「リリエンベルグの焼き菓子」シリーズ番外編。1996年dancyu3月号「スイートポテトの玉の輿」で「リリエンベルグ」の横溝春雄シェフが披露したスイートポテトのレシピを紹介します。
スイートポテトは、甘く香ばしい焼きいもの魅力をそのままに、上品で優雅な味わいに仕上げる日本生まれの洋菓子です。
「リリエンベルグ」の横溝春雄シェフがつくるスイートポテトは、舌先で心地よくとろけ、口いっぱいにさつまいもの滋味が広がり、まさに“衝撃”だと誌面には綴られています。
スイートポテトに欠かせないさつまいも。横溝シェフは、石川県産の“五郎島金時”を使います。
焼きいもにした状態でふっくら、ほっこりしておいしい。時季を通して品質が安定しているのも菓子づくりには魅力です。
さつまいもの風味を引き立てるために、いも自身の持ち味と決して喧嘩しないよう最小限の材料だけしか加えません。香りを大切にしたいので、うちではリキュールもバニラも入れないんです。
素材の香りや季節感を大切にした菓子づくりを心がけている「リリエンベルグ」では、スイートポテトの販売期間は9月~11月。いますぐに味わいたいならば、自分でつくるしかありません。特別な材料や器具、難しい技術は必要としないので、ぜひお試しください。
・ さつまいも | 3本 |
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・ 無塩バター | 50g |
・ グラニュー糖 | 100g |
・ 生クリーム | 50ml |
・ シナモン | 1g |
・ 卵黄 | 2個 |
・ 牛乳 | 適宜 |
・ ハチミツ | 適宜 |
無塩バターは、室温に戻しておく。
さつまいもを洗い、水分を拭かずにアルミホイルを敷いた天板に並べ、霧吹きをする。アルミホイルの四辺を折って、さつまいもを包む。190度に予熱したオーブンに入れ、1時間じっくりと焼く。
さつまいもに串を刺して、中心まで柔らかくなっていれば、オーブンから取り出して、縦半分に切る。中身をスプーンでくりぬく。皮は後ほど使うので、破らないように注意する。
目の細かい濾し器で2を裏漉しする。冷めてしまうと固くなって裏漉ししにくくなるのので、熱いうちにできるだけ手早く。
裏漉ししたさつまいもに予熱が残っているうちに、ボウルの中で無塩バターとグラニュー糖と混ぜる。なめらかなペースト状になったら卵黄1.5個分、生クリーム、シナモンを入れ、混ぜ合わせる。牛乳を少しずつ足して、絞り袋で絞りやすい硬さに調節する。
10mm径の菊形口金をはめた絞り袋に4を入れ、くりぬいた皮の中へ生地を絞り出す。縁までたっぷり絞り込んだら、パレットナイフで平らにならす。さらに、上から下へ螺旋状に飾り付けの生地を絞り出す。生地が固まるまで、冷蔵庫で冷やす。
アルミホイルを2枚重ねた上に5を置いて、霧吹きをする。船形にアルミホイルを折り曲げて、皮の部分を覆う。表面に焼き色をつけるため、残りの卵黄に小さじ1/2の水(分量外)を加えてゆるめ、刷毛で塗る。
180度に予熱したオーブンで、綺麗な焼き色がつくまで20分~25分焼く。艶出しのためにハチミツを塗ったらでき上がり。
菓子づくりの魅力のひとつは、つくりたてにしかない香りと食感を愉しめることです。難しいことは何もありません。大らかにつくってみましょう。
ウィーン菓子屋のシンボルでもある「デメル」で、日本人としてはじめて働いた経歴を持つ。帰国後は「中村屋 グロリエッテ」でシェフとして研鑽を積み、1988年に独立。蕎麦好きのあまり、蕎麦打ち教室に通っていたことも。
「リリエンベルグの焼き菓子」は、今回で最終回。
シュトーレン、マドレーヌ、ポルボローネ、フィナンシェ、フロランタン、そしてスイートポテトと、6品すべてが時間をかけてもつくってみる価値のある焼き菓子です。ぜひ、手づくり、つくりたてを味わってみてください。
写真:石井雄司