
その町の住人が長く通う店こそ、愛される名店に違いない。dancyu2025年夏号では、京都と東京の二拠点生活をする、料理家ウー・ウェンさんに京都を案内してもらいました。
大正9(1920)年に創業した「祇園 むら田」。和食材を卸店として商いを続け、名料亭や割烹をはじめとした料理店の味を支えてきた。
四代目社長・村田賢俊さん曰く「小売りを始めたのは30年ほど前です。取引先の料理人さんに、口コミで広めていただきました。大切にしているのは品質です」。
なかでも胡麻が名物で「白と黒の胡麻は、私の料理に欠かせません!」とウーさん。「とても香り高く、素材の味が強いのです。それでいて手頃なんですよ」。
ウーさんが「白」と言う“煎り白ごま”は、乾燥させた胡麻の表皮を取り煎り上げる。また、ねっとり感この上ない“練りごま”は、驚くほど芳しくて濃厚。「この練りごまは、和え麺のソースにしたり、小麦粉に練り込み花巻きにしたり。わが家のさまざまな料理に大活躍しています」。
さらに、ウーさんが手放せないという一品が「錦糸のり」だという。「針のように裁断した錦糸のりが、瓶の中にこれでもか!というくらい詰まっていて驚きますよ。蓋を開けた瞬間に溢れ出ることもありますから、ボウルを受け皿にしてください」。
厳選した国産海苔を使っているため、ごく少量でも海苔の風味を楽しむことができる。「素麺のトッピングとして。お弁当にも重宝します」。
北京生まれ。1990年に来日。料理研究家としてクッキングサロンを主宰しながら、シンプルで体にやさしい中国家庭料理のレシピを雑誌や書籍、テレビなどで幅広く発信している。家庭では二人の子供をもつ母。最新刊は『最小限の材料でおいしく作る9つのこつ』(大和書房)。
文:船井香緒里 写真:エレファント・タカ