用 大さじ1
・ ナンプラー 仕上げ用 大さじ1
・ オリーブオイル 大さじ1 1/2
・ にんにく(粗みじん切り) 1片(小)
・ 唐辛子(乾燥。輪切り) 1本(小)
材料

1 スパゲッティを茹でるときに昆布をイン

鍋に1.5lの水(分量外)、はさみで細かく切った昆布の切れ端とナンプラー大さじ1を入れ、火にかける。沸騰したらスパゲッティを茹でる。もし鍋に入らなければ、半分に折って入れればカンタン。

パスタを茹でるときに昆布をイン
パスタを茹でるときに昆布をイン

2 昆布の入った茹で汁で旨味をプラス

フライパンににんにくと唐辛子、オリーブオイルを入れて弱火にかけ、にんにくが色づいたら、キャベツとスパゲッティの茹で汁大さじ3を入れて炒める。

昆布の入った茹で汁で旨味をプラス

3 仕上げにも昆布の旨味

茹で汁を大さじ1取り出しておく。スパゲッティが茹で上がったら湯を切って、2のフライパンに入れる。ナンプラーと茹で汁を加え、中弱火で鍋を揺すりながら全体をよく和えたらでき上がり。

仕上げにも昆布の旨味

疲れた体をじわりと癒す、昆布力!

アサリと昆布のじんわりリゾット
しみじみとした滋味あふれる余韻がずーっと続く。体に心地よくなじむ塩味は、アサリと昆布の持つ自然のもの。疲れた体を、昆布の力が癒してくれる一皿です。

昆布とアサリの熱いスープで押し麦を煮るだけ。
アサリは身が縮まないよう、細かく刻んで仕上げにオン。
自然の旨味成分である、昆布のグルタミン酸とアサリのコハク酸は、合わさっても体に負担がなく心地いい。
残業して帰宅したときの深夜ごはんや、疲れて食欲がない日のために、ぜひ覚えておいてほしいレシピです。

このレシピは、最初にたっぷりの熱いスープで押し麦を煮るのでカンタン。「リゾットは、少しずつスープを足しながらつくるもの。でも家庭では、ずっと台所にはりついてはいられない。最後に加えるスープはちょっとだから少し冷めても大丈夫よ」。そう教えてくれたのは北イタリア・ヴェローナのマンマ。これに昆布を足したら、出汁がらがそのまま具になって、アサリの味わいがさらにアップします。まずはそのまま自然の味わいを。食べていくうちにじわじわと旨味が広がるはずです。そのうえで足りなければ塩を足してください。

アサリと昆布のじんわりリゾット

材料 材料 (2人分)

・ アサリ 15個
・ 昆布の切れ端 5cm角
・ たまねぎ(みじん切り) 30g
・ 押し麦 大さじ4(40g)
・ オリーブオイル 大さじ1 1/2
・ 粗挽き黒胡椒 適宜
・ 粉チーズ 適宜

下準備

アサリは濃度3%の塩水(分量外)に浸け、蓋をして暗いところで2~3時間砂抜きをする。押し麦は洗わないでOK。代わりに米を使う場合は100gに。

材料

1 アサリと昆布のスープをつくる

鍋に水600mlを入れ、ハサミで細かく切った昆布の切れ端と、アサリを加える。強火にかけ、沸騰してアサリが開いたら火を止めてアクを取り、アサリを取り出しておく。

アサリと昆布のスープをつくる
アサリと昆布のスープをつくる

2 押し麦をスープで煮る

フライパンにオリーブオイルを中火で熱し、たまねぎを炒める。香りがたったら押し麦を入れて炒め合わせる。全体に油が回ったら、1の熱いスープを全体量の3/4ほど加え、中火で15分ほど煮る。

押し麦をスープで煮る

3 アサリはみじん切りにして食べやすく

スープを煮ている間にアサリを殻から外し、粗目に刻む。

アサリはみじん切りにして食べやすく

4 具のアサリは最後に加えて

2のスープが煮詰まってきたら、押し麦を味見して、硬ければ残りのスープを入れてさらに煮込む。火から降ろす直前に、刻んだアサリを戻し入れる。皿に盛り、好みで粉チーズをふり、黒胡椒で仕上げる。好みでオリーブオイルを回しかけても。

具のアサリは最後に加えて

「昆布はどこへ行く。」。これにて最終回となります。全8回。どうもありがとうございました。さまざな料理に昆布を活用してもらえたら嬉しく思います。これからも、どうぞ昆布をよろしくお願いいたします。

教える人

松田 真枝

松田 真枝

北海道生まれ、北海道在住。料理研究家。札幌で北海道の食材を使ったイタリア料理教室「クチナイト」を主宰。つくりやすいレシピが評判で、北海道の食の伝え手として、地元のメディアやイベントで活躍。2016年日本昆布協会昆布大使に任命されたことを機に、えりも町、羅臼町、根室市など北海道中の産地を巡り、さらに富山、大阪、沖縄など、北海道から昆布が運ばれた「昆布ロード」の中継地点を訪ねる。各地の食文化と結びついた昆布食の聞き書きを続けている。2019年1月には、パリで開催された「ジャポニスム2018」で、昆布出汁のプレゼンテーションを行った。

文:神吉佳奈子 写真:長野陽一

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神吉 佳奈子(編集者)

1969年、酒どころ広島で生まれる。出版社を渡り歩き、家庭菜園雑誌や食雑誌、料理本の編集に携わる。2018年5月まで、100人の高校生と名人をつなぐ「聞き書き甲子園」の事務局に所属。食と農の手仕事を伝えるべく、フィールドワークを続けている。