ぷっくり丸い形が印象的な「リリエンベルグ」のマドレーヌ。「子豚の手みたいで可愛い」というスタッフの一言がキッカケで、“こぶたのマドレーヌ”と名付けたそうです。しっとり&ふっくらした生地に仕上がるレシピを横溝春雄シェフが披露します。
うちのマドレーヌの形、かわいいでしょう。ウィーンの蚤の市で見つけたアンティークの型を使っているんです。修行時代の想い出の品でね。この型だとオーブンの中で生地が乾燥しにくいから、しっとりとした厚みのあるマドレーヌに仕上がるんです。
ふかふかに焼きあがる生地には、季節に合った食材が練りこまれます。春には“桜の葉”、夏は“レモン”、秋は“和栗”、正月は“黒豆”。1年を通じて様々な味わいを見せるマドレーヌは開店当初から、多くの人に愛されています。
横溝春雄シェフがレシピを考えたときに注目したのが、食感。口当たりを軽くするための工夫が材料の配合にあるそうです。
生地に使う油分はバターのみでつくるレシピが多いんだけど、うちは20%が紅花油。そうすると、生地に保湿力が生まれて、ふわっとした軽い食感になるんです。プレーンの生地に使うバターは2種類。発酵バターだけだと風味が強いから、無塩バターを加えて淡くてまろやかな味わいにしています。
型は違っても、しっとりとした優しい口当たりの生地に仕上がるレシピです。「リリエンベルグ」のマドレーヌをぜひお試しください。
赤玉卵 | 4個(L) |
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塩 | 1.5g |
無塩バター | 100g |
発酵バター | 100g |
グラニュー糖 | 250g |
ベーキングパウダー | 4g |
バニラオイル | 少々 |
薄力粉 | 250g |
紅花油 | 50g(サラダ油) |
卵とバターは室温に戻しておく。マドレーヌ型にバター(分量外)を塗り、強力粉(分量外)を濾し器でふりかける。型を裏返して、余分な粉を落とす。グラニュー糖、ベーキングパウダー、薄力粉はふるいにかけておく。
型にバターを塗ることで、焼きあがった生地が香り高くなります。
ボウルに割った卵に塩を加え、ホイッパーで卵のコシがなくなるまで溶きほぐす。
卵白は水分量が多いから、よく撹拌して乳化力がある卵黄と繋げることが大切。
無塩バターと発酵バターにグラニュー糖、ベーキングパウダーを合わせ、ホイッパーですり混ぜる。バターがクリーム状になったらバニラオイルを加えて、白くふんわりするまで混ぜる。
バターがなめらかになったら、今度は空気を含ませるように混ぜます。
4~5回に分けて卵液を加えて、その都度クリーム状になるまで混ぜ合わせる。
卵液の温度が低かったり、一度に加える量が多いと分離してしまいます。注意しましょう。
生地に薄力粉を加えて、外から中に巻き込むように粉気がなくなるまで混ぜる。紅花油を加えて、生地にツヤが出るまで同様に混ぜる。
ゆっくり混ぜてると、粉玉ができてしまいます。ここは手早く手早く。
口金をはめた絞り袋に移す。型に対して7割くらいの量を絞っていく。袋が常に張っている状態にするのがうまく絞るポイント。
深く息を吸ったら、一息で絞る。そうすると均一な量で、素早く絞れますよ。
生地に霧吹きをして、160度に予熱したオーブンで15分間焼く。オーブンから取り出したら、生地の膨張を抑えるために高さ15cmほどのところから型ごと落とし、衝撃を与える。温かいうちに型から外して、でき上がり。
オーブンによっては、温度のムラがあります。160度で焼いて色がつかなかったら、次は170度で試してみましょう。うまくいかなかったことは、次回の課題に。
ウィーン菓子屋のシンボルでもある「デメル」で、日本人としてはじめて働いた経歴を持つ。帰国後は「中村屋 グロリエッテ」でシェフとして研鑽を積み、1988年に独立。蕎麦好きのあまり、蕎麦打ち教室に通っていたことも。
文:河野大治朗 写真:吉澤健太