しばらく気になってはいたが、なかなか行く機会がなかったお店についに訪問できた松尾さん。関西のスパイスカレーをほうふつとさせる一皿とは――。
渋谷の道玄坂上交差点から、少し旧山手通りに近づいた辺りの道を神泉駅の方へ入ったところにあるシックなカレー店「カリカリスパイス」は、少し前から気になっていたのだけれど、勇気を出して開店間際に入ってみた。いや、勇気はいらなかったが。どうやら今日もまた最初の客に。
カウンター内で、スラリとした若い女性が1人で切り盛りされている様子だ。
日替わりのような感じで固定のメニューではなさそうだが、店内の香りにつられるまま「あいがけ2種」をお願いした。
スパイスのエッジが効いているのに、調和の取れた香りに、ちょうどいい酸味と香辛料の攻め具合がたまらない素敵な味だ。水菜が散らしてあるので食感に変化もあり心地よい。スパイスカレー、水菜とくれば店主の方は関西出身だろうか。
カウンターにリンゴが盛られたカゴがある。何に使うのだろうと思っていたら、ライタ(ヨーグルトを使った付け合わせ)の具材として賽の目に切られて混ぜてあった。これも匙休めにいい感じだ。
大根の柔らかいアチャールには赤いにんじんの色素で色がつけられていた。これはまた優れた付け合わせだなあ。
「渋谷あたりにはよく来られるんですか」と聞かれ、そのイントネーションでやはり関西の人だと分かった。スパイス使いも洗練されていて、スパイスカレーの本場、関西から来られた感じがある。
イタリア料理店でホールサービスの勉強をしてから間借りのカレー店を始め、6年ほど前に、実店舗にしてこの地で始められたそうだ。
私が店を出る頃には満席になっていた。やはり、この辺りで働く人たちの間で人気のようで、男女問わず一人で入りやすいのも人気の要素だろうか。
店内の造りはワインバーのような雰囲気で、都会的に洗練されたムードだ。夜には、地ビールなどが飲めるバー営業をしている雰囲気だ。
聞けば、夜は少しメニューが増えて、20時半のラストオーダーで21時閉店とのこと。
それからの再訪も、季節感のある週替わりメニューで季節感を演出されている。今回は冬に向かう中、鍋には欠かせない白菜と水菜を上手く使って鶏肉と爽やかに合わせた一皿になっていた。
二種で合わせたポークカレーは、ほのかにトマトの酸味を感じ、玉葱の甘味と素晴らしいバランスで、豚肉はよく煮込まれていて、どこかしら懐かしさを感じる風合いだった。
自宅からのアクセスがいいので近く、今度は夕刻に足を運んでみよう。
文・撮影:松尾貴史