
「普通で最高においしい焼きそばをつくろう!」と始まった「dancyu食堂」焼きそばプロジェクト。オリジナル麺の開発とソースや具材の選定が進み、いよいよ完成間近になりました。最終チェックをするのは食いしん坊倶楽部から選ばれた焼きそば好きの4人。後編では白熱する試食会の模様とともに誕生した焼きそばの全貌を紹介します!
2026年の年明けから1ヶ月が経とうというある日、東京駅構内の「dancyu食堂」は朝から熱気を帯びていた。緊張した表情で準備を進めるのは料理長の佐藤正光さん。自らがリーダーとなり、半年かけて進めてきた焼きそばプロジェクトの最終試食会の日がやってきたのだ。

オリジナル焼きそばを開発した経緯は前編で紹介した通り。王道のソース味で至高の旨さを生み出すべく、麺、ソース、具材、焼き方と試行錯誤を続けてきた。
ポイントはまず栃木県の「中沢製麺」と連携して開発した独自の中太角麺。国産小麦をベースに、コシの出るオーストラリア産をブレンドし、小麦の風味を立たせるために全粒粉も少し加えている。
「関東では蒸し麺が一般的ですが、小麦の香りが残りやすい茹で麺にしました。これをしっかり焼き付けて、周りはカリッと香ばしく中はもちもちの“逆アルデンテ”にしています」と佐藤さん。
味つけのソースはベーシックな東京のウスターソースに、フルーティーなウスターソースをブレンド。焼いた麺には鰯節と鯖節から引いた和だしを吸わせてあり、その旨味がソースの味を下支えしている。一方、具材は豚バラ肉でつくった煮豚と揚げ玉、仕上げにトッピングする乾燥ケールのみ。そのシンプルさで麺の旨さが一層、際立ち、堂々主役になるというわけだ。
この日、試食に臨むのは食いしん坊倶楽部から選ばれた焼きそばラバー4人だ。好みはそれぞれ異なり、太麺派は仮屋薗秀一さんと高田歩さんの2人。対して、細麺派を代表して岡部伸也さんと小古井絵美さんが参加した。みなさん、焼きそばにお酒を合わせることも多いそうで、ビール、レモンサワー、ジンソーダなどこちらもいろいろ。シュワッと爽快な一杯との相性も評価のポイントになりそうだ。
「どんな味になったのか、楽しみですね」
と顔を綻ばせる4人の前に、芳ばしいソースの香りを振り撒きながら焼きそばがやってきた。鉄板の皿に盛り込まれた出立ちはすでに貫禄十分。味噌汁とデザートのついた定食スタイルなのは、dancyu食堂でのメニュー化を想定しているためだ。
「焼きそばの味はもちろん、組み合わせもチェックしてみてください」
という佐藤さんの言葉に頷きながら、いざ実食開始!

「麺がいいですね。やや太めで食べ応えがあるし、焼き目も香ばしくて旨い」と第一声を挙げたのは太麺派の仮屋薗さんだ。同じく太麺派の高田さんも「表面がカリッとしてもちもち感もある。バランスが抜群です」と賛同。一方、細麺派の岡部さんや小古井さんも「麺の太さがちょうどよくて食べやすいです」と満足したようだ。

その様子を受けて、佐藤さんは太さや小麦粉の配合について解説。「10回以上試作しました」との言葉に、「手が込んでますね~」と感心することしきりだった。
2種類のソースをブレンドした味つけも評判はよく、「甘めで濃厚な味だから、ビール、レモンサワー、あとすっきりしたジンソーダも合いそう」との声が聞こえてきた。酒を呼ぶ焼きそばは狙い通りといえるだろう。




具材については、キャベツなど生野菜の入らないチャレンジングな構成に、一瞬どよめきが起きたものの、「麺がおいしいからこれはありです」と意見が一致。なかでも、他にはないおいしさと称賛を集めたのが煮豚だ。「麺の中にゴロッと豚肉が入っていてインパクトがある」「脂の甘味がソースに合う」「ほろっと柔らかく、これだけでお酒のつまみにしたいくらい」との感想に佐藤さんも嬉しそう。
仕上げにのせる乾燥ケールもこの焼きそばの隠し玉だが、「野菜を摂れるからギルティ感が薄らぎます」と言うのは小古井さんだ。青のりの代わりでもあると聞き、「確かにケールの風味が焼きそばのアクセントにぴったり。青のりと違って歯につかないのも嬉しいです」とにっこり。
一方で、脇役陣も抜かりなしだ。その一つが生姜の甘酢漬け。「爽やかな風味が口直しに絶好」「麺と生姜を一緒に食べると爽やかさが加わっておいしい」との声が相次いだ。
もう一つは味変要員のミックススパイス。クミンやコリアンダー、シナモンなどがブレンドされ、ひと振りすると清涼感のある甘い香りが頬張る度にふわりと浮かぶ。「途中でかけると食欲が盛り返します」と華麗(カレー)なる味変にグッドジョブサインが送られた。



デザートまできれいに食べ終えたところで気になるジャッジをしてもらうと、全員が「おいしかったです!」と高評価。ホッと胸を撫で下ろした佐藤さんだが、改善点もいくつか見つかったという。
「麺は製麺会社に茹でてもらっていますが、ちょっとパサつく感じが気になって。もう少し長めに茹でてもらおうと思っています。あと、前々から検討はしていたのですが、卵のトッピングが欲しいという声がやはりあったので、目玉焼きや半熟のゆで卵などを試してみます。味つけでは和だしだけでなく魚粉も入れて、魚系の旨味を強めてもいいのかも」
微調整した最終形は今年の夏前には、dancyu食堂のメニューに上がる予定だが、それまで待てないという焼きそば愛好家に朗報だ。本格デビューに先立ち、4月11日と12日に開催されるdancyu祭でオリジナル焼きそばがお披露目されることに!当日はカジュアルな祭仕様での提供になるので、ビールやレモンサワーなどを気楽にグビッと飲みながら、 “普通で最高においしい焼きそば”をご堪能あれ。
文:上島寿子 写真:海老原俊之