東京町焼肉最前線!
【田町駅徒歩4分。1人焼肉にもお薦め!】行列のできるランチ焼肉の正しいお作法とは?

【田町駅徒歩4分。1人焼肉にもお薦め!】行列のできるランチ焼肉の正しいお作法とは?

この数年、東京の町焼肉が劇的に進化している。今回ご紹介するのは、前回に引き続き、ランチ焼肉。三田駅徒歩2分の人気店「ホルモンまさる」です。

コスパ最強!焼肉定食は税込1,000円。

先週、大塚でランチ焼肉をキメてしまったところ、今週も昼から口が焼肉を求めて落ち着かない。となれば、もう三田だ。いざ『ホルモンまさる』へ。

平日の開店から90分限定のランチタイム。13時30分という少し中途半端な開店時間にもかかわらず、引き戸が開く前から店の脇には行列が伸びる。もちろん営業開始時には全卓が埋まる。

僕の定番の注文は「タレ、ライス中で」。ランチのみの注文となる定食は、塩とタレの2種類がある。その正体は夜メニューの「和牛カルビ」(910円)だ。そこに麦飯ライスと小鉢のキムチがついて1,000円(税込)、北里柴三郎先生1枚でありつける。

メニュー
お冷や

酷暑のなか、ジョッキで提供してくれるお冷やのうれしいこと。チンチンに熾こった炭の詰まった七輪を前に気持ちもばっちりスタンバイ!というところでタレ味の肉が運ばれてきた。

和牛カルビ

夜には「和牛カルビ」として提供される肉が、昼には焼肉定食として提供される。その正体は肩バラ肉。赤身と脂身とスジのバランスがよく、口に入れた瞬間ジュワッと肉汁が吹き出し、噛めば赤身の奥深い味がグワッと膨らんでくる。

早速、担当編集スズキ氏がおもむろに1枚を網の上へ。

和牛カルビ

網の上に一文字に肉を敷く。町焼肉ではあまりお目にかかれない几帳面さだ。が、これだと少々全面に火が入りすぎる。町焼肉の命は焼き目と焼きムラだ。ガンガン食べるなら大阪の下町風にまとめてごちゃ焼きをしてもいいくらいだが、こちらももう学生ではない。少し丁寧に焼こう。こんな感じ。

網の上の肉
網の上の肉
網の上の肉

少し厚みを持たせてクシャッと置く。表面に焼き目と焼きムラをつけつつ、ミディアム・レアの部分も残しておこうという狙いだ。時折、脂身から牛脂が落ちて燃え上がるが、1枚ずつ焼けばさしたる炎も上がらない。

そして1枚の肉に強い焼き目と赤身が入り交じるとき、いよいよゴールが近づいてくる。そしてランチのタレには欠かせないアイテムがこちら。最初の注文時にこれを別注するのを忘れてはならない。こちらもランチのサイドメニュー「生玉子」(100円)だ。

生玉子
肉
肉
肉

まずはあわてずに卵を溶く。そして香ばしく焼き上げたタレ味のカルビを溶き卵にくぐらせる。左手で麦飯を持って溶き卵のほうへと肉をお迎えに。肉汁とタレと溶き卵が渾然一体となって、麦飯の上に滴る。このタレの染みもいい。

牛肉、とりわけ黒毛和牛と麦飯は相性がいい。白米よりも味の広がりが多様で穀物由来の香ばしさも強い。それでいて甘やかさもある。プチプチとした食感も黒毛和牛、肩バラのスジのふくよかなコクとも最高の相性で、銀皿一面に敷かれていた和牛があっという間に消失してしまった。食感と味の深い麦飯を牛タンだけに独占させる手はない。

ランチのもうひとつの味、塩の佇まいも美しい。

塩ランチ

タレ味との最大の違いは、肉の色がそのまま皿の上で花開いていることと中央に置かれたポン酢。こちらは網の上で炙った後に、ポン酢につけて口に運ぶ。先のタレ味が「焼きすき」風なら、こちらは「焼きしゃぶ」風味だ。白飯にワンバウンドさせるかどうかはお好みで。

ポン酢にひたす
肉

それにしても焼肉は不思議だ。牛丼なら1人前で事足りるのに、焼肉となると1人前ずつではどうしたって足りない。実は「ホルモンまさる」ではランチからすべてのメニューを注文することができる上に、店内の至るところにこの張り紙がある。

張り紙

まったくもって目の毒だ。ついうっかり注文してしまうじゃないか、と思いながら注文してしまう。まったく人間とは弱いものだ。

盛り合わせタレ
網の上の肉

ランチから夜のメニューも注文できるというだけでこの体たらく。本当に人間とは弱いものである。ぷはぁ。

ビール
【追記】
予約は夜の営業分のみ。1ヶ月前の同日から予約を受けつける。ただし、多忙なため、電話はつながりにくい。ランチ終わりの15時から17時にはつながる可能性もあるが、それも保証の限りではない。予約の確度を上げるなら平日のランチ時に行列につくか、比較的入店しやすいランチ終わりの15時台が狙い目。いつの時代も予約は現場で取るのがもっとも確度が高い。
のれん

店舗情報店舗情報

ホルモンまさる
  • 【住所】東京都港区芝5-21-14
  • 【電話番号】03-6435-1990
  • 【営業時間】月曜~金曜 13:30~22:00(L.O.)、土・祝 12:00~22:00(L.O.)、日曜12:00~21:00(L.O.) ※ランチ営業は平日13:30~15:00のみ
  • 【定休日】不定休
  • 【アクセス】都営三田線「三田駅」より3分

文・写真:松浦達也

松浦 達也

松浦 達也 (ライター/編集者)

東京都武蔵野市生まれ。家庭の食卓から外食の厨房、生産の現場まで「食」のまわりのあらゆる場所を徘徊する。食べる、つくるに加えて徹底的に調べるのが得意技。著書に『教養としての「焼肉」大全』(扶桑社)、『大人の肉ドリル』『新しい卵ドリル』(共にマガジンハウス)ほか、共著に『東京最高のレストラン』(ぴあ)なども。主な興味、関心の先は「大衆食文化」「調理の仕組みと科学」など。そのほか、最近では「生産者と消費者の分断」「高齢者の食事情」などにも関心を向ける。日本BBQ協会公認BBQ上級インストラクター。