昆布はどこへ行く。
出汁がら昆布のサティスファクション。
出汁がら昆布 出汁がら昆布

出汁がら昆布のサティスファクション。

出汁をとったあとの昆布の使い方、まだまだあります。出汁がら昆布を食べやすくする方法は、梅干や酢を使うほかには、くるくると巻いて極細切りにすること。たったそれだけ!昆布大使の松田真枝さんの極細切り昆布で飲まさる(北海道弁で飲める)レシピ、教わりました。

極細切り昆布でカンタンおつまみ。

出汁がら昆布を巻いて輪ゴムで縛って爪楊枝で留めれば、極細切りがカンタン!
出汁がら昆布を巻いて輪ゴムで縛って爪楊枝で留めれば、極細切りがカンタン!

出汁がら昆布の切り方を変えれば使い方はまだまだあります。サクサク、ポリポリ、シャキシャキ……、極細切りにすると食感がまるで野菜を食べてるみたい!

噛みしめると、そこはかとなく、なんとなく旨い。だからこれ、酒がすすんでしまうのです。おつまみをつくる前に、松田さんに出汁がら昆布を極細切りにするカンタンな方法を習いましょう。

沖縄では、道東の長昆布を細く切ったものが売られています。炊き込みごはんや、、クーブイリチーなどの炒め煮をつくるんです。出汁がら昆布も細切りにすれば同じようにつくれます。でも細切りって、ぬめりがあるので切るのが面倒。ずっとそう思っていたんです。北海道水産物検査協会・昆布検査員の荒井孝幸さんに、ゴムと爪楊枝で固定する方法を教わったら、これがカンタン!切るのが楽しくなってきて(笑)、いろいろつくっているうちにレシピのレパートリーが広がりました。

1.用意するのは、出汁がら昆布、輪ゴム、爪楊枝。
1.用意するのは、出汁がら昆布、輪ゴム、爪楊枝。
2.くるくると 繰り返して巻く。
2.くるくると繰り返して巻く。
3.ゴムで留めてしっかり固定。
3.ゴムで留めてしっかり固定。
5.滑らないで簡単に極細切りができる!
4.さらに爪楊枝を刺す。
5.滑らないでカンタンに極細切りができる!

赤ワインに合うつくりおきおつまみ。

まろやかな甘酸っぱさに胡椒がキリッと効いて、味がなじんだ後がまた旨い!
まろやかな甘酸っぱさに胡椒がキリッと効いて、味がなじんだ後がまた旨い!

極細切りにした出汁がら昆布の中に、黒くひそんでいる正体はきくらげ。シャキシャキした食感が心地いい!
バルサミコ酢のまろやかな甘酸っぱさに、胡椒をキリリと効かせて。
出汁がら昆布なのにどうして、ちょっとリッチなおつまみです。

イタリア料理教室をやっているので、何かとバルサミコ酢を使います。あるとき昆布が酢で柔らかくなるなら、バルサミコ酢でも同じじゃないかと思いついて。やってみたらこれが赤ワインにすごく合うんです。赤ワイン好きの友人も「これ、飲まさるね」って。東洋医学では、冬に黒い食べ物を意識して食べると「腎」を守ることができると言われているので、冬にぴったりのおつまみです。

きくらげと昆布のバルサミコ佃煮

材料

材料材料 (つくりやすい分量)

・ 出汁がら昆布40g(極細切り)
・ きくらげ15g(細切り)
A 砂糖大さじ1
A バルサミコ酢大さじ1
A 醤油大さじ1
・ オリーブオイル大さじ2/3
・ 粗挽き黒胡椒少々

1 鍋で10分コトコトと

鍋に極細切りにした出汁がら昆布、きくらげ、A、水150ml(分量外)を入れて強火にかけ、ひと煮立ちしたら中火にして、水分がなくなるまで10分ほど煮る。

2 隠し味に黒胡椒

火を止め、オリーブオイルを加えてなじませ、粗挽き黒胡椒をふる。冷蔵で3日間保存が可能。

出汁がら昆布でエスニック。

昆布がポリポリとまるで野菜みたいな存在感。ナンプラーと昆布って意外によく合う!
昆布がポリポリとまるで野菜みたいな存在感。ナンプラーと昆布って意外によく合う!

出汁がら昆布を細切りにすれば、料理の幅はグンと広がります。
エスニックの料理にもよくなじむ!
ササっとつくれる軽いおつまみで、ビールがぐびぐび、すすみますよ~。

正方形だと昆布の存在感でどうしても和になってしまうのですが、細切りになるとエスニックだって違和感なしです。輪ゴムで縛って極細に切れるようになったので、春雨と合わせてもいけるんじゃないかって。そのとき思いついたメニューです。コツは、挽き肉に片栗粉と砂糖をほんのひとつまみ加えて混ぜておくこと。ぱさぱさにならずしっとりと食べやすくなります。

昆布でヤムウンセン

昆布でヤムウンセン

材料材料 (2人分)

・ 豚ひき肉50g
・ 片栗粉ひとつまみ
・ 砂糖ひとつまみ
・ 出汁がら昆布20g(極細切り)
・ 春雨20g
・ 赤ピーマン小1/2個
・ 米酢大さじ1/2
・ 米油大さじ1(またはサラダ油)
・ 砂糖小さじ1/3
・ ナンプラー大さじ1
・ パクチー好みの量
・ 一味唐辛子適宜

1 昆布に酢をふりかけて

極細切りにした出汁がら昆布に酢をふりかけて5分ほどおく。春雨は湯で戻し、食べやすく切る。赤ピーマンは横に細切りにする。パクチーは3cmの長さに切る。春雨はパッケージの表記通りに戻し、水けをよく切っておく。

2 挽き肉を炒める

フライパンにひき肉を入れ、片栗粉と砂糖をひとつまみずつ入れて混ぜておく。続いて米油、ピーマンを加えて強火にかけ、ひき肉をほぐすように混ぜる。

3 パクチーをたっぷりのせて

戻した春雨と出汁がら昆布を酢ごと入れる。酢がなじんだら砂糖を入れて混ぜる。ナンプラーを入れて、香りが立つまで加熱し、一味で仕上げる。皿に盛り、パクチーを散らす。

コンビニさきいかと昆布の最強おつまみ。

噛めば噛むほどにしみじみと旨味が広がる。これ食べたいから昆布で出汁をとるって人、いてもおかしくなーい!
噛めば噛むほどにしみじみと旨味が広がる。これ食べたいから昆布で出汁をとるって人、いてもおかしくなーい!

出汁がら昆布を極細切りにすれば、さきいかと昆布を調味液に漬けるだけ。
酢で昆布がしっとり柔らかく、日本酒にも焼酎にもよく合います。
常備しておけば晩酌のアテに!

松前漬けは、松前藩のあった道南がルーツの郷土食です。かつてニシン漁が盛んだった時代、ニシンの卵の数の子とスルメ、昆布を漬けこんでいたと聞いています。数の子が高価になり、スルメと昆布を調味料に1週間ほど漬けるレシピが定番に。これをもっと今どきに、カンタンにつくろうと考えたのがクイック松前漬け。コンビニやスーパーで売っている味付けのさきいかと出汁がら昆布を使えば、1日ででき上がりますよ。

クイック松前漬け

クイック松前漬け

材料材料 (つくりやすい分量)

・ さきいか15g
・ 出汁がら昆布20g(極細切り)
・ 米酢大さじ1/2
・ 醤油大さじ1
・ 味醂大さじ1

1 材料を漬けるだけ!

密閉容器にすべての材料を入れ混ぜ、なじませたら冷蔵庫で1日置く。冷蔵庫で5日ほど保存可能。

――つづく。

教える人

松田真枝

松田 真枝

北海道生まれ、北海道在住。料理研究家。札幌で北海道の食材を使ったイタリア料理教室「クチナイト」を主宰。つくりやすいレシピが評判で、北海道の食の伝え手として、地元のメディアやイベントで活躍。2016年日本昆布協会昆布大使に任命されたことを機に、えりも町、羅臼町、根室市など北海道中の産地を巡り、さらに富山、大阪、沖縄など、北海道から昆布が運ばれた「昆布ロード」の中継地点を訪ねる。各地の食文化と結びついた昆布食の聞き書きを続けている。1月にはパリで開催中の「ジャポニスム2018」で、昆布出汁のプレゼンテーションを行う予定。

文:神吉佳奈子 写真:長野陽一

神吉 佳奈子

神吉 佳奈子 (編集者)

1969年、酒どころ広島で生まれる。出版社を渡り歩き、家庭菜園雑誌や食雑誌、料理本の編集に携わる。2018年5月まで、100人の高校生と名人をつなぐ「聞き書き甲子園」の事務局に所属。食と農の手仕事を伝えるべく、フィールドワークを続けている。