東京町焼肉最前線!
【池尻大橋】予約困難時代の救世主! 電話一本で滑り込むべきカウンター焼肉「焼肉家てっちゃん」

【池尻大橋】予約困難時代の救世主! 電話一本で滑り込むべきカウンター焼肉「焼肉家てっちゃん」

進化を続ける東京の町焼肉。今回ご紹介するのは、池尻大橋駅近くに店を構える「焼肉家てっちゃん」だ。予約困難な人気店が増えるなか、「今日は焼肉!」という気分に応えてくれる貴重な一軒として注目を集めている。コの字カウンターの気軽な空間で味わえるのは、目の前で塊肉から切り出される肉と遊び心あふれるメニューの数々。90分1本勝負の1日3回転以上だから、滑り込めるチャンスあり! というカウンター焼肉店の魅力に迫る。

「今日は焼肉!」の気分に応えてくれる

鮨、蕎麦、焼鳥……。こうしたジャンルの食は、その日の気分でのれんをくぐりたい。夕方に小腹が空いてふらりと訪れたり、当日電話をかけて空席を確認したり。もちろん焼肉だってそうだ。

でも最近は、何週間も前から予約を入れるのが当たり前。いい店ともなれば仕方がない……が、それでも「今日は焼肉!」という気分に応えてくれる店はいつだって求めている。

少し前、池尻大橋にコの字カウンターの焼肉店ができた。いつ通りがかっても満席のように見えるが、実は予約の隙間時間に数席、案内が可能な時間があることも。

実際、店の前まで来てみると黒板に「本日まだ空席あります」「17時台4席空いてます!!」「19時台2席空いてます!!」「21時台4席空いてます!!」と活気満点の空席情報が記されている。これはうれしい!

黒板

「予約のお客様がサクッと帰られることもあるので、まずはお電話いただけるとありがたいです。タイミングで空いてることもあります」とは心強い。飛び込み対応への機動力は、渋谷の鮨店「すし光琳」にもどこか似ている。

さてこの「焼肉家てっちゃん」は池尻大橋駅のほど近くにある。店内は古き佳きカウンター焼肉店が薫るが、メニューは令和チューニングが施された品がずらり。新しくも懐かしい大衆焼肉店といった趣で、一人でも構えることなくのれんをくぐることができる佇まいだ。

例えば、水を使わず肉の旨味だけで煮込んだタンを生のピーマンに乗せて食べる前菜「パリピ」(980円)。最近の焼肉店では、ピーマンに焼いた肉を乗せた品も増えてきたが、こちらの具材はタンの煮込み。最初のドリンクと一緒に注文したところ、即提供してくれた。酒飲みとしては好感度が爆上がりする。

前菜

手始めに頼んでおいた厚切りタン、略して「アツタン」(1,700円)を焼きながら、パリピ片手に手作りレモンサワーのグラスを傾け、続く本日の注文を考える。

肉

アツタン1人前が100g弱だから、3皿で合計300g弱――ひとり焼肉にはちょうどいい量だ。となると追加は正肉と内臓を1皿ずつか。いま片面に焼き目をつけて返しているアツタンは塩味。鹿の子に細かい包丁目が入っているが、厚切りだから食感は強いはず。

ならば、タレでとろける赤身肉、味噌で食感と味わいの多様なホルモンと展開しよう。赤身肉は上ハラミも推しだというが、今日のところは、ザクッとした食感はタンで充足されるはず。今日の気分は黒毛和牛の上ロース(1,700円)と3種のホルモンミックス(1,300円)だ。

そんな感じでメニューを組み立てているうちに、休ませながら焼いていたアツタンにぐぐっと跳ね返すような弾力が生まれてきた。トングを箸に持ち替えて、焼き上げたタンの中央に歯を立てる。一瞬、「グッ」という弾力を感じた直後に、ザクンッ! と肉の繊維が弾けた。口の中でザクザクという音が鳴り、心地いい弾力が縦横無尽に展開される。これぞタンの醍醐味だ。

肉

次に提供された上ロースに添えられるのは「未完成のタレ」と味変用の「魔法の赤い粉」。さっと焼いた1枚を口に運ぶ。にんにくが添えられた甘辛いタレにロースの肉汁が落ちる。とろけるような肉の舌触りに、コク深く濃厚な味わい……。ダメだ。これは。

肉
肉
肉

「小ライスを下さい!」。ああ、言ってしまった。この後、夜にもう一軒会食が入っていたのでセーブするつもりだったが、この味つけはどう考えても白飯だ。「魔法の赤い粉」を足そうものなら、ますます白飯が進んでしまう。

しかもこの白飯、もっちり系の品種の持ち味が生きるよう、関東スタンダードよりも気持ちやわらかめに炊いてある。この炊き加減がロースに抜群に合う。

肉

そして上ロースがなくなりかけた頃に提供された本日のホルモンミックスはアカセンに加えて、タン下とココロ(ハツ)というこれまた好みのド真ん中。プリッと焼き上げたアカセン、ロースターの上で味噌ダレとともに弾むタン下、レアとよく焼きで味わいが変わるココロ……。味噌ダレの1皿に盛られた内臓が、さまざまな表情で僕の五臓六腑を鷲掴みにしてくれる。

肉

前菜に焼肉3皿(しかもホルモンミックスは量が多い)、それにライス。小腹は満たされた。今日は次もある。「お勘定を……」と言いかけたところで、「カレーにガリバタって裏技がおいしいんだよねえ」という声が聞こえてきた。

ぬん……? 確認すると「うちのガリバタは、薄切りタンをガーリックバターにつけながら焼くメニューなんですが、余ったガーリックバターをカレーにかけるのがおいしいんですよ」と耳打ちされてしまった。

肉
肉
肉

この後に入っていた会食は、コース20品で知られる「大人の町中華 灯」だったが、「うちの〆は軽いですよ。カレーのご飯は50gですし」という悪魔の囁きに耳を貸してしまった。カレーソースたっぷりの「さらっと牛タンカレー」(780円)を半分食べたところに、タンの肉汁で芳醇さを増したガーリックバターを追う。

牛タンカレー
牛タンカレー

うわあ。これは悪い味だ。でも軽い。軽いのに悪くて、悪いのに軽い。うっかりがっつり食べてしまった。

「焼肉は切り立てが断然うまい」を標榜するこの店は、90分1本勝負が基本。後客がいなければ延長もできるが、1人前の切り立て肉を頬張るには十分な時間だ。

90分の至福を味わいたくなったら、空席があることを祈りながらまた電話してみよう。

壁の落書き

店舗情報店舗情報

焼肉家てっちゃん
  • 【住所】東京都目黒区東山3‐4‐10
  • 【電話番号】080‐7374‐6851
  • 【営業時間】月曜〜金曜17:00〜22:00(L.O.)、土日祝16:00〜22:00(L.O.)
  • 【定休日】不定休
  • 【アクセス】東急田園都市線「池尻大橋駅」から3分

文・写真:松浦達也

松浦 達也

松浦 達也 (ライター/編集者)

東京都武蔵野市生まれ。家庭の食卓から外食の厨房、生産の現場まで「食」のまわりのあらゆる場所を徘徊する。食べる、つくるに加えて徹底的に調べるのが得意技。著書に『教養としての「焼肉」大全』(扶桑社)、『大人の肉ドリル』『新しい卵ドリル』(共にマガジンハウス)ほか、共著に『東京最高のレストラン』(ぴあ)なども。主な興味、関心の先は「大衆食文化」「調理の仕組みと科学」など。そのほか、最近では「生産者と消費者の分断」「高齢者の食事情」などにも関心を向ける。日本BBQ協会公認BBQ上級インストラクター。