私の行きつけ~住む町の旨い店案内~
【欲しい、京都に行きつけ】京都の魅力が詰まった見目麗しい季節の弁当『白(HAKU)』 ~料理家ウー・ウェンさんの紹介

【欲しい、京都に行きつけ】京都の魅力が詰まった見目麗しい季節の弁当『白(HAKU)』 ~料理家ウー・ウェンさんの紹介

その町の住人が長く通う店こそ、愛される名店に違いない。dancyu2025年夏号では、京都と東京の二拠点生活をする、料理家ウー・ウェンさんに京都を案内してもらいました。

一箱に詰まった、古都の洗練と郷土の味わいを持ち帰る

祇園町南側の路地にひっそり佇む、むしやしない(軽い食事)と菓子の店。土壁を配した閑寂な趣の店内に並ぶのは、干し梅をチョコレートで包んだ“はつな草”など和菓子店では見かけない菓子の数々。さらには、季節や郷土らしさを感じさせるお寿司も取り揃える。

柿の葉で巻いた“へしこ寿司”は「白」らしい逸品。京都・丹後産のへしこ(鯖のぬか漬け)を用い、レモンの皮と果肉で優しい酸味をもたせたご飯を合わせ、柿の葉で包んでいる。暑い時期にもさっぱりと味わえるのが嬉しい。

「私が必ず購入するのは小さなお弁当。これが、普通のお弁当じゃないんです」とウーさんの語りに熱い思いがこもる。「好きな時季が二つあってね。たっぷりの山菜が彩る春の“芽吹き寿司”。そして、今の時季だけ“鱧市松”です」。

弁当
鱧市松2,600円。酢飯の中に梅肉を忍ばせ、錦糸卵の上に、鱧の白焼きとタレ焼きを敷き詰めて。京都の夏ならではの食文化が竹皮の弁当に凝縮。
箱
鱧市松2,600円。酢飯の中に梅肉を忍ばせ、錦糸卵の上に、鱧の白焼きとタレ焼きを敷き詰めて。京都の夏ならではの食文化が竹皮の弁当に凝縮。

自然の趣を添えた、竹皮の箱がじつに風雅。「お店の美意識が隅々にまで行き届いているのを感じますよね」。そっと蓋を開けると、鱧の白焼きとタレ焼きを交互に配した、まさに市松模様を思わせる見目麗しさ。「2種の調理を施した鱧が、びしっと詰まっているんですよ。この潔さが素晴らしいのです。一口味わうごとにリズムを感じます」。東京に向かう新幹線の車内で、慈しみながらゆっくり堪能するのがルーティンだという。
「京都の余韻に浸れる魅力が詰まっています」。

店内
静けさが漂う凜とした空間で、お気に入りの品を見つけたい。商品は電話での予約が可能。

店内にカウンター席があるが、イートイン用ではなく、商品を包装する際にお客様をもてなすための空間。スタッフが目の前で淹れてくれるお茶をいただきながら、古都の洗練と「白」ならではのゆったりとした時間を感じてほしい。

中国茶を入れるスタッフ
包みを待つ間の時間も楽しい。カウンターでは月に1度、中国茶の先生を招く会「百の日」が開かれる。
中国茶を入れるスタッフ
包みを待つ間の時間も楽しい。カウンターでは月に1度、中国茶の先生を招く会「百の日」が開かれる。
外観
祇園の閑静な路地にたたずむ。「白」とは。「一を乗せたら百。ひとつ、幸せなものを口にすることで、九十九の幸せに気づく」という意味が込められた店名。

教える人

料理家 ウー・ウェンさん

料理家 ウー・ウェンさん

北京生まれ。1990年に来日。料理研究家としてクッキングサロンを主宰しながら、シンプルで体にやさしい中国家庭料理のレシピを雑誌や書籍、テレビなどで幅広く発信している。家庭では二人の子供をもつ母。最新刊は『最小限の材料でおいしく作る9つのこつ』(大和書房)。

店舗情報店舗情報

白(HAKU)
  • 【住所】京都府京都市東山区祇園町南側570‐210
  • 【電話番号】075‐532‐0910
  • 【営業時間】11:00~18:00
  • 【定休日】月曜 第2火曜 他に不定休あり
  • 【アクセス】京阪電車「祇園四条駅」より5分
dancyu 夏号
dancyu2025年夏号
A4変型判(160頁)
2025年6月6日発売 / 1,500円(税込)

文:船井香緒里 写真:エレファント・タカ

船井 香緒里

船井 香緒里 (フードライター)

福井県小浜市出身、大阪在住。塗箸製造メーカー2代目の父と、老舗鯖専門店が実家の母を両親に持つ、酒と酒場をこよなく愛するヘベレケ・ライター。料理専門誌やカルチャー誌、ウェブなどの編集・執筆を行う。食の取り寄せサイトや飲食店舗などのキュレーションを手がけるなど、食を軸としながら縦横無尽に展開。暴飲暴食を日課とし、ジョギングとロードバイクにて健康維持。「Kaorin@フードライターのヘベレケ日記」で日々の食ネタ発信中。