黄金比は「醤油7、柑橘果汁5、味醂(みりん)3」。搾って、混ぜて、濾して1日ねかせるだけで簡単にできる、新鮮で香り高い手づくりぽん酢をじっくりお楽しみください。さらに、3ヶ月ほどねかせた「100日ぽん酢」の味わいとは?
冬の食卓に登場する代表的な食べ物といえば「鍋」。“おいしい鍋を食べたい!”と思ってもレシピの選択肢は膨大で、さんざん迷った末に、水炊きを市販のぽん酢で……。なんていうがっかりな経験は誰にでもあるはず。ここはひとつ逆転の発想で、新鮮な手づくりぽん酢で自宅の鍋をグレードアップしてみよう。ぽん酢を工夫するだけで、手軽においしい鍋のバリエーションが楽しめるのだ。
ぽん酢は、スーパーで買える一般的な調味料。それをなぜ、わざわざ手づくりするのか?来客の際には前日から仕込んで振る舞うほどのぽん酢愛にあふれる山田英季さんは、その疑問に「味の違いが歴然だからです」と答えた。
そもそもぽん酢とは、柑橘を使ったオランダのカクテル「pons」が転訛したもの。それがゆずや橙(だいだい)をはじめとする柑橘系果実の搾り汁を指すようになった、というのがその起源で、現在ではぽん酢醤油もその語彙に含まれる。「市販品のぽん酢は、保存性を高めるために醸造酢が添加されているんですね。100%の天然果汁を使うことで、香り高くキレのある味に仕上げることができるんです。というか、ぽん酢本来の味ってことなんですけどね(笑)」。
山田さんが考えるぽん酢の黄金比は「醤油7、柑橘果汁5、味醂3」。100%の柑橘果汁に、少し多めの味醂でコクとまろやかさをプラスする。仕込んで、ひと晩ねかせたその味はというと、フレッシュな柑橘と鰹節が香り立つ、これまで口にしたことのあるぽん酢とは比べ物にならないほどクリアな味わい。果実本来のほろ苦さと、昆布の旨味、味醂のやさしい甘さが鍋の素材を包み込んで、鍋をつつく手が止まらなくなる。
好みや季節に合わせて柑橘を選べることも手づくりぽん酢の楽しさだ。今回は4種類の柑橘を使ったぽん酢と、それぞれに合う鍋を教わったので、レシピを順次公開。今回はゆずぽん酢と、豚肉と高菜漬けの鍋を。次回はレモンぽん酢と、鶏肉と蟹の大根鍋をご紹介します!
醤油 | 210ml |
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ゆず果汁 | 150ml |
煮切り味醂 | 90ml(※) |
鰹節 | 10g |
昆布 | 1枚(10cm四方) |
豚肉 | 300g(薄切り、しゃぶしゃぶ用) |
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白菜 | 1/8個(250g) |
もめん豆腐 | 1丁 |
高菜漬け | 150g |
白ごま | 大さじ1 |
昆布 | 1枚(10cm四方) |
ごま油 | 大さじ2 |
水 | 4カップ |
鍋に水と昆布を入れ、30分間以上浸す。弱火にかけ、沸騰直前に昆布を取り出す。出来上がった昆布だしは別の容器にとっておく。
白菜を4等分の長さに切った後、繊維にそって1cmの細切りにする。豆腐は8等分の角切りにする。高菜漬けは水気を切って、粗く刻む。
鍋にごま油を中火で熱し、刻んで水けを切った高菜漬けを炒める。
昆布だしを昆布ごと鍋に注ぎ、白菜、豆腐を加える。煮立ったら昆布を取り出す。
豚肉を広げて3にくぐらせる。火が通ったら白ごまをふる。
つくりたてのぽん酢を味わうのが一番幸せな時間だが、ねかせてみると次第に柑橘の酸味の角が取れて、熟成してまた違った味わいになると、山田さんは教えてくれました。そこで、今回ぽん酢を仕込んだ10月22日からちょうど100日後の2019年1月30日に、山田さんをお招きして「『100日ゆずぽん酢』を味わう会」を開催する予定です。お楽しみに。
1982年、兵庫県生まれ。フレンチ、イタリアン、和食などのシェフを歴任後、現在は雑誌、書籍、テレビなどへレシピ提供を行う。2015年より、and recipeを設立。「旅と人と食」をテーマにしたサイトの運営と、「食」を中心としたリアルな場所でのコミュニケーションを通じて、世界に活躍の場を広げている。著書に「にんじん、たまねぎ、じゃがいもレシピ」(光文社)、「かけ焼きおかず」(グラフィック社)などがある。
文:星野一樹、写真:衛藤キヨコ