「リリエンベルグの焼き菓子」シリーズ、横溝春雄シェフに教わる最後のレシピは“フロランタン”。香ばしく焼かれたアーモンドキャラメルと、さっくりとした食感のバタークッキーを合わせたフランスの郷土菓子です。保存が効くので、プレゼントにもおすすめですよ。
フロランタンは、フランス語で“フィレンツェの人”を意味します。だからといって、イタリアから伝わったお菓子というわけではなく、パリでパティシエをしていたフロランという人が考案したことから名付けられたという説が有力と言われています。
ベースに使うのは、パートサブレというオーソドックスなクッキー生地。レシピはシンプルで、バターと卵と薄力粉でつくります。バターの香りが豊かな生地に仕上がるので、タルトにも使えるし、そのまま食べてもとてもおいしいですよ。
サブレに乗せるアーモンドキャラメルには、たっぷりのハチミツを使います。どんなハチミツを選ぶかによって、風味は大きく変わります。
リリエンベルグで使っているのは、愛媛県産の蜜柑のハチミツ。口に含んだときに広がる華やかな香りと、優しい柑橘の甘さがお菓子の仕上がりを良くしてくれます。
アーモンドキャラメルとパートサブレは、それぞれ別の菓子づくりにも活用できます。とくにパートサブレは、ジャムやチョコレートと組み合わせるとレパートリーがグッと広がりますよ。つくり慣れておくと重宝するレシピです!
・ 全卵 | 80g |
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・ 塩 | 3g |
・ 無塩バター | 510g |
・ ショートニング | 90g |
・ 薄力粉 | 900g |
・ グラニュー糖 | 300g |
・ ベーキングパウダー | 9g |
・ 生クリーム | 180g(45%) |
・ ハチミツ | 180g(蜜柑) |
・ 無塩バター | 180g |
・ グラニュー糖 | 180g |
・ アマンドスライス | 360g |
・ バニラオイル | 少々 |
・ 打ち粉 | 分量外 |
卵とバターは室温に戻しておく。薄力粉、グラニュー糖、ベーキングパウダーはふるいにかけておく。
卵をボウルに割って塩を加え、ホイッパーでコシがなくなるまで溶きほぐす。
しっかり塩を溶かすことで、卵が全体に馴染んでくれるんです。
別のボウルに無塩バター、ショートニング、グラニュー糖、ベーキングパウダーを合わせ、ホイッパーですり混ぜる。バターが白くふんわりとしてきたら、卵液を少しずつ加えて、クリーム状になるまで混ぜ合わせる。最後にバニラオイルも加える。
2に薄力粉、グラニュー糖、ベーキングパウダーを加え、カードを使って外側から内側に巻き込むようにさっくりと混ぜる。粉気がなくなったら、ボウルの内側を覆うように薄く伸ばして、乾燥しないようにフィルムをかけ、冷蔵庫で1時間休ませる。
生地をボウルの内側に張り付くように薄く伸ばすと、短い時間で冷やすことができます。
打ち粉をしたまな板の上に3を広げ、めん棒で厚さ3mmに伸ばす。ルーラーという添え棒を使うと均等に伸ばしやすい。
凸凹のある生地だと焼き上がりの食感に、ムラが出るので注意が必要です。
伸ばした生地をめん棒に巻きつけ、もたつきがないように天板の上に広げる。天板からはみ出た余分な生地はそぎ落とす。
ピケローラーで生地全体に穴を開ける。170度に予熱したオーブンで15分焼く。
生地を焼いたときにポコポコと膨らまないように細かく穴を開けるんです。ピケローラーがなければ、フォークでも大丈夫です。
鍋に無塩バター、生クリーム、蜂蜜、グラニュー糖、バニラオイルを入れ、強火にかける。芯温計で温度を確認しつつ、焦げつかないようにゴムベラで混ぜる。117度に達したら、火を止めてアーモンドを加えて混ぜ合わせる。
温度管理をしっかりすることが、カリッとした食感のキャラメルをつくるコツです。
アーモンドキャラメルを6の上に広げる。パレットでサブレの表面が見えなくなるように、隅まで薄く伸ばす。180度に予熱したオーブンで10分焼く。
パレットでアーモンドを押し付けると割れてしまうので、キャラメルを横にずらすような感覚で伸ばしましょう。
オーブンから出した天板にまな板をかぶせ、上下逆さにひっくり返す。サブレ側から食べやすい大きさに切り分けて、でき上がりです。
オーブンから出したばかりのキャラメルは柔らかいので、3分ほど冷ますと、切りやすくなりますよ。
ウィーン菓子屋のシンボルでもある「デメル」で、日本人としてはじめて働いた経歴を持つ。帰国後は「中村屋 グロリエッテ」でシェフとして研鑽を積み、1988年に独立。蕎麦好きのあまり、蕎麦打ち教室に通っていたことも。
文:河野大治朗 写真:吉澤健太