
日本の淡水魚としては最大、大きいものは2mを超える。アイヌの伝説ではヒグマを食べたと伝えられるほどだ。青森県鯵ヶ沢町が30年以上の年月を費やしイトウ養殖に成功。魚偏に鬼と書く巨大魚は、鱒と岩魚を足して割ったような美味。そんな幻の美味を自宅でも食べられる!
本州では既に絶滅したイトウは、非常に神経質で環境の変化に弱い。そのため、養殖技術の確立には、長い年月と数えきれない試行錯誤があった。
青森県鯵ヶ沢町がイトウ養殖に着手したのは1985年。水質問題で稚魚が全滅するなどの危機を乗り越え、現在の養殖施設でイトウを安定的に養殖することに成功した。
白神山地に源流をもつ赤石川支流から取水する水が、イトウの生育に適していたことも幸いした。
生物分類上、イトウの仲間はイトウしかいない。つまり、イトウはイトウの味がする。
活け締めが届くので、先ずは刺身で楽しみたい。氷温で熟成すると、うまみが増すので、届いた時と、3~4日間の氷温貯蔵後では味わいが違う。
漬けにしてもうまいし、塩焼きでもフライでも鍋でもうまい。濃厚に脂がのっている身質ではないので、どちらかと言えば淡白な印象かもしれない。越冬する前、秋から冬にかけて最も脂がのるので、その頃が旬と言えるだろう。
文:(株)食文化 萩原章史 写真:八木澤芳彦