天日干しではなく、脱水シートで魚を包んで冷蔵庫で干物にする「脱水シート干し」。伊東の人気干物店「島源商店」の内田清隆さんの指導のもと、今回はイカに挑戦!塩水に漬けず、さっとくぐらせるだけでOKの手軽さもいい。
一番好きな寿司ネタは?と聞かれたら、「イカもしくはイカ紫蘇巻き!」と答えるほどイカが好きだ。スルメがあれば晩酌を1時間ぐらい引き伸ばせる。最近夢中になっている脱水シート干し(基本のつくり方はこちら)でイカを試したいが、そういえばさばき方を習っていないぞ。我らが干物師匠、「島源商店」の内田清隆さんにサクッと教えてもらおう。
イカを、エンペラを手前にしてまな板の上に縦に置く。イカはスルメイカを使用。
エンペラの真ん中から逆さ包丁を入れて、胴をすくい上げるようにして縦に切り開いていく。このとき、内臓を傷つけないように注意する。
胴を開いて、イカの上下をひっくり返し(ゲソを手前に置く)、内臓を手前側に引っ張って取り除く
両目の間に包丁を入れて切り開き、両目と口ばしを包丁で押し出して切り取る。
4の工程について、プロは包丁を左から右に滑らせながら、目玉とクチバシを押し出すようにして一気に取り外す。これがなかなか難しい。少なくとも僕は習得できなかった。一つずつ切り取ってもいいし、手を使っても構わない。
さばいてしまえば、後は簡単だ。好みの濃さの塩水にくぐらせて後は水洗いの必要もない。水気を拭いて脱水シートで包むだけ。内田さんによれば、魚と違ってイカの身には塩分はほとんど入らない。表面に塩を軽く振るようなつもりで塩水にくぐらせればいいのだ。
「イカは薄めの塩加減が美味しいと思います。今日は塩分濃度7%にしましょう」。
なお、島源商店さんでは通常、イカの骨はあえて取らずに残しておく。そのほうが天日で干すときもペラペラにならず、焼く際も箸でつまみやすく、扱いやすいからだ。
今回は、プレーンのイカの干物と、柚子の皮をトッピングした変わり干しの2種類をつくってみた。水気をキッチンペーパーで拭き取り、プレーンはそのまま、変わり干しは柚子の皮をのせてから脱水シートに包む。そして、どちらも冷蔵庫内で8時間以上置く。
干し上がったイカの冷蔵庫干しを、早速食べてみよう!まずはプレーン。そのままグリルで焼いてもいいが、内田さんの提案で、にんにくと一緒にオリーブオイルで炒めることに。キッチンバサミでイカを食べやすい大きさに切り、オリーブオイルとにんにくを熱したフライパンに投入すると、パリッパリッとイカが焼けるいい音がして気分が高まる。
出来たてを口に入れたとき、内田さんの意図を理解できた。干して身がギュッと引き締まっているイカが、油を足すことでふっくらするのだ。塩気は軽めだが、イカの旨味と油の甘味とにんにくの風味が合わさって、とてもおいしいおかずになる。
次に「イカの柚子干し」。こちらはシンプルに、グリルで焼いてから切って食べた。ふむふむ、柚子の香りはわずかにするけれど、それ以上にイカの旨味を強く感じるぞ。歯ごたえもすごい。
「脱水シートに包んでおく時間が長すぎたのかもしれません。もう少し短くして、しっとり仕上げるとさらに良くなると思います。」
干せば干すほど美味しくなるわけではなく、自分の好みに合わせた「加減」を覚えることが重要なのだ。
1977年生まれ、東京都江戸川区出身。2005年、妻の実家である「島源商店」に入社。旬の魚を目利きし、脂乗りや身の厚さに応じて仕込み、干し台の向きや干し時間を天候によって変えるなど、魚と塩と天日だけを使った干物づくりの伝統を受け継ぎ、「一口食べれば味の違いを実感する」干物づくりに精進している。内田さんの義父である島田静男さんは『かんたん干物づくり』(家の光協会)という一般向けの本も監修。
島源商店
住所:静岡県伊東市松原本町4‐8
TEL:0557‐37‐2968
http://www.shimagen.com/index.html
※明治30年創業の干物店。卸が中心だが、店頭でも購入可能。
文:大宮冬洋 撮影:牧田健太郎