松尾貴史のカレードスコープ
ヘビロテしてしまう秀逸なスパイス使い|松尾貴史のカレードスコープ(94)

ヘビロテしてしまう秀逸なスパイス使い|松尾貴史のカレードスコープ(94)

最近、足しげく通ってしまう店があるという松尾さん。数あるメニューの中でも、タイとスリランカと日本のカレーを融合したような一皿がお気に入りなようで――。

スパイスがつなぐ素敵な関係

最近、ごく久しぶりに赴いてスパイス使いの記憶が甦り、ヘビーローテーションで通うようになった。店名の「スペキエ」の語源は、以前来た時に伺ったのに、まるで忘れてしまっていたが、再度うかがうことができた。「スパイス」のラテン語だった。あまりの明快さに記憶が薄れたのだろう。

相変わらず精度の高い味と香りだと感じる。メニューによっては、ココナツミルクやバイマックルー(コブミカン)を使ったものもあるが、ベースのローストしたような香りはスリランカ風なのだろうか。

辛口のエビカレーは、ココナツミルクの風味で、タイ料理の香りを思わせる。エビの旨味と香ばしい香りはビールや白ワインをお誘いしたくなる。中辛のキーマカレーはシナモンが印象的で、おそらくふんだんに使われていそうだ。やはりスリランカのローステッドスパイス「ツナパハ」の風味を感じる。

最近気に入っているのが、数量限定のバイマックルーポークだ。タイとスリランカと日本の3ヶ国合作的な名作だ。きっとこれからよほどのことがないと、無意識のうちにこれを頼んでしまうことになりそうだ。
ランチに添えられるミニサラダの味付けも好みだ。シンプルかつ爽やかな酸味と程の良さは単品で追加したくなる。

カレー

店主のお父様は以前、宝石の貿易をなさっていたそうだ。その関係でスリランカなどにも知人が多く、そのおひとりが、以前中野の鍋屋横丁にあったカレー店「スジャータ」のご主人、ジョゼフさんだったそうで、個人的に分けてもらっていたスパイスを使ってお母様がカレーを作っていたこともあるらしい。そのスパイスと調理法に馴染むうち、シェフもスパイス達人になった模様だ。

以前この欄でご紹介した渋谷の「マリーアイランガニー」の奥様のお父様が、なんとそのジョゼフさんだという。私のセンサーはそのつながりを無意識に感じていたのだろうか。違うと思うが、そう思いたいものだ。しかし、何と素敵なスパイス繋がりなのだろうか。

最近は、冬にカレー鍋を出したり、興が乗ってスープカレーを作って提供することもあるそうで、そのタイミングに当たるのも楽しみだ。

外観

店舗情報店舗情報

スペキエ
  • 【住所】東京都杉並区永福3‐55‐3 山野井ビル1F
  • 【電話番号】03‐6379‐3150
  • 【営業時間】11:30‐14:30 18:00‐20:30(L.O.)火曜はランチのみの営業
  • 【定休日】
  • 【アクセス】京王井の頭線「西永福駅」より1分

文・撮影:松尾貴史

松尾 貴史

松尾 貴史 (俳優、タレント、ナレーター、コラムニスト)

1960年5月11日生まれ。神戸市出身。大阪芸術大学デザイン学科卒業。 俳優、タレント、コラムニスト、“折り顔”作家など幅広く活躍。下北沢のカレー店「般゜若」(パンニャ)店主。著書に『人は違和感が9割』、『違和感ワンダーランド』、『ニッポンの違和感』(毎日新聞出版社)等がある。